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モンスターファミリー※
俺は絶体絶命だった。
この店で働き始めてもう何回絶体絶命に陥ったのかわからないが、それでも今は俺の自尊心、社会的地位が危ぶまれる危機に陥っているのは確かだった。
店員専用の便所の個室にて。
モップ片手に身構える俺の目の前には、チューブを手にした元友人の中谷翔太が立ち塞がっていた。
「カナちゃん、脱いで」
「……やだ」
「脱いで」
「嫌だっ!」
そして激しい攻防の末、実力行使に出やがった翔太に思いっきり身ぐるみひっぺがされたのだ。狭い場所じゃ全く役に立たない長物であった。
脱ぎたてほやほやの人の服を抱えた翔太は、寒さやら恐怖やらでぶるぶる震える俺を見下ろす。
「上半身よし、下半身よし、下腹部は…」
頭から爪先まで舐めるように向けられる視線は俺の股間で動きを止めた。服を脱がされようとも、必死に死守したパンツだ。
俺は股間を庇いながら、翔太を睨みつける。
「い……嫌だっていってんだろっ、これ以上してみろ、今度こそ訴えてやるからな!」
「これはカナちゃんのためだって言ってんじゃん、そっちこそ僕にいちいち言われたくないならその警戒心のなさどうにかしなよ!」
「な……っ!人を能天気アホみたいに言うなよ、俺は……俺だってなあ……!」
「だったらこれはなに?」
伸びてきた翔太の手に思いっきり下着のゴムを引っ張られる。そしてべろんと脱がされそうになり、「ぎゃ!」と悲鳴が漏れた。
「ちょ、おいっ!な、なにして……」
「何って……わからない?メディカルチェックだよ」
「メ……」
メディカルチェックってなんだよ、と突っ込むよりも先に丸出しになったケツを掴まれ思わず変な声が出そうになるのを寸でのところで堪える。
「待て、翔太……っ」
「触れた感じは大分この前よりかはマシになってるけど、あれからは本当に何もないんだよね?」
「っないって、言ってんだろーが……ッ!」
勿論嘘である。あるなんて言えば何されるかわからない。というか現時点でも大分手遅れなのだけれど、それでも閉じかかったケツの穴を触診されればそれだけで背筋がぶるりと震えた。
なにもかもあの日の司の爆弾発言のせいだ。あの日から翔太と言えばこの調子だ。この際非処女だなんだのを誤魔化すつもりはないが、だからと言って会う度にアナルのメディカルチェックをされ軟膏塗られる俺の身になってほしい。
「ないねえ、どうだろ?僕にバイト先も言わないし、あれだけやめなって言った酒を馬鹿みたいに飲むし、おまけにあんな格好で部屋から抜け出すようなお転婆だし」
「そ、それはお前が気持ち悪いことばっかするかだろうが!!」
「き……ッ!心外だな、僕は常に脇も甘いどころかがばがばゆるゆるのカナちゃんの代わりになって悪い虫が付かないように頑張ってきたってのに……!!」
「人をガバ(自主規制)みたいに言ってんじゃねえよ!」
「実際そうだったじゃん!僕が今までなんのためにカナちゃんの貞操を守ってきたと思ってんの?!それをどこの馬の骨かも分からないやつはんかに……」
「やたら女の子にモテないなと思ったらお前のせいか!!」
「いやそれは僕のせいじゃなくてカナちゃんの問題だからね?!」
売り言葉に買い言葉、俺たちは睨み合う。が、やがて我慢を切らした翔太が苛ついたようにバン、と俺の背後の壁を叩いた。そして。
「……っとにかく、今後は僕の目が黒いうちは二度と過ちのないようにしなきゃならないんだよ」
「っ、だ、だからってここまでする必要はねーだろ、そもそも俺のことを少しは信じ……っ」
「僕はもうその手には乗らないからね、そんなつぶらな目で見ても無駄だから」
「……っ、翔太……お前見ないうちにかっこよくなったな」
「露骨な褒めで回避するような手にはもう二度と引っ掛からないよ、あと褒め方も雑過ぎるんだよ」
くそ、最終手段すら効かないだと?どうすれば、と藻掻こうとするのもつかの間。
「っ、のわ……ッ!」
下着のゴムを引っ張られたと思えばおもくそ脱がされるのだ。丸出し状態のケツを慌てて隠そうとするが翔太の手は俺の防御を躱してケツを掴む。
「っ、ぉ、おいっ!翔太……ッ!」
「指の跡は付いてないみたいだね。けど、ここは……」
むに、と両サイドのケツの肉を割り開くように広げられる尻にたまらず「ぎゃっ!」と悲鳴を上げた。が、翔太のクソ眼鏡野郎は無視。それどころかまじまじと人のケツを見てやがる。
「相変わらず柔らかくなっているのは気に入らないけど、一先ずは肛門は閉じてるし括約筋もちゃんと反応するようになってるね」
「ッ、や、めろ……っどこ触って……ッ!」
「言ったでしょ、メディカルチェックって。……ほら力抜いて。次薬塗るから」
力を抜けと言われて抜けるやつがいるのか。弛緩を促すようにケツの穴、その膨らみを指の腹でこちょこちょされ息を飲む。
「しょ、うた……薬って……」
「軟膏だよ。ほら、これをカナちゃんのお尻の穴に塗り込むんだよ。体温で解けるようになってるから違和感もすぐなくなるものを選んだんだからね」
感謝してよ、とでも言うかのように自分の片方の指に載せた軟膏薬を見せ付けてくるのだ。指ごと捩じ込まれてほら大人しくしろなんてそんなことできるわけないだろ。嫌だやめろと抵抗するが翔太はお構いなしだ。がっちりと腰を掴まれたまま翔太はひくひくと反応しかけていたそこに思いっきり軟膏乗せた指をねじ込んで来やがったのだ。
「ぁ、あぁぁ……ッ!!」
腹の中、にゅぶりとぬめるように侵入してくるその指に堪らず情けない声が漏れてしまう。
「っあ、ぅ、て……め……っ」
「薬、塗ってるだけでしょ。カナちゃんが自分でしないから」
「っ、そ、んな奥まで……っ、やるな、いらねえから……っ、ぁ……ッ?!」
ねっとりの腹の奥、ちんぽの裏側辺りをぐるりと指の腹で撫でられればそれだけでぶるぶると背筋が震えてしまう。
く、くそ、そうだ。その通りなだけに素直に気持ちよくなってしまってる自分の体が憎い……!
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