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(……それって、やっぱ我慢させてるってことになンのか?)
組んでいた腕を解き、ゆっくりと歩き出す。
俺は対等、できれば俺のほうが多めに、相手に心を砕いたりなにかしたりしたいタイプである。
けれど俺と三初だと、年齢とガタイだけが上で、後はボロ負けのコールドゲームだ。
そして、考えた。
バレンタインの時、俺が思ったのは〝体が気に入ってんなら、もっと上手くなってそれで満足できるようにするのも辞さねぇ〟だ。
三初は、俺が俺でただの三初を叱りながら受け入れ続けてくれればいい、と言ったけど、それはそれ。
そういう当たり前のことではなく、もっとスペシャルな気持ちを与えたい。
特に俺は口が悪くて態度も悪く、デリカシーもなくて察しも悪い、素直じゃない恋愛弱者なのだ。
俺は三初が、まぁ、その、なんだ……かなりす、好き、だからよ。マジで悔しいけど。
俺を選んでよかったと思わせるには、努力は必須だろ?
けれど俺が性技を磨こうと考えた矢先に、あのマンネリ疑惑である。
おかげで俺は焦ることになり、間森マネージャーゲス野郎にあわや食い物にされるところだ。
迷惑もかけたし、優しくもしてもらった。
三初は素面で甘いことを言ったり優しくするのが性分的に不可能病を患っているのに、昨日は怒りやらを抑えて甘やかしてもくれたんだ。
貰ってばかりではいけない。
うん。まぁ、我慢させるのは体に悪いだろ。
将来老老介護になる可能性が高い同性カップルとしても、健康的に生きてもらわねぇと。
ブツブツと考えながら歩いた俺は、ベッドに腰掛ける三初の前に到着し、ガオウッ! と気迫で押し迫った。
「よし、三初ェッ」
一応、頭痛に響くと困るので勢いだけで声はやや大きい程度である。
「なんですか。牙むき出しのシェパードみたいな顔して」
膝に腕を置いてだらりと座る三初は、めんどくさそうに顔を上げて、仁王立ちの俺を見つめた。
その顔を潰さないようにギュッと抱きしめ、頭をなでる。
それはもう、ワサワサとなでる。
「なにしてんの?」
「オラ。どこにでも傷つけていいから、お前、俺をイジメろよ」
「なに言ってんの?」
遠慮すんな、と言うと、三初は俺の背中を指でなぞり上げた。
俺はゾゾゾ……っ、と背筋がうねり、飛び上がって三初を解放する。
なにしやがんだコノヤロウ。
「これでどうやって飽きればいいんだかね……」
「く、クソ、俺が素面で正面から抱きつくのは、結構な心構えがいったって言うのにチクショウ……ッ」
「やー既にイタイ人を更に虐めるの、可哀想すぎますよ。頭も。流石の俺もこれ以上は傷つけれないわー」
「誰がメンタルいたぶれっつったんだコラ」
ベショ、と床に手を付き悔しさに震える俺には、粗雑な返答だけが投げられた。
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