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 ゆっくりとした動作で近づき、スっと目を細める。  俺の上に乗っている中都を見て、三初は俺の前に腰を下ろし長い足を組んだ。  俺を見つめ、コテンと小首を傾げる。  うっ……これあれだ。逆らったら面倒になるやつじゃねぇか。  尋ねるんじゃなく、言外に同意しか許さないってな空気出すやつだ。三初命令形。 「別に? 俺がずっとイイコでマテしてんのなんか忘れて? 存分にイチャこいていいですよ? 文句言うのも、ね? あはは」 「う、な、なんで怒ってんだよテメェ、十分くらいしか待たせてないだろ」 「それな! 俺とセンパイのスキンシップタイムを邪魔するなんかっ」 「来いよ駄犬(せんぱい)」 「中都、一回降りろ」 「はいっす」  違った。  三初命令形、ガチトーンバージョンだった。  それはついさっきまで喧嘩を売っていたポメラニアン、中都までもが素早く俺の上から降りる威圧感があった。  命令されると二言も三言も文句をつけたくなる俺も、こればっかりは危機察知能力が働いてしまう。  つい中都を避けてから、四つん這いで三初の元へにじり寄ってしまったくらいだ。  顔はぶすくれているし、まだ紅潮もしてるが。  素直に従うのは俺の性根が許さねぇ。  難儀な性分だが、それが俺という生き物である。 「なんだ、ッいッ」 「男抱きしめて赤くなってんじゃないですよ。……?」  一見機嫌が悪いように見えないがドン底の三初は、寄ってきた俺のむくれた頬を見て、シワになった眉間にビシッ! とデコピンをした。ぶちのめしたい。  しかし三初は人様のデコに暴行を働いたくせに、なぜかキョトンとする。  弾き心地か? 弾き心地が悪いのかコノヤロウ。デコを出せ、ぶん殴ってやるよ。  機嫌の悪い三初にそれを言うと後が面倒なので心の中で吠えて、現実では唸るのみの俺だ。なんだ。もうちょっと熱すぎてそんな気力がない。クッソ頭イテェ。  そうして唸る俺から三初は視線を外し、中都に目を向けた。 「八坂、この山先輩のだよな? 何着渡すの?」 「なんっ! じゅ、十着くれぇって思ってけど!」 「そ。じゃあこれとこれとこれと、あとこれ。このコート。そんでこのパンツ二本。あとは趣味じゃないし似合わないから要らね」 「あ?」 「えっ!?」  ポカンとする俺と中都。  なんでテメェが決めんだ?  そんでなんで急に用を急がせるんだよ。別にいいって言ってただろうが。  驚く俺たちを後目に、三初は俺の貰う衣服をチョイスして、さっさと畳み、さっさと店の袋に手際よく詰めていく。店員かお前は。転職しろ。 「用事終わり。八坂は永遠にサヨナラ。行きますよ先輩。さっさと立って?」  そして俺は腕を捕まれ立ち上がらされる。  理解不能の俺。アンド中都。 「は!? やだ! なんで俺のセンパイ盗んの!?」 「盗る盗る」 「そこじゃねぇだろ! お前のでもねぇし! ちょっとま、靴ちゃんと履けてな、三初……!」 「裸足でいいから」 「いいわけあるかッ!」 「三初ぇぇぇぇっ!?」  ──バタン。 「……え、デジャヴじゃね!?」

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