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 例えばその相手が一般生徒だった場合は相手が危険に晒されて、役員だと歓迎されるってことか。ってことは……、 「恋をするなら役員としろってことか?」  そう考えて違和感を感じた。いや、まだ恋をしたことがない俺が言うことじゃないかも知れないけど、恋って相手を選んで出来るものなんだろうか。俺が考えていることが分かっているのかいないのか、大塚はにやにやと愉快そうに笑いながら俺のことをただ見ている。  俺の身近にいる一般生徒と言えばクラスメートの槙村か後輩の岡崎君ぐらいだけど、二人は恋愛対象とは考えられないから除外ってことになる。他に仲のいいやつと言えば風紀の橘と御子柴の二人だけど、風紀の幹部は生徒会役員とそう変わらない位置付けにいるような。 「まあ、無理に恋をしようとしなくてもいいんじゃないの」  俺が考え込んでいたからか、不意に大塚はそんなことを言って来た。驚いて大塚を見れば、さっきと同じ含み笑いをしながら、やっぱり愉快そうに俺のことを見ていて。 「恋ってさ。するもんじゃなくて落ちるもんだって言うじゃん?」  変身前の俺の風貌によく似た大塚はそう言って、照れ臭そうに『そう言う俺もまだなんだけどな』と付け足した。なんと言うかそれが大塚に似合わなくて、ぽかんと大塚を見てしまう。 「腐男子としてはどっちも美味しいんですけどね」  照れ隠しなのかどうか、そう言って大塚は居住まいを正した。眼鏡の支柱を指先で押し上げて眼鏡の位置を直すと、さっきまでの親衛隊長の顔になる。 「恋、かあ……」  やっぱまだピンとは来ないけと、俺は流れに任せることにした。大塚が言うように恋はするもんじゃなくて落ちるもんなんだとしたら、いつか、俺は恋に落ちる時が来るんだろうか。 「…………」  と同時に一抹の不安も感じたりなんかして。周りに男しかいないこの状態は普通じゃなくて、いや。異常ってわけでもないんだけど。 「おっぱい……」 「は?」 「あっ、いや。なんでもない」  不意にいつかの日向の台詞を思い出した。男だらけの環境だから男とエッチしてるけど、女の子がいたら女の子とするだろうなってやつ。その次に続いた『だっておっぱいって柔らかそうじゃん』って台詞が何故かずっと頭の中にあって、思わずやらしい台詞を口にしてしまったけど。 「俺、多分おっぱい星人なんだけどなあ……」  決してむっつりなわけじゃないけど、やっぱ大きなおっぱいは大好きなわけで。  俺なりに恋愛についてあれこれ悩んでいたその時の俺は、目の前の大塚が軽蔑(けいべつ)と落胆を含んだ眼差しで俺のことを見ていたのに気付かなかったのだった。

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