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ライザックの言う事には②

「とりあえずライザックが俺を性欲処理の道具として家に雇い入れたわけじゃないって事は分かった、でもその運命の相手って何? ライザックは一体何をその占い師に見てもらったんだ?」 「カズはもうこの家の内情はあらかた把握しているのだろうか?」 「内情って?」 「出会った当初言ったように『オーランドルフ』という名は重いのだ、私はその身分を然程重要なものだとは思っていないのだが、それでもどうしても付いて回るのがこの名前。高潔を保ち体裁を取り繕い家名に相応しく生活をしなければならないのだが、ここだけの話我が家の家計は火の車だ。母は金遣いが荒い訳ではないが生活の質を落とそうとはしない、この大きな屋敷も維持費ばかりかかって分不相応だと何度言い聞かせても聞く耳を持たない、だから私はこの家の体裁を保つためにどうにか頑張っているのだが、内情はもう……」  本来ならば人を雇うような余裕もないのだと、ライザックは溜息と共に言葉を吐き出した。けれど母の考える最低限の生活の質を落とす訳にはいかなくて、安い賃金で雇い入れた者は家名に目の眩んだ碌でもない者ばかりだったとライザックは言う。 「なんだよ、だったら俺なんて雇ってる場合じゃないじゃないか」 「本当にそうなのだが、メイドが一人辞めたのは事実で家の中の些事に手が回らなくなっていたのも本当の事だ。カズは最低賃金でも何の文句も言わなかったが、普通ならあり得ないと怒っても不思議ではなかっただろうな」  えぇ……そうだったの? 俺、この世界の物価なんて全然分からないもんよ、確かに服やなんかを買い揃えたらもうしばらく給料無くなるなとは思ったけど、三食食事も付いて寝る場所まで提供されてるもんだから、そんなもんだと思ってた…… 「カズには大変失礼な奴だと思われると思うのだが、私は様子を見ていたんだ。私は占い師にこの家の未来を視てもらったのだ、そして占い師はカズとの出会いの地を示し、私は占い師の言った通りにカズと出会った。話をしてみればカズはとても好感の持てる人物だったが、如何せん外面ばかり良くても中身が伴わない者は幾らもいてな……」 「俺のこと値踏みしてたのか?」 「結果的にはそうなった、申し訳ない! だがカズは私の寝込みを襲って既成事実を確固たるものにしようとも、金目の物を盗んで逃げだす事もしなかった」  いや、それ当たり前だろ? なに? 今までそんな碌でなしばっかり雇い入れてたの? この家ホントに大丈夫? 「私はただ楽しそうに働いているカズに惹かれる心を止められなかった。真実カズは運命の相手なのだとそう思ったのだがなにせ占い師の言う事だ、ミレニアは懐疑的だし母上は全くの無関心、自分の心も決めかねてもう一度占い師の元を訪れたら占い師の言う通りまたカズに遭遇した、これを運命と言わずして何と言う?」 「いや、だからそれ完全にただの偶然……」 「もうこの際偶然でも何でもいい! 私はカズを愛している! 出て行くなんて言ってくれるな、私に嫌な所があるのならば言って欲しい、生活に不満があるのならば改善できるように努めよう」 「生活改善ってどのみち金はないんだろ?」 「う……それはまぁ……」 「とは言っても、俺は別にこの生活に不満なんてないからどうでもいいけど」  「カズぅぅ」と、ライザックがすりすりと俺の背中に顔を摺り寄せているのが分かる。ライザックはしっかり者で頼りがいのある男だと思ってたんだけど意外と子供っぽい所もあるんだな、おっかしいの。 「そんなに俺のこと好きなの?」 「愛していると言っただろ?」 「ふぅん、そっか……」  そっけない言葉を返しながらも俺はにやける顔を止められない。正面から抱き込まれてるんじゃなくて良かった、こんな顔見られたら恥ずかしいもんな。

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