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第9話
自分の部屋に戻って、ベッドに潜り込む。
頑張ったつもりだったけど、結局全部琴理任せになっちゃったな……。
もういい加減、自分のことは自分でできるようになりたいのに。
それで、もうちょっと琴理に楽させてあげたいのに……。
そんなことをつらつら考えているうちに、僕は眠ってしまったらしい。
次に目を覚ましたのは、勢い良く部屋の扉が開く音でだった。
珍しく動揺した様子の琴理。僕を見つけると、素早くベッド横に膝をついた。
「冬真様、ご無事ですか?!お怪我はないですか?」
そう言いながら僕の全身を確かめる。
「んー。大丈夫。ごめん。全然片付けられなかった」
目をこすりながら僕が謝ると、琴理はほっとしたように僕を抱いた。
「いいんです。冬真様にはまだ危ないですから」
どうやら、割れた花瓶を見て驚いて駆けつけて来てくれたらしい。
僕は今日あったことをすべて琴理に話した。
「だからさ、僕は琴理がいないとなんにもできなかった」
迂闊にも、涙が一粒頬を転げ落ちた。
琴理がそっとハンカチで涙を拭ってくれた。
「蓮に来てもらうべきだったのかもしれないけど、やだったんだ。ここは僕と琴理の家だから。僕には……お前だけだ」
ベッドから下りて、琴理にしがみつく。
「琴理。……琴理の代わりなんて要らない。琴理だけでいい」
琴理の腕が絡み付く。
「そんな嬉しいことをおっしゃられたら、私、どうにかなりそうです……」
すり、と軽く琴理の頬が僕の頬に触れ、顔を離した琴理は正面から僕の目をしばらく見つめた。
ゆら、ゆらっとその瞳が揺れて……、もう一度琴理は僕を抱き締めた。
温かくて、居心地がいい、琴理の腕の中。
僕もそっと腕を伸ばして、琴理のシャツの背中をつかんだ。
いつまででもこうしていたい。
けれど、しばらくして琴理は腕を離した。
「もう、おしまい?」
そう僕が口を尖らせると、琴理は苦笑した。
「私がこんなことを申し上げるのはおこがましいですが……続きはまた今度、ということでいかがでしょう。ご一緒に片付けをしませんか?もちろん危ないところは私が片付けますから」
「うん!」
僕は琴理と手を繋ぐと、軽い足取りで階段を下りていった。
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