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来訪者②

「そんな上から下まで真っ黒な小僧の何処がいい?」 「濡れ羽色の髪、黒曜石の瞳、その美しさがあなたには理解できないと?」 「できる訳がないだろう! そもそも俺には人間の美醜など分かりはしない!」 「でしたらあなたが私のような半獣人を妻にと望むのは何故ですか!?」 「俺はお前の顔ではなく、中身が好きだと言っているんだろう?」  しれっと言い切ったバートラム様、瞬間ミレニアさんが言葉に詰まる。 「そ、そんな口から出まかせを……どうせあなたはうちの血統が欲しいだけなのでしょう?」 「確かにお前の家はうちと違って由緒正しい血統なのかもしれないが、別にそんなものはどうでもいい。そんな血筋云々を手に入れた所でどうと言う事もない、俺はお前が欲しいと言っている」  あれ? ミレニアさんの結婚は政略結婚だって聞いてたけど、バートラム様の考えはそうではない感じ? 「……っ、それでもあなたはベアードの家を捨てる事など出来はしない! 私はズーランドには帰りません! あそこに私の居場所など存在しない事はあなたも知っているでしょう?」 「それはお前が表舞台に立とうとするからだろう? 俺の妻になって家に入れば、そんな苦労はさせはしない」 「っ……! 私はそれが嫌なのですよ! 何故半獣人だからと言って私が奥に下がらなければいけないのですか!? 私は優秀だ、その辺の有象無象より余程自分に自信がある! なのに何故、半分『人』だというだけで私が隅に追いやられなければならないのですか!? 私は獣人国のそういう悪しき風習が大嫌いなのですよ! 私はあなたにだって引けは取らない! それは学生時代に充分証明してきたはずです!」  ミレニアさんの俺の肩を抱く指の力が強くなる。なるほどな、ミレニアさんは自分には表に立って働ける能力があるのに、それを生かす事が出来ない獣人国に嫌気がさしているとそういう事か。そして目の前のこの熊、バートラム様はそんなミレニアさんのコンプレックスを刺激しまくる存在という事なのだろう。  家がどうとか言ってたから2人の結婚は親同士が勝手に決めた事なのだろうけど、バートラム様はナチュラルにミレニアさんは家に入るモノと決めてかかっているし、そういうの息苦しいのかもな。  だってこの世界はどちらが子供を産んでもいい世界みたいだし? そこは話し合いで決めればいい話だけれど、そこの性的思考の一致がないと家庭を築くのは難しそうだよな。 「確かにお前は学生時代、誰よりも優秀だった。そして、ズーランドがそれを生かせない国だというのも分かっている。だが何故お前はわざわざ選んで苦難の多い道を歩こうとする? 俺にはそれが理解できない」 「だったら一度考えてみるといい、あなたが私の妻になる未来を! あなたが私に言っているのはそういう事です! きっとあなたには理解が出来ないでしょう? それとも私の為に貞淑な妻になれるとあなたがそう言うのであれば、私はあなたとの結婚を考えてやってもいいですよ」  バートラム様が瞳を見開いて言葉に詰まった。まぁ確かにビジュアル的に見たらどう考えてもミレニアさんが妻、バートラム様が夫って方がしっくりくる。だけど、この世界は逆も勿論あり得る訳で、そういうカップルがいても不思議ではないけれど…… 「お前は俺を妻へと望むのか?」 「あなたがそれを受け入れるのであれば」  沈黙の睨み合い、俺、完全に部外者ですよね……? そろそろ解放してもらえないかな?

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