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休憩とは一体なんだったのか。 朝かも昼かも夜かも分からぬまま、気付けば俺は天井を見上げていた。 「も、司嫌い…」 「原田さんが誘ってきたじゃん」 「そうだけど、そうだけどな、お前人には限度ってのが……」 ベッドの上。 ケツは空のはずなのにまだ中に何かが入ってるような気がしてならない。スカートが捲れようがもうどうだってよかった。轢かれたカエルよろしく股おっ広げたまま動けないでいる俺に司は何かを差し出してくる。 「はい、これ。俺の服。裸よりましだろ」 「あ、ありがと……」 ここまで来るのにどんだけ回り道をしたのだろうか。ようやくこの布切れと化したウエイトレス服とおさらばできる。 そう安堵しながら服を受け取ろうと腕を動かした時だ。ジャラリ、と音を立て手首が締め付けられる。……忘れてた。両手首をしっかりと拘束した手錠の存在を思い出し、青褪める。 「ん?ん?!」 ガチャガチャと激しく手錠を引っ張り、千切ろうとするが――無理だった。くそ、俺にもっと力があれば。いやせめて筋肉、シックスパックなんて贅沢言わないからビーチで女の子にキャーキャー言われるくらいの体を!なんて言ってる場合ではない。 「司、これ、外れない。どうしよう」 最後の頼り、司に縋る。 それに応えるよう、俺の背後に腰を下ろした司はそのまま手首をそっと優しく掴んでくる。そして司は手錠を調べ始めた。 「鍵つきみたいだな。原田さん、鍵は?」 「わかんない。多分、あいつが」 あいつもとい翔太の糞野郎の顔が浮かぶ。……そうだ、あいつ今頃帰ってきたころだろうか。怒ってるか、心配してるかもしれない。アホみたいに気持ち悪いやつだけど、たまに優し……くはなかったな。散々な目に遭わされた記憶しかない。 「わかった。ちょっと待ってて」 翔太のことを思い出して感傷的になっていると、不意に司がベッドを降り、再度部屋を出ていった。 そして暫くも経たない内に司は戻ってきた。 ――ペンチを握って。 「なんでお前そんなモノ」 「俺もよく手錠の鍵捨てるから、念のため買っておいた」 ……捨てるのか?自発的に捨てるのか? どういう意味か知りたくなさすぎて深く聞けずにいると、「原田さん、背中こっち向けて」と司に背中を撫でられる。 相変わらず読めないやつだ。 俺司に命じられるがまま俺は背中ごと司に向け、そのまま軽く腰を持ち上げるように後ろ手に拘束された腕を差し出した。 「……ん」 「誘ってんの?」 「ちっ、ちげーから……っ!早く切れよ!」 何を言い出すんだ、こんな時に。というかまだやるつもりなのか。こいつの性欲は底なしか? ケツを守るためにおずおずと腰を落とし、そのまま司を待った。……が、司はじっとこちらを見たままなにも言わない。そして気付いた。まさか、こいつ。 「お…お願いします、外して下さい…」 そう渋々呟けば、「わかった」とペンチを握り直した司は再度俺の手首を掴んだ。指示待ちどころかおねだり待ちだから余計たちが悪い。 背後で司が動く。 手錠の鎖が小さな音を立て、そして次の瞬間ぶつりと音を立て鎖は引き千切られる。 そして。 「うおっしゃああああ!!やっと!開放されたああ!!!」 ようやく腕を束縛するものがなくなり、とは言うものの千切れたのは鎖だけで手首には手錠がしっかり残っているが、俺にとっては些細な問題だった。 ようやく、ようやく服を着れる!人としての権利を得られる! 「よかったね、原田さん」 「あぁ、ありがとな司」 「いいよ、別に。あのまま放置しとくわけにもいかなかったし」 そうそっぽ向く司はそうなんでもないように続ける。 もしかしてこいつやっぱり結構良い奴なのかもしれない。 「司……」 さっきまでクレイジーセックス野郎だとかストライクゾーンが沼とか無尽蔵金玉とか好き勝手心の中で罵倒してごめんな。そしてありがとう。 そう心の中で呟いた時だった。 俺の感謝の念が届いたのか、不意に肩をそっと抱かれる。顔を上げれば司と目があった。 瞬間。僅かに、あの射精しても滅多に表情変えない司が微笑んだ。 「じゃあ、気を取り直して」 「……え?」 「え?じゃないだろ。……アナルの休憩もう終わっただろ?」 言いながら人のケツを揉む司。 ――前言撤回、こいつはただの性欲過多の絶倫野郎だった。

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