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第七.五話 暴君カレシの尽力
間森マネージャーにあわやオモチャにされかけてから、一週間が経つ。
休み明けに会社で会ったマネージャーは相変わらず、ケロッとしていた。
けれど俺と三初の仲を拗れさせるようなことはしなくなったので、懲りてはいるらしい。
ついでに言うと、俺は出会い頭に宣言通り、思いっきり鳩尾をぶん殴った。
顔だとバレるからな。
かといって報復をしないほど優しくはない。やられたら是が非でも反撃するのだ。
これでチャラにしてやる俺は、温和すぎる部下だと思う。
ちなみにおはようございます、は「次は玉を潰してやる」である。
低く唸って挨拶すると、三初は怒らせられたが俺を折ることには成功していないので、マネージャーは瀕死のままソワソワとしていた。
けれどなにをしても反応のよくない三初にガチギレされたのが相当ご満悦であり、やはり相当懲りたらしい。
色気のある憂い顔で「御割さんのお尻と棒は諦めますよ」と宣言した。
チッ。命拾いしたな、ゲス上司め。
そしてマネージャーが「お仕置きの後に抱いてくれてもよかったんですが」と誘惑しても、三初は「一棒一穴主義なんで」と綺麗な笑顔で笑っていたのだ。
綺麗な笑顔ということは、愛想笑いということで、その素顔と真意は暴君のみぞ知る、である。
まぁとにかく。
これで間森マネージャーに悩まされることは、今後本当になくなったわけだ。
となればとりあえず、俺と三初の交際に憂うことはもうない。
晴れやかな気持ちである俺は、現在──迷惑をかけたセレクトのマスター、ナーコへ、詫びを入れにきていた。
「いろいろと迷惑かけたな。相談したくせに結局バレたし……悪かった」
「わざわざありがとねぇ! 全然いいのよ〜っ。アタシだってちっともキレイちゃんのオイタを知らなかったんだもん」
営業時間外である昼間に訪ねて菓子折を持って謝ると、ナーコは笑って受け取り、大丈夫だと手を振る。
この度量の大きさというか、細かいことは気にしない兄貴肌なところは冬賀に似てるよな。
せっかくだから掃除も手伝おうと声をかけると、快諾してもらえた。
従業員は店の準備をする時間まで来ないので、掃除はいつもナーコがやっているらしい。
「そう言えばシュウちゃん。ここに来ること、あのイケメンカレシには言ったの?」
椅子等を上げてから箒をカチャカチャ動かし、床を掃除していると、グラスを拭くナーコが楽しげに声をかけてきた。
「いや、言ってねぇけど、まぁいいんだ。知ってるからな」
「なによぉそれ。なぞなぞかしら」
しかし俺は冗談交じりに笑われたって、気にすんなと誤魔化す。
そりゃカップルアプリのカレンダーに〝セレクト、詫び入れ。開店前に帰る〟って書いたからとは、言えねぇだろうが。
ムスッと不貞腐れた顔をして、赤くなった頬を指先でかいた。
クソ、名前が羞恥プレイすぎるわ。
カップルアプリってなんだ。俺とアイツをそう表すなコノヤロウ。
「俺ばっかりいつも恥ずかしいじゃねぇか……ッ、涼しい顔しやがって……ッ」
ガチャガチャと掃除に集中し、ゴミを一箇所に集めてちりとりに入れる。
するとナーコが照れ隠しの独り言を聞いて、「あら?」と声を上げた。
「そんなことないワ。シュウちゃんのカレシね、あの日、シュウちゃんならキレイちゃんとルームよって教えたらね? 目の色変えて、キレイちゃんを殺さんばかりに怒ってたのよ〜」
「は?」
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