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「……あー、つまりその、なにが言いたいかって言うと……、んんッ……」
「ハリアップハリアップ。一言言うためにどんだけ前置きして目隠ししないといけないのかねぇ骨なしチキン先輩は。既に話半分くらいで聞いてますケド」
「話全部聞けよッ、雑に速度アップさせんなッ」
「あいあい。んで? 結論は?」
「ぐっ、だから、なんつーかっ」
せっかく人が決死の思いでまだ信じられないミステリーな感情を認めようってのに、なんて非情な野郎だチクショウ。
これも俺が考える三初像なのか?
だとしたら間違いねぇのが辛い。
んんッ! と咳払いをして目を瞑り、モゴモゴと結論を語る。
「お、お前は結構いいやつだ」
「ですよね」
「二人で出かけるのも、結構楽しいって、お、思った」
「それは光栄」
「そして今日は、言葉も、行動も……結構、嬉しいって、思ったわけだ」
「ま、俺って尽くし系ですし」
「後輩としてならお気に入りで、別に、もう写真がなくても、寝るのもイイって、思う」
「くく、男冥利に尽きるなぁ」
「ちょっと黙って聞けやロマンスブレイカーが!」
「はぁい」
チクショウ。こんがりワッフルのせいで全然いい感じにならねぇ。
そしてせっかくの奇跡的なラブ展開なのに。どら焼きベッドの上で甘味天国の空をふよふよしているのが、更に締まらない。
しっかりしろ俺の夢。熱で脳みそ溶けたせいで、こんなイカレた状況になってんだろうが。
俺はグッと拳を握り、目をちゃんと据えて、どこにあるのかわからなくてもワッフル三初の目あたりをキッ! と睨みつけた。
「正直恋かどうかというと、まだ自信はねぇ。でも、お前とこれからも出かけたり寝たりしたい。そしてお前が他のやつに惚れたらこの関係がなくなるなんて、いやだ」
「ん」
「恋人にならないとダメだってんなら、俺はそれを選ぶ」
「ん」
「俺は──お前が好きだ」
言っちまった。死ぬほど恥ずかしい。
ワッフル相手なのに、俺の顔はもう余すところなく茹でダコ状態だろう。自覚してしまうと、三初の前で普通にできる自信がない。
けれどそれも惚れたほうが負けってやつだ。恋をするってのは、喜怒哀楽の操作権を譲渡したようなものだろ?
……ふん。上等だ。
やってやるぜ、バトルアクション系ラブコメディ。
こうなったら腹を括るしかない。
相手はなにを考えているかわからない上にド級の天邪鬼な無敵の暴君大魔王。
その大魔王を、恋愛偏差値最底辺なバットステータス塗れの俺が、絶対に惚れさせてみせる──!
「やりきった顔してますけど、これ夢ね」
「死にたい」
「御割先輩、大大大好きぃ」
「三初はそんなこと言わねぇッ!」
うん。落ち着け。腹は括ったがちょっとダメージがデカ過ぎたので、しばらくはどら焼きベッドに埋もれさせてほしい。
頭まですっぽり埋まって丸くならせてくれ。こうして大人は強くなるんだよ。
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