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「おーい、要ー。御割先輩とじゃれてないで飯行こーよー」 「そうだぜ、シュウ。ミハに遊ばれてねぇではよ飯行くぞ」  そうこうしていると不意にオフィスの入口あたりから声がかけられ、俺はガッと三初を睨んでいた形相のまま振り向いた。  三初を呼んだのは、黒髪黒目のしょうゆ顔男だ。  没個性とはこれだとでも紹介されそうな普通のリーマンが、顔を青くしてさっと俺から目をそらす。  その後ろには、俺に声をかけた男がいる。  シャツを腕まくりして赤毛っぽいこげ茶の髪をオールバックにしたガタイのいいワイルドイケメンが、けらけらと笑っていた。  両方とも一言物申してやりたい反応だ。戯れてねぇし遊んでもねぇ。  こちらのワイルドイケメンかっこ笑いは俺の高校の頃の友人で、まさかの会社で再会した縁を持つ男──周馬(しゅうば) 冬賀(とうが)。  飄々としたノリのいい男だが、あの髪は自毛だからいじるとキレるぞ。  そして俺のキレ顔を見るたびに毎度青ざめて顔をそらすのが──出山車(いでだし) (まこと)。  三初の幼馴染みで同期。  冬賀と同じ部署で冬賀になついているが、俺のことは怖がっている。なんでだ。冬賀はキレたら俺より怖ェぜ。  あぁん? と苛立ちを抑えつつ時計を見ると、確かに昼休憩の時間に入っていた。  うちは休憩ベルなんかは鳴らず、仕事の進捗にあわせて休憩をとってもいいので時間の経過をすっかり忘れていた。  気がつけば腹の虫は現金なもんで、すぐにぐぅ、とエネルギーを強請った。  俺はパソコンのデータを保存してから、財布と携帯を引っつかんで立ち上がる。  方向が同じだから癪だが三初と並んでオフィスの入口へ向かうと、冬賀の影から飛び出した出山車は涙目で三初に抱きついた。  いつも他部署の後輩なのに出山車をかわいがってやってんだけど、なーんか俺から逃げるんだよなぁ。  そしてこの反応が面白い。  俺はどちらかと言うと犬派なのだ。 「出山車ィ~? お前先輩に向かってその態度はダメだよなァ~? いつもみたいにかわいがってほしいのか? え? この間大事な契約書なくして一人でこそこそしてたお前の探し物、見つけてやったのは誰だったかなぁ?」 「いっ! いやだなあお世話になってる御割先輩をまさか怖がるなんてするわけないじゃないですかあっはっは〜。よっ! 企画課の狂犬! カッコイイ!」 「ハンッ、最初からそうしてりゃぁいいんだ。ったく毎回謎に怯えやがって」  鼻を鳴らして呆れてやると、出山車はわかりやすくビキンと震えた。  笑顔がひきつってるぜ。  それを見ていた三初がせせら笑っている。 「はいストップ御割犬。俺の奴隷……じゃねぇや。幼馴染みいじめないでくれます? 真は昔ヤクザのベンツのエンブレムうっかりへし折って絡まれてから、筋モンが苦手なんですよ」 「誰の顔が筋もんだコラァ! つーかヤクザのベンツに手ェだすなんざ、お前そのうち鉄骨渡りとかさせられんぞ? よく生きてたなぁ、おりゃおりゃ」 「わわわわっ、もぉぉぉいつも髪ぐしゃぐしゃしないでくださいよおおぉぉ!」  生還を祝いがてら頭をなでまわしてやると、出山車は涙目で喜んだ。  よーしよーしかわいいやつめ。  妹がいる俺としちゃ、弟のようで庇護欲が湧く。ギャンブラーにならねぇようにちゃん世話してやんねぇとな。 「なぁミハ、マコがぼそっと奴隷呼びされてたの触れたほうがいい?」 「ん? 俺そんなこと言いましたっけ」 「オーケー言ってない」

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