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第13話
それは、鬼を鬼たらしめるパワーを失ったことを意味する。
実は裏技中の裏技で、身も心もひとつに結ばれるということは、皮肉なことに首領を無力化するということだったのである。
図らずも成敗してのけるのと同時に、ピストン運動に己の限界に挑戦するような加速がついた。
「そんなに突いたらイッちゃうよぉ……!」
「うおぉおおおお!」
爆ぜて、熱液が迸る。どぴゅぴゅと、あたかも三々九度の杯 を交わすように、筒全体にしみわたっていく。
ペニスが跳ねて、蜜が吹きこぼれる。柔壁がしなしなとイチモツにじゃれつくたびに、例のキビダンゴがひしがれて、それが極上の快感をもたらす。
要するに相性抜群だった。
チュウして、繰り返しチュウして、唇がふやけるほどにチュウをする。甘々な余韻にひたっているところに、天の声が轟いた。
「桃太郎よ、グッジョブ。手ごわい親玉を骨抜きにするとは天晴れなり。これにてお役御免であるからして、二十一世紀の日本へワープじゃ」
「嫌だ、帰らない。鬼ちゃんは山に柴刈りに、僕は川で洗濯して、添い遂げるんだ」
召喚されたときと同様に、サイケデリックな渦巻きが出現した。桃太郎は萎えるどころか、いきり立って深身をかき混ぜる昂ぶりを軸に首領にしがみついた。
だが虚しい抵抗だ。サイクロン掃除機の何万倍もの吸引力には抗えず、時空の裂け目に吸い込まれていく。
「鬼ちゃぁあああああん!」
「桃太郎くん、二本で一対の鬼の角には引き合う性質がある。お互い片割れを持っていれば、いつの日か相手の元へ導いてくれる」
笑顔をこしらえて手を振る首領の姿が、芥子粒のように小さくなっていく。
桃太郎は宇宙ロケットが打ち上げられるとき並のGがかかるトンネルで揉みくちゃにされて、細胞レベルで全身がばらばらになる苦しみを味わいながらも心に固く誓った。
鬼くん、生涯ただひとつの恋をきみに捧げるよ……。
やがて小島を取り囲む海に代わって、煉瓦造りの学び舎が視界いっぱいに広がった。
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