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 物事をハッキリさせるために真面目に威嚇している俺は、レンジの上から朝食が乗った盆を持ち、三初の正面に座る。  今朝のメニューは和食だ。  おにぎりが二つにインスタント味噌汁。  豚肉と野菜の蒸し物は、昨日の鍋の残りだろう。  それからキュウリとシラスの酢の物と、だし巻き玉子にたこさんウィンナー。  なんでたこさんなんだというツッコミは、我慢した。  なぜなら俺は怒っているからだ。  しかしながら朝飯がうまそうだと、そのありがたみで怒りが少し減ってしまう。  一人暮らしをしていると、朝飯があるありがたさが身に染みる。  特に料理のできない俺は、家で手料理なんてそうそうありつけない。  テーブルのポットから味噌汁のお椀にお湯を注ぎ、箸でくるりとかき混ぜる。  フリーズドライの味噌汁が解れた頃。  正面に座る三初が至極どうでも良さそうにスマホをポケットにしまい、ノートパソコンをパタンと閉じた。 「間森先輩と俺に恋愛関係ないって、割と前に言いましたよね。先輩がどう取ろうが、それ勘違いね。勘ぐる必要もないやつ。じゃ、終了で」 「あぁん?」  おいコラ人間性破綻野郎。  なに『取るに足らないことで拗ねるなよめんどくせぇ』ってな空気醸し出してんだ。  テメェがどうこうだけじゃねぇぞ。  向こうがテメェをどう思ってるかも重要だろうが。  俺の気持ち的にもそこんところ重要だろって話をしてんだよスカポンタンッ!  なんて内心吠えてみても、当然のことながら三初には伝わらない。  俺の心、三初知らずだ。  テーブルに肘をついてのんびりとすげないことを言われた俺は、根本的な問題が解決していないために、納得がいかず再度睨みつけた。 「じゃあなんで泊まりに来るんだよ」 「諸事情。俺があの人泊めるのもね」 「便利な言葉だなコノヤロウ」 「まぁいいでしょ。やましいことは一切ないし。野良犬気質は損だわ。痛くもない腹探らなくてもねぇ……」  しみじみとそう呟いた三初は、今度はちゃんとわかりやすく俺を哀れんだ。うるせぇ噛みつくぞ。  しかし納得するところもあるため、腑に落ちないながらも食事を始める。  それを眺める三初の言い分も、よくわかるのだ。本人がなんともないと言っているなら、架空の関係を妄想して責めることはできない。  詳しく説明してくれたっていいものだが、それはそれだ。人には詮索されたくないこともあるだろう。  ──チッ……大人の事情とか所用とかなんとか、煙に巻きやがって。  これだから大人は汚ぇって言われんだよ。利便性はわかるけどよ。俺も大人だけどよ。なんも言えねぇかよ。チクショウ。  モグモグとおにぎりを乱暴に口に突っ込んで咀嚼すると、特になにも言わずに手が伸びてきて、口元の米粒を奪われた。 「…………」  ……そういうところだろコラ、三初 要。  そういうところが竹本に乙女ゲーのキャラにいそうって言われるんだよ、性悪猫が。  テメェのようなやつはな、推しが最高レア度だったがためにガチャに爆死して推し不足でゾンビ化してるオタクの怨霊に殺されろ。  俺以外にもホイホイすんだろうが。  どうせよ。フンッ。  そんでホイホイ好意を持たれてもテメェにそのつもりはなくて、やろうと思ったからやっただけなんだろ。  いざ相手が告白とかしてきたら、ズバッ! と断罪すんだ。  わかりきってるわ腐れイケメン。  いっそ腐り果てて落ちろ。  呪いをかける勢いで内心罵倒する。  すると、突然食事の乗った盆がサッ! と引かれた。 「! なにすんぅあッ」 「なぁんか失礼なこと考えられてる気がしたんで?」 「いでででッ気がするだけで人様の寝癖引っ張んなッ! 引っこ抜く勢いで引っ張んなッ!」  ──取り敢えず引っこ抜くって、テメェオルマーかよッ!  寝癖を引っこ抜かれかけてガオゥ、と首だけで手に噛みつこうとすると、素早く顎を掴まれ唇にキスをされる。 「あは、味噌汁味」  ──そんで俺はペクミンかよッ!  すぐに離れてペロリと唇を舐めながら、にんまりと笑うキス魔。キス魔の魔は、大魔王の魔だ。  引っこ抜かれて戦って食べられる。  顔が赤くなった俺は、さしずめ赤ペクミンってか? やかましい。

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