303 / 415
03
とまぁ、こんな感じの休日である。
連休とは言え出かけなくても、コイツとの休日はいつもそれなりに充実していた。
最終的には三初が家で温泉卵を作ってくれたから、外食しなくても良くなったり。
天ぷらも揚げてくれたし、色ご飯も炊いてくれた。和食は好きだ。
俺はブロッコリーの胡麻和えを作ったぜ。
混ぜただけだが、立派なもんだ。
夕飯の買い出しに行った時、せっかくの連休だから宅飲みしようってことになって、酒類も調達。食と酒の出資は俺だ。
そしてあれもこれもとうまいのと、明日が休みということもあり、リミットを気にせず飲んだ──結果。
「んぅ……お前、聞いてるか? みはじめの飯がな、いっぱいうめぇんだ……いろごはん」
「そりゃどうも」
当然のように、俺はすっかりへべれけになっていた。
わざわざ席を引っ張って移動し、三初の隣に座ったのである。
三初にしがみつき本人に本人のノロケをするとは、素面の俺が見たら引きこもるだろう。
けれど今の俺には、三初がいるなら絡むのが、当たり前のことなのだった。
「あー……そんなにうまいなら、さっさと飯食ってください。俺に絡まないで」
「う、ん……明日の朝、おにぎりにしてくれよ……」
「アホだなぁ。酒飲みすぎるから飯食えなくなるんでしょうが」
「たまごは食う……んぁ」
「あーんする代わりになにしてくれます?」
「ん、ぐ……ん、なんでもする……みはじめ、好きだ……」
「もちっと捻って」
「いっしょに風呂入りたい……」
テレビで警察密着、みたいな番組を見ながら、三初は俺の口に温泉卵を突っ込んだ。
好きを捻れと言われて一緒に風呂に入りたいと言うと、「お、珍しく上出来」と楽しそうに笑う。
普段の俺なら絶対にこんなことは言わないが、今の俺はイカレている。
まったく、救えねぇ。
途中までは「俺の酒を取るんじゃねぇ。こっち来んな」と悪酔いしていたのに、一線を超えるとこうだ。
でもそれも仕方ねぇよ。
三初が俺の目の前にいるんだから、仕方ねぇだろ。
三初は俺が酒に酔って好き好き言うと、物凄くわかりにくいが、多少照れてるんだ。
実はな、あーとかんーって間を置くのは、半分くらい照れ隠しのやつ。最近気づいた。
顔に出ないけど、三初は割と俺の言葉で照れるし、動揺もする。秒で平常に戻るだけ。
ひたすらあーんと温泉卵を食べさせられながら、誰にかはわからないがフンスと鼻を鳴らす。
「んじゃ、お片付けしましょうか」
「みはじめ、好きだ」
「先輩、思ったことなんでも口に出さない。もっと捻って」
「ん……俺、抱いてくれる、か……?」
「んー……だっこね。片付けるから無理」
「うっ」
すりすりと頬ずりしながらねだってみたが、今度は出来が悪かったらしい。
食事を終えさせた三初は俺の頭をグイッとおしやって立ち上がり、手際よく食器や余った食事を片付け始めてしまった。
「……ぅあぁ〜……」
残された俺は三初が座っていた座椅子に凭れこみ、ダラリと脱力するしかない。
俺を抱き抱えられる三初なのに、俺より後片付けを優先しやがった。なんてやつだ。いつもありがとう。
前を向くと、警察密着テレビでは痴情のもつれで喧嘩になった夫婦を取り押さえる現場が映されている。
痴情がもつれると逮捕されるのか。
世知辛ぇ世の中だな。よくわかんねぇけどよ。
俺はフラフラと立ち上がり、梅酒のパックを手に取りながら、ソファーへ移動した。
構ってもらえないものだから、一人で酒を飲み、ソファーで赤くなって揺れる。
ともだちにシェアしよう!