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第16話

「ちゃんとかキモっ、キモくて吐くし。つか、ピアスが勝手に動く、ちぎれる!」  鬼塚が耳たぶを押さえて呻き、桃太郎は、そんな彼に次の質問をぶつけた。 「雨の日に〝かわいがってください〟と書いてある段ボール箱の中で震えている仔犬を見つけたら、傘を差しかけてあげるタイプ?」 「どうして俺の秘密を知っている!」  椅子が蹴倒されて図星だと物語る。  桃太郎はひとっ飛びに鬼塚へ駆け寄った。すかさずスラックスの中心をまさぐると、心の中で感動の嵐が吹き荒れる。  金棒的なこの手ざわり、平常時にもかかわらず、ずっしりした量感。鬼塚はまがうかたなく首領の(うつ)し身。  そう、運命の赤い糸で結ばれたかけがえのない男性(ひと)。 「バッ、バカ野郎! スケベなことは好きなやつとするもんだ」  鬼塚が真っ赤になって、股間でさわさわと蠢く手をはたき落とした。 「童貞の反応くさくね?」  トリオが聞こえよがしに囁き交わす。  童貞の筆おろし、それは金銀財宝に勝るとも劣らない値打ちもの。手とり足とり、あんなこともこんなことも教えてあげたい、と桃(尻)太郎の血が騒ぐ。  舌なめずりをするにつれて小悪魔の尻尾がするすると伸び、桃太郎は指をパチンと鳴らした。 「ピアスの他にも校則違反の物を隠し持っているかもしれないね。猿渡、扉に鍵をかけて。雉原、犬丸、身体検査の用意を」    アイアイサー、とトリオが敬礼で応じた。さっそく四隅に拘束用の革ベルトが備わっている特注の台に、ご登場ねがう。 「四人がかりで卑怯だぞ!」  鬼塚はひと声吼えると、雉原と犬丸に体当たりをかまして強行突破を図る。桃太郎は鬼塚の足を狙って投げ縄を放ち、見事に生け捕りにした。  ジタバタするのを台に載せて、(はりつけ)に処するふうに手足を革ベルトで固定してしまえば、まな板の上の鯉のいっちょあがりぃ。    チアリーディング部が練習中の校庭から、野太い歌声が風に乗って運ばれてくる。ゴー、ゴー、レッツゴー、鬼が島イエ~イ!  鬼塚の金(玉)ゲットをめぐる新たな冒険は、今はじまったばかりだ。     ──とっぺんぱらりのぷう──

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