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第4話
それからの日々にも目覚しい変化はなかった。
朝起きてご飯を食べ、自由時間。お昼頃にもご飯を用意され、食べたらまた自由時間。夕食もそう。朝昼晩の食事以外は基本自由時間だ。
とくにやることもないので、まだ日があるころには庭に出て図書室で借りた本を読んだり、ボーっと綺麗に植えられた花々を観賞したり、そのまま芝生に寝転がって木の根で寝たり。自由気ままに過ごしている。
スマホでもあればゲームをしたりsnsを見て時間をつぶせたりもするのかもしれないが、あいにく初日に充電切れでただの黒い画面の錘に成り果てた。
まるで長期連休、そう、夏休みのような日々。しかしこの国に一人で楽しめる娯楽は少ない。あまり人の手を借りたくない俺はせいぜい図書室を案内してもらうので精一杯だった。
この城の人たちは俺に対してクレイル同様興味がない。健全な男子高校生としてはまだ年若いメイドさんたちに興味津々なのだが彼女たちは俺に対して必要最低限しか口を開かないし用が終わるとすぐに持ち場へ戻ってしまう。避けられているようで少し悲しい。
午後、図書室でボーっとしていた俺はそういえば何故か読めるこの国の文字について不思議に思っていた。国語辞典、みたいなものはあるだろうか、探してみよう……と考えていたときに突然図書室の扉が開いた。
「どうだ?」
レヴカだった。
何がどうだ?なのか、主語を言わない奴だ。
彼はこちらに向かって歩いてくると、あっという間に俺の向かいの席に腰を下ろした。
「どうもこうも、暇だよ。これじゃ宿題があったほうがまだマシだ。いい加減帰してくれ」
もう何回目になるか分からない訴えを彼は軽く無視する。
「宿題か……そうだな、家庭教師でもつけるか?」
「家庭教師?なんで?」
「本は読んでいるようだが、この国のことをもっと知るべきだろう。……そういえばお前、文字は読めるのか?」
「何故だかね。でも今のところ物語しか読んでいない。なかなか面白いけど俺はもともと文学少年でもなんでもないから正直もうとっくに飽きてる」
「家庭教師をつければ暇もなくなるだろう。宿題も出させる」
「いらないよ!宿題なんか嫌いだし……ていうかどうせ戻るしいいよ、勉強とか」
「……お前はいつまで戻る戻る言っているんだ、子供じゃないんだから駄々をこねるな」
「はあ?どっちかって言うと駄々をこねてるのはそっちじゃないか!王は別に俺に興味なんかないだろう、さっさと元に戻してくれよ、俺がここにいる意味、今のところ何にもないだろ」
半分キレながら、これもまた何度目か分からないレヴカに対する怒り。
王にはあれ以来会っていないから、レヴカに八つ当たりするしかないんだ。
……レヴカ以外、俺とはまともに口を利かないし……。
「まあ、とにかく早速明日から家庭教師をつけるよう手配する。寝坊するなよ」
「はあ!?いらないって!!まじで!」
「……そういえば前から思っていたのだが……まじで、とはなんだ?」
「ぶはっ!……くく、真顔で言うなよ、まじでは、ほんとにって意味、」
いきなり真顔でおかしなことを聞いてくるレヴカに思わず笑ってしまう。いや、そんなことはどうでもいいのだ、
「おい、笑わせるなよ、話が逸れただろ、」
ふとレヴカを見ると、彼は少し驚いたような顔で笑う俺をじっと見ていた。
「……おい、どーした?」
「……笑うと、似ているな」
「ああ、そういうこと……」
なんだか無性にいやな気分になって、俺は笑うのをやめた。
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