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黄金の血

実は僕、黄金の血なんだ。 抗原をひとつも持たない血液で、確認されているだけで50人もいない。 誰にでも輸血出来る分、自分に何かあったら死ぬ確率が高い。 その性質があったから、看護師を目指したんだけど……まぁ、もうどうでもいいや。 「さよなら、かわいそうな僕」 せめて白衣の天使になった気分で死にたいから、全身白の実習着のまま、端に立った。 そして、ゆっくりと前に体重をかけていく。 「ちょっと、何してんねんな」 聞き覚えのない声と共に腕を後ろに引かれて、思わず尻餅をつく僕。 「あなたこそ、何するんですか!?」 左手で頭、右手で尻を撫でながら振り返ると、青のサングラスを掛けた男性がキラキラした指輪を2個付けた右手で白くて長い髪を梳いていた。 問題なく、うちの看護学校の服装の規定違反をしている。 「いやぁな? 落ちそうになってたから助けただけやで?」 「自分で落ちようとしてたんです!」 「なんで?」 純粋な疑問のように言われて詰まる僕。 「まぁなんでもいいんやけど……ちょっと付き合ってくれへん?」 サボらして? という言葉を聞いて、彼の正体がわかった気がした。 「もしかして、死神ですか?」 合っても、合ってなくても変な人だ。 「似てるけど、ちゃうなぁ」 彼は目元にシワを寄せて口角を上げる。 「悪いようにはしないからさ、カラオケに行こ?」 奢るから、なんて言われたらうなずくしかなかった。 助けてもらったお礼だから、遊んだって許されるよね?

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