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2杯目。
今まで思ったこともないけれど、案外僕は、欲張りな性格なのかもしれない。
季節が巡り秋になった。
少年はお店を気に入ってくれたのか、あれから度々珈琲を飲みに来てくれる。
ある日、僕が思いきって話し掛けてみると、彼は少し驚いた顔をしていたが、恥ずかしそうにしながらもちゃんと返してくれた。
彼は元々人と話すことが得意ではないらしく、うちの店にも人混みを避けて学校の前にひと休みをしに来ているのだそうだ。
そうして徐々に会話が増えて彼からも挨拶をしてくれるようになり、最近は彼を名前で呼び、二人きりでもリラックスして会話をしてくれるまでにこぎ着けた。
もう本当に必死だった。今までにない位頑張った。
今ではあの可愛い笑顔をよく見せてくれるようになり、それはもう内心ガッツポーズしまくりで、にやけるのを隠すのにとても苦労している。
そして今も、目の前ではパンプキンケーキを頬張り目をキラキラさせている朝夜君が。
口が小さいのだろうか、一口はそれ程大きくないのに頬が膨らんでいてとても可愛い。
…嫌われてはいない…と思う。
好かれてはいる。確かに好かれてはいるが、果たして彼の好意は恋愛感情かと言われれば、それは違うだろうとも思う。
(君は…僕の気持ちにどこまで気付いているのかな……)
ミルクティを口に含み目を細める朝夜君。
分かってないんだろうなぁ…。
彼に会う度、心が惹かれる。
彼を知る度、愛しさが募る。
もう僕は今の関係では満足出来なくなっていた。
「朝夜君…、」
声を掛けて棚から2枚の細長い紙を取り出し、彼の前に差し出した。
僕を見上げて朝夜君が小首を傾げる。
「…二人で、ドライブしようよ。」
彼の一番になりたい。
そう思ってしまったら我慢なんて出来なくて、気付いたら僕は朝夜君を水族館に誘っていた。
いきなりの事に朝夜君は少し戸惑っていたけれど。
それでも行きたいと、小さく呟いた彼の俯いて垂れた髪から覗く耳は、少し朱色に染まっていて。
少しは…期待しても良いのだろうか。
彼の愛らしい反応に思わず笑みが溢れる。
誰かを誘うなんて始めてでとても緊張したけれど、そんなに嬉しそうな表情をしてくれるなら頑張って良かった。
この人をどうすれば手に入れられるのだろうか。どうすれば自分だけが彼の特別になれるのだろうか。
気持ちばかりが急いて仕方がない。
頭の中がぐるぐるとして彼が帰った後も、その日1日僕は上の空だった。
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