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6月 じゃあ新歓だな
「何やってんだ、アイツら」
「アイツらって?」
「和樹と陽平だよ。ほら」
江川辰己 が指す先には、スタスタと歩く千葉と、それを追う和樹の姿があった。
風紀副委員長である辰己にとって、同じ風紀である和樹はもちろん、千葉も可愛い弟分みたいなものだ。
ケンカでもしたのかと呑気に眺めていると、側に立つ藤田大和 が不思議そうな顔でふたりを見る。
「へぇ、陽平がいるのって珍しいですね」
「ん? いつものことだろう?」
「そうなんですか?」
大和は少なからず驚いた。
千葉は大概、授業終わりはすぐにどこかへ行ってしまうタイプで、滅多に校舎に残ることはなかったはずだ。
「アイツは変われたんだよ。和樹のおかげでな」
辰己はふたりの後ろ姿を見て笑う。
「俺、和樹のこと、まだよく知らないんですよ」
「じゃあ新歓だな」
「え?」
辰己はニヤッと笑う。それから大和の背中を、大きな手でバンバンと叩く。
「大丈夫だ! 俺に任せとけ!」
「は、はぁ……」
大和はふたりの後ろ姿を見て、なぜか複雑な気持ちになった。
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