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「──ってな感じで……。飯食って、ヤッて、雑談して、その……ちびっと最後に言っちまっただけで、割といい感じだったと思うんだけどよ……」
「シュウ……お前、本当に恋愛下手くそだよなぁ」
「いつの彼女思い出した? あ? 誰を思い出してそのセリフ言ったんだッ」
彼女の服装に合いそうな女性向けショップに入り、冬小物コーナーを漁りながら哀れそうに貶されて、俺は額に青筋を浮かばせる。
相談している手前強くは言えないが、俺の青春時代、社会人時代の両方を知っている冬賀に言われると、クるものがあるのだ。
「例えば、んん、高校の時の強面好きことミヤちゃん」
「うぐッ」
それは御割 修介、奇跡の初彼女じゃねぇか。
「初めての彼女で暴れるほど舞い上がってかわいいかわいい言ってたくせに初めて故に扱いがわからず、基本の返事が『おう』『そうかよ』『だからなんだよ』の三パターン。最終的に私のことどう思ってる? の返しが『女』で破綻」
「うぐぐぐ……ッ」
せめて彼女って言えよ、と肘で小突かれ、俺は絞り出すようなうめき声で答えることしかできなかった。
うるせぇ。それは当時も聞いたセリフだぜ。俺が女として意識してるのはお前だって意味だったんだよ。
女とかちっこくてやわこくて触れねぇし、自分の彼女だと思ったら生きてるだけでクソかわいく見えたんだよあん時ァ……ッ!
人よりだいぶ照れ屋な上に最後まで強がりな俺は、フラレた日は布団を頭まで被ってほろりと一粒泣いたものだ。
冬賀の手にあるどこのセレブ女優だと言いたくなる黒一色のフサフサコートをベシッ! と甲を叩いて戻させつつ、俺は眉間のシワを深く刻む。
「まぁなにが言いたいかって、まず女足に使うのはないよな。メシ奢らせてヤってしかも送らせるって……とんだオレ様さね。普通に破綻するってよ」
「そッ、それは深い事情があってそうなっただけだッ! 別に俺が誘ったわけじゃ……ッ」
一瞬声が上擦った。
まさか〝媚薬入りローションとア✕ルビーズでぐずぐずにされて断れなかったからだ〟とは言えず、ボカシた部分がクズ扱いに繋がり焦って言い訳をする。
するが、はた、と気づく。
……あれ? 俺、飯もセックスも自分から誘ってねェか?
少し思考を振り返る。
まず残業のあと、当然の顔をして送らせるつもりでついて行き、更に飯に誘った。うん。これは俺が誘った。のに奢らせた。
いやいや。これはアイツが言い出して、それも餌だったんだから無罪だろ。
んでそのあとのセックスはええと、俺が後部座席に押し倒して、俺が襲って、俺がおかわりを要求し、最終的にふてくされて拗ねた。
その上、家まで送らせて暴言を吐き、消えたわけだが。
「…………一応はその、同意の上でだぜ」
「年上の強面に誘われて断れないだろ~。散々ワガママした日に遠まわしな不幸の呪いでシメたなら、素っ気なくもなるしブチ切りもするってな。機嫌損ねて当然よ。つーかお前本当にその子のこと好きなのかぁ?」
「待て、現実を直視すンのに時間がいる……いろいろと俺にも言い分があるが、俺に悪いところがあることは全面的に認めるからちょっと黙れ……」
「あいよ」
「あとその手にある無駄に細長いマフラー置いて、その横のそれなりの値が張るスヌードにしろ……最近の女はそういうのを着けるってウェブサイトに書いてあった……誕生日じゃねぇんだし、ブランド興味ない女への初プレゼントはそんなもんだ……」
「なんだかんだ言って付き合ってくれる上に事前に調べてくれるお前の長男気質なところ、俺は好きだぜ」
うるせぇほっとけ。
たまたま朝の情報番組で見てただけだわチクショウ。
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