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6月 千葉と風雅の邂逅
「生徒会で会計やってる久世ちゃんだよ。知らなかったっけ?」
「お前、まだヤツらと連んでるのか?」
「久世ちゃんだけだよー。他の人と会わないって」
本当か? と千葉は疑り深い目で見てくる。
実は俺の発言の中には、ちょっとした嘘が混じっていた。
浅井センパイや大和は本当に関わってないけど、基本あのバ会長とはよくサボっている。宮崎先輩はすれ違ったときとかに、優しく話しかけてくれる。本当にいい人だ。
「和樹たちは何やってんの?」
久世ちゃんが俺の隣に座る。
「うちの寮長がさー、バザーで食べたい物教えてってゆーから、考えてたんだよね」
「あぁ、新歓の話ね」
さすが久世ちゃん、理解が早い。
「でも俺らのノルマは、もう終わったんだ。うちの千葉がササッと考えてくれてさ」
「千葉?」
そうだ、このふたりは初対面だった。
俺はいつの間にか、てっちゃんと話してる千葉に向かって、声をかけた。
「そこのニット帽男が千葉だよ。俺の同室者」
「……」
「んで千葉。改めて紹介するけど、こちら久世ちゃんね」
「よろしくー」
「……」
うわー会話が成立しねぇ。そうだ忘れてた。千葉は人見知りさんなのである。あんまり千葉が他のヤツと話すとこ見ないから、俺はすっかり忘れてたのだ。
「千葉っちはねー、超人見知りなの。気にしないでね」
てっちゃんが千葉の肩を引き寄せて、ケラケラと笑う。
「でもB寮は平和そーだね」
「そーなの?」
「俺らんとこは、毎年うどんなの。超~つまらない」
と、てっちゃん。さらに久世ちゃんが続いた。
「行事とか興味ない人が多いからね。寮長も大変だと思うよ」
てっちゃんと久世ちゃんはAクラス、つまり文理系だ。たしかに勉強一筋って感じ。このふたり見てると、そうは思わないけど。俺ならそんなクラス、絶対ヤダ。
「他の寮長って、どんな人なんかなー」
そういえば俺は、ノムさん以外の寮長を知らない。
「なぁ、千葉は知ってる?」
「……」
「んだよ、シカトすんなよ!」
「まあまあ、落ち着きなよ和樹。他の寮長知っても、あんまり意味ないと思うよ」
なぜか意味深な久世ちゃん。そんなこと言われると、余計気になるじゃないか。
俺が交渉術を発動しようとしたそのとき、てっちゃんが急に声を潜めた。
「しっ!」
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