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おはよう
*
翌日、杜月が目を覚ましたときには隣から温もりがなくなっていた。
昨日よりは良い目覚めだと感じながら、杜月はゆっくりと身体を起こす。
じんわりと残る腰の痛みに苦笑いをしながら、在咲が閉めておいてくれたカーテンを開ける。
もう随分と陽が高くなっていたらしい。
杜月は身体に負担をかけないようにしながら、在咲がいるであろうリビングに向かった。
リビングの扉を開けば、在咲が台所に向かっていた。
杜月が起きたことには気付いていないようで、せっせと手を動かしている。
昨日満たされたこともあり、炒め物の匂いにも、全くそそられない。
食事の匂いより、在咲の匂いの方が惹かれる。
音を立てないように在咲の背に近づき、杜月は控えめに抱きついた。
「うわっ! びっくりした……おはよう、杜月」
「んふふ……おはよう在咲」
いつも在咲からかけてくれる『おはよう』の言葉。
在咲から与えられるものが多すぎて、幸福過ぎるくらいだ。
杜月は幸せを噛み締めながら、振り返った在咲の胸に顔を埋めた。
「ねぇ、身体痛いんだけど?」
「仕方ないなぁ……今日は俺が全部やる。杜月はゆっくり休んでな」
「そういうとこ、好き」
にんまりと笑う恋人に、在咲はかなわないなと笑みを浮かべた。
[了]
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