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第1話

* Γんっ……あっ……や、やめ……っ……い、いや……です……っ……もう___っ……」 Γそうは言うが、ルベリア王子よ。貴方様のここは__こんなにも、ワシを待ち望んでおる……いや、ワシの熱く猛ったモノを__と言い直した方がよいかね?さあ、ワシを肉体だけでなく心でも受け入れるのだ……っ__本来であれば貴様……いいえ、貴方様など誰からも受け入れられぬのだから……」 夜の闇に包まれた部屋に掛けられているランプの光は、揺らめきながらギシ、ギシと音をたてるベッドを照らす。 下卑た笑みを浮かべる金髪の男と、それよりも一回りは年齢が離れていそうな少年がベッドに横たわっている。 その少年は男から馬乗りにされ、半ば強引に押し倒されていた。それすなわち、両者の合意による性交ではなく、男から一方的に行為をさせられそうになっているということだ。 「ルベリア王子……相変わらず貴方のお姿は美しい。この緑と碧のオッドアイも素晴らしいが……何よりもお母上の見目を受け継いだ顔立ち__まるで、天使のようだ。貴方の愛を手に入れれば力を授けられる、というのは尚のこと……さあ、ワシと番になりなさい。貴方のお父上、お母上……いや、この国の全ての者がそれを望んでいらっしゃる。これを受け入れれば全てが円満に解決する」 Γ……っ…………!?」 少年のオッドアイの瞳が溢れそうになる涙のせいで揺らめく。 無論、少年はこんなことを望んでいる訳ではなかった。かといって、Ωの王子である少年は周りから酷く差別されていた訳でもない。 『いい、ルベリア……貴方はΩなのだから周りのαの人達と同じように激しい運動をしたり……危険なお外に出てはダメよ?そうなったら私__心配で、心配で――。貴方は真実の愛を知れば強大な力を手に入れられる唯一人の特別な存在なのよ……賢いのだから分かるわよね?』 『いいか、ルベリア……お前は周りの庇護がないと生きていけぬのだからキャンベル伯爵の愛を受け入れねばダメだぞ?まあ、その件を断るという万が一のことがあっても、だ……国の権力者の内の誰かの愛を受け入れねばならぬ。お前は頭だけは賢いのだから分かるだろう?』 幼い頃から、口を酸っぱく説教されていた。 他国のΩと違って暴行を受けたり、奴隷として強制的に働かされたり、下手したら処刑されるといった残酷な目にあわされていないため口を閉ざして意思を殺すしかなかった。 両親達や周りの王族の言葉に従うだけで普段は普通に接してくれるのだから____。 Ωという立場にしては、豪華な家具に包まれた部屋で生活するのを許され、時には厳しくとも普通に接してくれる両親や周りの者達に囲まれて不満などあるはずもない__そう思っていたのだ。 しかし、そんな境遇の中でも気を許して本心を語れる存在がいる。 それは、馬乗りにされて涙が溢れそうになるのを必死で堪えている少年――ルベリアの実の兄、つまりは第一王子のセレドナの存在だった。 ルベリアが実の兄であるセレドナの穏やかな笑みを頭の中で思い浮かべ、現実逃避しかけた時__すぐ真上から影が差し、気配を感じた。 その気配は、まるで本に出てくる怪物の如き恐ろしくおぞましい存在の《キャンベル伯爵》ではなくルベリアが今まで共に過ごしてきて四六時中側で見守ってきてくれた【聖鳥】なのだった。

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