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◇ ◇ ◇
「ちくしょう……世界滅びろ……いろいろと終わった……」
「先輩は初めから終わってるでしょ」
「お前は人間性が終わってるわ」
ぐったりと仰向けでベッドに沈みながら、隣に寝そべり不遜な態度で綽々とする三初を睨みつける。
が。噛みつくのも億劫で、俺はため息混じりにまぶたを閉じた。
──だいたい二時間。
散々恥ずかしいことをされながら恥ずかしいことを言わされ、満身創痍なのだ。シャワーを浴びる気力もない。
完膚なきまでに敗北だ。
三初にも気持ちのいいことにも勝てた試しがないので、仕方ないっちゃ仕方ない。
全裸のまま仰向けで寝ていることから、だいたい察してくれ。
近ごろピンポイントで弄られる赤く腫れた乳首は、擦れたら男の尊厳がなにかと消失する反応をしてしまうぐらいには調教されてしまった。ついブス、と不貞腐れてしまうのも無理ないと思う。
まぁ、基本的に最低限のマナーは守りやがるんだけどよ。後処理とか。
腸内洗浄は勘弁してくれってくらい何度もされたし、備えつけのゴムがあったからか今日は一度も中出しされていない。
それを思うと、ひたすら底意地が悪く恥ずかしくてねちっこい抱き方をされただけで、普段よりまともなセックスをした気もする。
……いや待て待て。
俺はなにをトチ狂ってんだ。
そこまで考えて、感覚が麻痺した自分にうおお、と頭を掻きむしりたくなった。
俺の馬鹿野郎。ケツにプラグ突っ込んでぬるま湯詰め込んでの、拘束しながら排泄プレイはまともじゃねぇだろ……!
その後もいろいろとあれだ。
身動き取れないのをいいことに突っ込んだまま動かずに乳首だけを弄ったりだな……カミソリで乳首にちょっとだけ傷をつけて、傷がむず痒くなったところをあれしたりだな……。
そこだけじゃイケないのに、好きじゃないって言ったのが癪に触ったのか、前は絶対直接刺激してくれなくてずーッと焦らされてたりしたぜ。
最終的にグズグズの俺が必死に強請るまでイかせてくれなかった。
そんで強請ったら強請ったで、際限なくイカされた。あと前触らねぇであちこち弄られたせいで後ろの感度上がった気がする。
結果的に死にたい。
いや、三初を殺して俺も死ぬ。
思い返すとやっぱり地獄な時間を振り返り、俺は実際の何倍もの疲労感を感じてしまった。犯人はケロッとしているのが余計腹立たしい。
「三初ェ……お前体力どうなってんだ……? てか歳の割に慣れすぎじゃねぇか? サバ読んでんだろ。本当は年上だろ」
閉じたまぶたを開いてじっとりと胡乱な横目で責めると、責められた三初は枕に肘をついたままふっ、と鼻で笑う。
鼻で笑うな。
いちいちムカつく野郎だな。
「は、こんな三十路いないでしょ。最近の若者の典型じゃないですか、俺。仕事嫌いだし人間関係だるいし好きなことしかしたくないし先輩は舐めてるし」
「先輩を舐めんな」
「物理的にも舐めたし」
「物理的にも舐めんな!」
んべ、と舌を出してクツクツ喉を鳴らされ、例の如く額に青筋が浮かんだ。
こんな若者の典型いるかよ。
というかこれが典型的な今時の若者とか世紀末すぎるわ!
「んま、舐めてるのは御割先輩ぐらいですけど」
「他を舐めていいから俺だけは舐めんな。最大限に敬え。崇め奉れ鬼畜サド」
御割様と呼べ。
お前だけは様をつけろ。
普段から習慣的なトレーニングをしているのか、無駄に引き締まった体をしている三初を憎たらしく思う。
スーツの上からじゃ俺よりひょろく見えるくせに、脱げば凄いんですってか。
俺のほうが厚みも肩幅もあんだよ。
なのに簡単に組み敷きやがって、こっちはお前のデケェアレで犯されて体ギシギシ言ってんのに涼しい顔すんなド鬼畜野郎。
申し訳なさそうにするか俺に敬意を払いやがれ。もしくは死ね。
あからさまに不貞腐れると、三初は愉快そうに口角を上げて俺の鼻頭をきつく摘む。
前フリのない嫌がらせになにすんだと唸れば、返事もなく手が離された。いつも思うが自由過ぎるんだよ、コイツ。しかもだいたい誰にでもこうだ。
それが許されるのは仕事ができるからだったり、イケメンだからだったり、要領が良くて抜群のタイミングで塩を送るからだろう。なんつーか目がいい。
負けず嫌いが疼いて、じっと観察する。
敵を打ち負かすにはまず知らねば。
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