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 そうやってしばらくバチッ! と鞭打たれていたが、苛立ちが増した頃、ようやく打撃が止んだ。 「んん、あれ? 勃ってないのですか? 私はあんまりこういうことをする側にならないので、難しいですね……」 「ン……ッ」  熱を孕んだ患部に触れられ、マネージャーの手のひらが冷たく感じる。  その手から逃れようと尻を揺するが、拘束具がガチャンと鳴るだけで、振り払うことすらできない。  羞恥も感じるし、屈辱的な気分だ。  けれどこういうのにも、俺は鼓動が高鳴ることがない。  シャワーを浴びてしっとりとした肌に汗が浮くのは、やはり嫌悪感と緊張が大きかった。 「それじゃあ今度は、恥ずかしいことを致しましょう」  間森マネージャーは常備されているローションボトルからトロリとローションを手に取り、また背中にまわって双丘の谷間へ指を滑らせる。  ツプ、とラテックス製のサックをつけた指が一本挿入され、俺は必死に「ゔぅぅッ」と唸り声をあげた。  だけど俺になにか特別な感情を持っているわけでもなく、ただ組み伏せて性的に弄びたいだけのマネージャーは、それを無視する。  グルリと円を描く指が二本になって巧みな指使いで後孔を解すが、広げることだけを考えた動きだ。  前立腺を探ろうと陰茎を擦りながら探られても、体が反応しようが頭の中は冷えていく。 「ゔぅッ、ふっ、んぅ…ッ」 「機嫌悪いですねぇ。でも、ちゃんと触れば勃ってきてるじゃないですか。要くんじゃなくても、御割さんは感じるんですよ? 痛いのも好きで、他の男に触られても好き。マゾってお得ですね」  愉快げに揶揄され、俺はだからなんだと反抗的なものがフツフツと湧き上がり続けた。  せめてもと指を締め付けないよう、三初に教えこまれた肉襞の動きを、できる限りセーブする。 「んっ…ん…ッ」 (こんなの……違ぇ……痛みも羞恥も、相手が誰でも感じたってな、全然違う……っ全然、物足りねぇんだよ……ッ)  泣きたいような、暴れたいような、温度の高い感情が燃え上がった。  三初なら俺の威嚇にはきっちり平手でも与えて、言葉も用いて叩き折るだろう。  三初は俺の反応を見逃したりしない。  俺がイイように尽くすこともないが、俺を無視して独りよがりな行為と感情を押し付けたりも、しない。  それは初めて抱かれた時でもだった。  アイツは俺に気持ちいいでしょ? と言う時、俺がどんなに泣いて嫌がろうと、必ず快感を感じるようにするのだ。  俺はそんなことすら、無意識に三初と比べてしまっていた。 「うーん。なかなかいい締まりですね。自主トレしてるんですか?」 「ん……ッ」  クチュクチュと内部をかき混ぜていた指が、ズルリと引き抜かれる。  トレーニングなんてものはしていないしする気もないので、ブンブンと首を左右に振り、不満を露わにして暴れた。  しかし必死に逃げ出そうとしても、鉄製の拘束具が外れるわけがない。  緩衝材を挟まずにつけられたおかげで、足首と手首には擦れた痣ができている。

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