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なぜ好きの一言はすこぶる嫌そうに言わないくせに、俺をいじめる言葉はポンポンと躊躇なく投げやがるのか。鬼畜すぎるだろう。
「うぅ、ゔー……ッ」
「フッ、バカだな。冗談ですよ、ほら」
「ンあっ、あ……っ」
ガンをつけつつ唸っていると、避けていた前立腺を脈絡なく的確に抉られ、ビクンッ、と大きく体がしなった。不意打ちはやめろ!
どちらのものとも知れない唾液が口端からトロリとこぼれ落ち、火照った首筋を濡らす。
「エロいことしてますもんね。狂犬フェイスもスケベ顔になって当然ですよね」
「あ、っも、やめろ、いやっだ、っは……あ、あッ」
電流じみた快感の波の再来。
リングさえなければ、今のでイっていたくらいなのに、やはり達することができない。
グチャグチャと、ローションと腸液が混ざって粘膜と散々に擦れ合う音が聞こえると、無意識に腰が引けて逃れられない快楽に溺れる。
──ダメだ、このままじゃあまた出せないままイッちまう……ッ!
解放できない状態で迎える絶頂。
頭の中が茹で上がるような快感が、終わらない。地獄だ。あんなことばかりされ続けたら体力も気力も尽きる。
「そ、それもう嫌だ、嫌だって……っは、ひっ、イキ……っイキてぇ、んだよ、っ……んっ…あ……っ」
「くく、さっきから散々イッてるじゃないですか。別に止めませんよ。好きなだけどうぞ?」
「ちがっぁ、んっ、出したい……っ中じゃねぇ……っひ、く……っぁあ……っ」
「ははっ。俺の指、食いちぎられそう。ずっと締まってるし全身マジで引くほど痙攣してる。感じ過ぎてヤベェんですか」
「ふぁ触んなぁ……っそこ、ンっ、突いたら死ぬ、ぅっひっ、んっん、ッ」
たった三本の指でいいようにされ、頭を振って泣き出しそうになる。
声が抑えられず、口を閉じきれない。ひたすらに感じて、全身の筋肉がうねる。
「クク、死なれたら困るなぁ」
「ふッ……んぁ、う……」
頭もあげれないほど追い込んでから、三初はようやくそれらしい理由を上げて、俺の中から指を引き抜いた。
腫れた肉壁が縋るように絡みつき、抜け出す指へチュプ……と名残惜しげに粘つく。断じて俺の意思じゃねぇ。全部三初のせいだッ。
恨みがましい感情が満ちていくが、それを伝えるよりも、酷く切なく疼く下腹部がもどかしかった。
「はっ……はっ、……みは、ひぇぅ……」
「呂律回ってないですよ」
ぐったりとシーツに沈むだけの俺から離れた三初は、俺をからかいながら機嫌よく、ベッドの前に壁際にあった姿見を持ってくる。
「んうっ……!」
「先輩。せっかく恋愛関係になったのに、俺がちっとも変わらないで意地悪してるって、思ってます?」
鏡をセットした三初が戻り、ギシッとベッドが軋んだ。言いながら指を俺の口の中に突っ込んで、舌をニチャニチャと弄ぶ。
「ふぁ、らっひぇ、ふょぅ、う、んっ、ん……」
「酷いなぁ」
クツクツと笑うが、事実だろうが。
ケッ、鬼畜野郎め。
いくら人数や進捗を考えて問題がないとはいえ仕事をほっぽって帰るのも嫌で、それを置いても扱いが気にくわない。
せめてもっと普通に抱いてくれるのなら……別に少しくらい、うれしく思ったかもしんねぇ。少しくらいよ。
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