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6月 委員長からの不吉な御言葉
何事だと俺はてっちゃんを見るが、ヤツは俺らの後ろをじっと見てる。俺も気になって振り返ろうとするが、横の久世ちゃんに止められてしまった。それでも諦めきれずに、横目でチラッとだけ見た。特に変わったことはない。
しばらくして、てっちゃんが息を吐いた。
「危なかったね~」
「……何が?」
「俺らの寮長がいたの」
「マジで? どこ!」
俺は思わず立ち上がって食堂中を見渡したが、それらしい人物はいなかった。
「まぁ、和樹は関わらないほうがいいよ」
久世ちゃんの苦笑いが痛い。
「どんなヤツだよ、Aの寮長って」
「えっとね、陰湿ネチネチ眼鏡」
「……最悪じゃねーか」
想像するだけで、ご対面したくない相手だ。うへーと俺が苦い顔をしてると、千葉が急に席を立ってトレーを片づけ始めた。
「あ、待てよ千葉っ!」
「先に行くぞ」
そう言い残すと、千葉はさっさと行ってしまった。俺も行かねばと思い、急いで食べる。そんな俺を見て、久世ちゃんがお茶を勧めてきた。
「そんなに急ぐと、身体に悪いよ」
「ん……うん、あんがと久世ちゃん」
「ところでさぁ、カズ」
てっちゃんが悪い顔をしてニヤついてる。この顔のてっちゃんとは、あまり関わりたくないぞ。
「今度の仕事は絶対サボらせないぞ――って委員長が言ってたよ」
「いっ……委員長がそんなこと言うわけねーだろ!」
「じゃー伝えたからね。行こっか風ちゃん」
「あ、うん。和樹頑張れよ」
不吉な言葉を残してふたりは去っていった。
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