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その後

 納得いかない部分もなくはないけど、とりあえず一連のライザックの話に納得した俺は無事に彼と和解した。というか、正式に付き合い始める事になったのだが、一応と思ってハインツにその話をしたら「むしろ付き合ってなかったの?」と苦笑された。 「ご主人様は最初からカズに『旦那様』って呼ばせてただろ? って事はご主人様は最初からカズを『妻』にする気満々だったって事だ。それなのに結婚どころか付き合ってすらいないなんて、今更そんな事言われても逆にどう反応を返していいか分からないよ」  ハインツの言葉に俺は驚いて言葉が出ない。ハインツは確かに最初俺がライザックを『旦那様』と呼ぶ事に眉を顰めた。媚びているのだと言われて何でだ? と思っていたのだが、旦那様=夫なのか!? そんな事微塵も考えていなかった俺は唖然とする。だって普通に考えたら『ご主人様』も『旦那様』も同じようなものじゃないか!  ハインツは「気付いてなかったの?」とまた笑うのだけど、全然気付かなかったよ! そういう事はもっと早くに教えてくれよ!! 「まぁ、そんな事より聞いてよ、カズ! 僕、あの占い師に店を出たらすぐに出会いがあるって言われたんだけど、その帰り道にナンパされてさぁ、しかもこれが超イケメン! すっごくない!? とんとん拍子に話が弾んで付き合う事になったんだけど、あの占い師本当に当たるよ!!」 「えぇ……それ絶対騙されてるって、止めといた方がいいと思うけどなぁ……」 「カズはなんでそんなに占いに懐疑的なの? いいじゃん! 悪い事は信じなくても良い事は信じた方がハッピーだろ?」  そう言われると確かにそうだけども、正直胡散臭いとしか思えない俺はピュアな感情に乏しい人間なんだろうか? 「今度こそ一緒に行こう!」と誘われて俺は曖昧な笑みを返す、あの長蛇の列には挑みたくないんだけどなぁ…… 「そこ、私語は慎む! プライベートをとやかく言うつもりはありませんが、働くべき時は働く! そんな事は社会常識ですよ」  少し苛立ったような声が飛んできて俺達が肩を竦ませ振り返ると、そこに居たのは仁王立ちのミレニアさん。そしてその背後には何故か満面の笑みのバートラム様。  バートラム様が俺を誘拐した一件でミレニアさんの嘘はバートラム様には完全にバレてしまった。俺がミレニアさんの恋人でも何でもなく、現在ミレニアさんに特定の相手がいないのだと分かったバートラム様は頻繁にオーランドルフ家に通ってきてはミレニアさんを口説いて回っている。  最初の内こそぎゃんぎゃんと怒っていたミレニアさんだったのだが、最近はもう諦めたのか彼のやりたいようにさせているらしく、いつでもこんな感じ。  バートラム様、国に帰らなくていいのかな? 「その状態で仕事にプライベートを持ち込むなと言われても……」 「黙りなさいハインツ、これはただの背後霊です! 空気です! 一切気にする必要はありません!」  そんな事を言われても存在感のあり過ぎる背後霊だ、気にするなと言う方が間違っている。 「ミレニー、お前絶対この仕事向いてないって。そんなに怒ってばかりじゃ彼等も可哀想だろう? な? 俺の妻になれば一生楽させてやるからさ」 「喧しい、バート! 背後霊は大人しく黙っていろ!」  ミレニアさんとバートラム様、ミレニアさんはすごく嫌がってるんだけど傍目には意外と仲良く見えるんだよね。もう付き合っちゃえばいいのにと思うの、俺だけなのかな? 「なんだか賑やかだね、カズが我が家にやって来てからこの家は見違えるように明るくなった気がするよ」 「ライザック! おかえり!」  俺が敬語も使わず普通に返したらミレニアさんがまた険しい表情で俺達を見やる。でもライザックがいいって言ったんだからそれで良くない?  まぁ、何だかんだで俺の周りはこんな感じにとても平和で、俺もすっかり異世界生活に慣れた気がするのだけど、俺の波乱の異世界生活は実はここからが本番だったりしたんだよな。でもそれはまた別のお話。

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