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嫉妬
「カズ、ちょっとこっちにおいで」
いつもと違い貼り付けたような笑顔のライザックに呼ばれて、俺は名残惜しいもふもふの尻尾に別れを告げライザックについて行く。ってか、いつの間に帰って来てたんだ? 全然気付いてなかったぞ。
ライザックの私室に連れ込まれ、後ろからついて行った俺が扉を閉めると同時にその扉に両手をつくようにして彼の腕の中に閉じ込められた。あれ? これ世に聞く壁ドンってやつ?
「で? カズ? さっきのアレは結局なんだったんだ?」
「何って、見ての通りミレニアさんの尻尾を触らせて貰っていただけですけど?」
俺がきょとんと首を傾げると、何故かライザックが大きな溜息を零した。
「獣人にとって尻尾というのは大事な場所だ。言ってしまえば急所と言ってもいい、他人のそんな場所をむやみに触るのは人道に反する。アレは公然猥褻と同じだぞ?」
「え……?」
「分かっていなかったのか? よくミレニアが触らせてくれたものだな」
「だってそんな事一言も……」
あれ? もしかして俺ってばミレニアさんに真正面からセクハラを働いた感じだった訳!? ちょっと、そういう事は先に言ってくれよ!! いいって言われたから思いっきりもふっちまったじゃないか!
しかももしかして俺のやらかした事に旦那様は怒ってらっしゃる……?
「ご……ごめんなさい! 俺、そういうの全然分かってなくて! ミレニアさんに謝ってこないと!」
「いや、ミレニアが触って良いと言ったのなら、これは私がとやかく言う事ではない。だがしかし、私個人としては非常に面白くない」
「……? えっと……それはどういう……?」
「ミレニアの尻尾はそんなに気持ちが良かったか?」
なんだかライザックの瞳が据わってる? どう返すのが正解なのか分からない俺はとりあえず小さく頷いたら、ライザックにぐいっと顎を持ち上げられ口付けられた。
「ん!? んぅっ!!?」
歯列を割って舌が入り込んでくる。ライザックとこんなキスをするのは初めてではないが、あの時のキスもSEXもアレは全部治療行為で、なのに何事もない今そんな事をされる理由が見当たらない。俺は彼の胸を叩くけれど体格差があるせいかライザックは全く動じる気配すらない。
瞬間、腹のうちにどくんと熱の上がる感覚に身体が震えた。
何だこれは? 動悸が上がる。キスが息苦しいと言うのも勿論なのだが、そうではない熱の塊のようなモノが腹の内から燻って、力が抜ける。
「や……なに、ライザッ……っはぁん」
腹の熱はどんどん身体中に巡り、俺の息子を持ち上げる。感じてる? キスだけで?
急激な身体の変化に付いていけない、熱い。身体の奥が疼いて疼いて仕方がない、これは何だ!?
「カズ……?」
俺の様子がおかしい事にようやく気付いたライザックがいつもの瞳で俺の瞳を覗き込む。あぁ、ダメだ……身体が熱い。
「カズ?」
戸惑い顔のライザックの襟首を掴み、今度は逆に俺の方から口付けた。中に欲しい。今現在この熱を治められるのは目の前のこの男しかいないのだ。俺に選択の余地などない。
「責任……取れよっ!」
自然と瞳が潤むのを感じる。泣きたい訳ではないのに身体が切なくて、まるで赤子のように鳴き喚きたい心境に陥って彼の胸に縋る。
「カズ、もしかしてワームの……?」
ワーム? 何? あの触手がなんだって? でもそんな冷静な事を考えていられる余裕なんて今の俺にはもうありはしない。
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