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どうやら前回、号外が出たのは一年前のことらしい。確か去年の生徒会長の肇先輩と副会長のキスシーンがスクープされたはずだ。その時も今回と同じ『熱愛発覚!?』ってタイトルだったような気がするんだけど。因みに日向や日下部も常連だが、二人には号外が出たことはない。
結局はその時も目にゴミが入った副会長が泣いていて、ゴミを取ってあげようと肇先輩の顔が近付いたところを激写されたんじゃなかったっけ。物凄くベタな勘違いだけど、当時も確か、お二方なら応援しますって歓迎ムードだったような。
「生徒会役員同士だとそうなるだろうな」
「そうなるって?」
「歓迎ムードってこと」
大塚はそう言って新聞をローテーブルの上に置いた。俺の部屋に大塚がいる。同室だったのはまだほんの数ヶ月前のことなのに、随分前のことだったような気がする。
「なあ、生徒会役員同士じゃなかったらどうなるんだ?」
テーブルに飲み物を置きながら、ふと思い立って聞いてみた。大塚はゴシップだとか噂にもアンテナを張っていて、恋愛関連のあれこれにとても詳しいのだ。
「中学の時さ、覚えてない?」
俺も聞いた話だけど、と続ける大塚は高等部からの外部入学組でこれも噂で聞いた話らしかった。
「風紀委員長の恋人がイジメに遭って転校したって話らしいけど」
「橘の恋人?」
そう言えば、肇先輩が橘には中等部の時に恋人がいたって言ってたような気がする。正直、中等部にも新聞部があったが、どんな新聞だったのか全く覚えていない。今と変わらないゴシップ新聞のはずだが、今以上に恋愛について興味がなかったから覚えていないんだろう。
「俺さ。腐男子だって言ったよな」
「えーと、確かBL? だっけ? 男同士がいちゃいちゃしてるのに萌える……」
「そうそう。うちは平和ぼけしてるからイジメ止まりだけど、そのBL界では嫉妬した親衛隊員が対象者を制裁したりするんだよ」
「制裁? また物騒な」
大塚いわく、BL界では姫系の生徒が屈強な体格の生徒に暴力を振るわせたりするらしく、妄想だと分かってはいるけどぞっとした。性的な暴力にまで発展するというのは極端だけど、それに近い体育倉庫に閉じ込め系のイジメは現実にもありそうだ。大塚が平和ぼけって言うように、うちの学校にはなさそうだけど。
「それは表沙汰にはならなかったのか?」
「んー、どうだったかな」
俺が覚えてないってことは、たいした問題にはならなかったんだろうけど、そうか。橘の恋人は転校してしまったのか。確か、橘は中等部ん時は親衛隊持ちの役員だったよな。
「一般生徒が親衛隊持ちとくっついたりしたら、嫉妬の対象になるみたいだな」
役員同士だとそれはないだろう、そう言う大塚のその言葉は、確かにただの絵空事には思えなかった。
「橘の恋人は俺らみたいな一般生徒だったわけだから、それを考えたら嫉妬されても仕方ないんじゃないかな」
確かに俺は今、生徒会長という立場にいるが、つまりは会長じゃなかったらイジメの対象になってたかも知れないってことか。言ってみれば生徒会役員同士だと社内恋愛みたいなもんで結構、普通のことだけど、一般生徒だとそうはいかないということなんだろう。
てか、同性愛だけどな。今更同性愛がどうとか言わないし、同性が恋愛対象になるのは仕方がないことだ。また一段と近付いた気がする。俺、もしかしてこの学校で恋をすることになるんだろうか。
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