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「じゃあ、結局バイト辞めないんだ」
「あれは、あいつが勝手に言っただけなんだって」
翌日。
結局泊まることになってしまったが、一晩も眠れば全身の気怠さは抜ける。ケツはひりひりしたままだが。
そしてなんとか復活した俺は司と一緒にマンションを出た。見慣れたマンションなのに隣にいるのが司だからだろうか、周りの風景がどれも新鮮だった。
隣を歩いていた司は目線だけをこちらに向けてくる。
「あいつって?」
「んーなんつーか、友達のような、保護者のような……」
「恋人?」
「んなわけないだろ!……第一あいつ、二次元以外興味ねーし」
そう答える自分の声は思ってたよりトーンが落ちてしまい、まるで拗ねてるみたいになってしまつ。
「二次元にしか興味ない、ね。……ふうん」
「な……なんだよ」
「言わない」
「は?」
「…………」
なんだよ、なんで若干面白くなさそうな顔してるんだよ。いや元々こんな顔だっけか?
行為中は嫌なくらい饒舌なくせに普通に話してると本当に大人しいというか、よくわからないやつだ。……とそこで思い出す、そうだ俺ほぼ初対面の相手と何やってんだ。
「ま、辞めなくてよかったな」
駅前通り、裏路地。
飲み屋が並ぶ路地を抜け、その一角にある階段のまで歩いていく。こうして誰かと出勤するのって初めてだな、とか思いながら司に付いて階段を降りていく。
然程馴染み深い場所ではないのに、酷く懐かしく感じるのはなぜだろうか。
不思議だ。
「着いたよ、原田さん」
「やべえ……どんな顔しよ」
「普通でいいだろ、別に」
「で、でも電話……」
と言いかけてハッとした。そうだ、あのときそれどころじゃなくて有耶無耶になっていたが司のせいで紀平さんと電話したんだ。
やべえ思い出してきたら死にたくなってきた。つかどんな顔してまじで会えっていうんだよ……。
「いつも通りでいいよ」
どうせ本気にされてないだろうし、なんて続ける司。他人事だと思って。恨めしいが確かにくよくよ悩んだところで今更感は拭えない。
司に促されるがまま俺は目の前の扉を開いた。
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