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「舌、痛ぇのか……? 俺のデスクに薬箱あるから、口内炎の傷薬でも塗るか……?」
まぁ……一応、後輩だしな。
多少気まずいようなバツが悪い心地になりつつ、怪我の具合を心配する。
仕掛けてきたのは三初とはいえ、別に怪我させるつもりじゃなかったし。ちったぁ反省しろ! って思っただけだしよ。
痛がっていると思った三初は、そうやって心配する俺を見て、もう一度ため息を吐いた。なんだよオイ。
大したことはないのかと密かに安堵していると、三初はなにを思ったかごそごそとスーツのポケットを触ってスマホを取り出し、トントンと弄り始める。
ブラウン系のネコのカバーだ。
いつ見ても似合わねぇ。まぁ猫には似てるけど、かわいげがねぇ。
「三初?」
悲鳴も上がらなかった程度のダメージらしいのに黙りこくり、痛いとも大丈夫とも言わない三初。
なんだ、痛くないんだろ?
ならさっさと出てくれ。
「ん」
「?」
そう思っていると、予想外。
真偽を測りかねて急いた俺に対し、数秒後、俺の目の前にブラウン系のネコが突き出された。
正確には猫に覆われたカバーのスマホだ。画面を突きだされても、すぐにはそれがなんなのかわからない。それでも、うぅん? と顔を近づけ瞬きをして見つめると、画面の情報はすぐ認識できる。
そこには、無修正ヤラセなしとわかりきっている──昨日の俺の事後の姿が写っていた。……いやなんでだ!?
「アッ!? ま、こ、はぁッ!?」
あまりの衝撃に言葉が出ない。
全身の血の気が引いて自分の顔色が青褪めていくのがわかった。
反射的にバッ! とスマホに飛びつき奪おうとするが、難なく避けられホレホレとこれみよがしに鼻先でスマホを揺らされる。
ぐったりとデスクとチェアーに体を預け呑気な顔で意識を失っている、画面の中の俺。
その姿はなにを思ったかわざわざ片足を持ち上げて秘部がよく見えるように開かされた上、そこから甘そうなプリン液と白濁液をトロリと垂れさせている悲惨な姿だ。
こ、コイツ撮ってやがったのかッ!?
愕然とする俺の目の前でプラプラとスマホを揺らす三初が、スッと目を細めて妖艶に、凶悪に笑う。
「情熱的な口説き文句でしょ?」
「う、うわァァァァッ! 消せクソ野郎ッ! ってかなんで撮ってんだよ馬鹿かよもう俺が可哀想だろ俺がァ!」
「使うか使わないかはさておき人の弱みはとりあえず掴んどくタイプなんですわ、俺」
「掴んどくなよぉぉぉッ! よしんば掴んでもキャッチアンドリリースしろよ可哀想だろそいつらもそして俺もォッ!」
「先輩、個室で叫んだら響くんでトーンダウンしてください」
無茶苦茶言いやがるなこいつッ!
災難過ぎて微妙に泣きそうだ。死んでも泣かねぇけど。
狭い個室で俺の声が反響し、グワングワン響く。つい大きくなった怒声を手のひらで押さえて、きつく睨みつけた。
視線で人が刺せるなら三初は今頃穴だらけだろう眼光だ。
三初は左手で俺の顎をすくい、ぐっと顔を近づける。唇は触れなかったが、至近距離で見つめてくる容貌はムカつくほどイケメンだった。
ニンマリと愉快げな瞳に見つめられると、ぐっと息が詰まる。やばい。
このままじゃなんか、ヤバイだろ……!
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