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恋の花は満開に

 さて、後日談である。  まずは本家本元の桃太郎一行がどうなったか、といえば。鬼ヶ島へ向かう道中でイチ抜けたをしたにもかかわらず、ちゃっかりバトンタッチした。  ぶっちゃけた話、何食わぬ顔で金銀財宝を積んだ大八車を()いて村に凱旋し、かくして勧善懲悪の物語は令和の現在も語り継がれている。  つまり陰の功労者の存在は、闇から闇へと葬られてしまったわけだ。 「俺らをこき使って、いいとこどりかい!」  俗に地団太を踏むというが、猿渡、雉原、犬丸は足が()るまで地団太を踏みまくった。真の英雄は俺らだと息巻いたものの、SNS上で真相を暴露しようにも、誹謗中傷の類いと見なされて炎上するのがオチ。結局、泣き寝入りするより仕方なかった。  かたや桃太郎は生徒会長の務めを精力的にこなしつつも、そのじつ魂の抜け殻だった。  利用するだけ利用しておいてポイ捨てするとはあくどいにも程がある、鬼ヶ島に関する記憶を削除するなどのアフターサービスを怠るな、と言いたい。  ちなみに鬼退治に貢献した報酬は、生徒会の口座にきちんと振り込まれた。  ただし時価は時価でも、金銀財宝の評価額の単位はイラン―リアル。ちなみに一米ドルは十一万二千イラン―リアルにあたる。  日本円に換算すると雀の涙で、ただ働きも同然だ。  食欲不振に不眠症はもとより、ひとりエッチの頻度が増すわ、と恋わずらいは重症化する一方だ。  桃太郎は今日も今日とて、放課後の生徒会室で悲嘆に暮れていた。  スマートフォンに向かってぎこちなくピースサインを掲げる鬼ちゃん、僕を姫抱っこして鬼の千畳敷を駆け抜ける鬼ちゃん、僕の膝枕で微睡む鬼ちゃん、ハメ撮りもちょこっと──等々。   愛のメモリーことツーショット傑作選を繰り返し眺めては、ため息をつくばかり。  そしてそれは、うたかたの恋の形見。  威風堂々としたイチモツのミニチュア版といった(おもむき)がある角に頬ずりしても、心の空洞は埋まりっこない。  鬼ちゃんの太いのが恋しい、欲しい。スラックスの上から、花芯に角をぐりぐりとめり込ませているところに、 「桃会長、大変です! またまたカツアゲ事件が発生しました」  猿渡が生徒会室に飛び込んできた。

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