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第15話
「カツアゲの常習犯を連行してきました。来い、鬼塚、きびきびと歩けぇ」
雉原と犬丸が、鬼塚と呼ばれた大柄な男子を羽交い締めにして後につづく。
鬼塚はふてぶてしく嗤い、雉原と犬丸を突きのけると、椅子に腰かけて足を高々と組んだ。そして耳の穴を指でほじくりながら、うそぶく。
「カツアゲェ? っせぇな、ちょおっと小遣いを寄付してもらっただけだろうが」
「ドヤ顔で威張るな。これも校則違反だぞ」
猿渡が、容赦なく鬼塚の耳たぶを引っぱった。象牙色で円錐形のピアスが、内側から発光しているようにきらめく。
その瞬間、桃太郎の手の中で角がどくんと脈打った。共鳴するように、ピアスがひと回り膨張した。
──二本で一対の鬼の角には引き寄せ合う性質がある。お互い片割れを持っていれば、いつの日か相手の元へ導いてくれる……。
冀 う響きを宿した声が耳に甦る。
パラレルワールドの法則でいくと、首領と同じ遺伝子を持つ人物が現代の日本を闊歩していても不思議ではない。
だが、この鬼塚という生徒がそうだなんて偶然がありえるのだろうか?
試しに角を鬼塚に向けてみると、磁力が働いているようにピアスが浮く。桃太郎は生唾を呑み込み、あらためて身を乗り出した。
首領は牙があり、こなた鬼塚はにやりとするたびに八重歯が覗く。
首領は荒くれ者ぞろいの鬼を率いて村々を襲って回り、鬼塚はカツアゲ上等のバリバリのヤンキー。
涙の膜が張って視界がぼやけていたとはいえ、トロくさい話だ。共通点がある、ないという次元を通り越して鬼塚は首領に生き写しじゃないか。
これは願望丸出しの白昼夢? それとも、まさか本当にこちらの世界に生を享 けた首領に巡り会えた……?
「もはや一刻の猶予もなりません、こいつを野放しにしておくわけにはいかないっす。学園の癌は即刻、隔離すべきです」
ご決断を、と詰め寄ってくるトリオをウインクで悩殺する。深呼吸ひとつ、祈るような気持ちで呼びかけた。
「鬼、ちゃん……?」
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