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翌日は、一日を使って引越しをした。
衣類や仕事道具、使い慣れた雑貨など、最低限の荷物を三初の家へ運び入れる。
荷造りと荷運び、荷解きをすれば、一日なんてあっという間だ。
こういう時、相手が恋人で良かったと思う。
寝室は一つでこと足りるし、プライベートなんてダダ漏れでも構わないから、ある程度の距離を取れば問題ない。
俺の荷物は客間である小さめの洋室に運ばれ、とりあえずの住処も与えられた。
過去に一人暮らしにしては無駄に広いと思ったのを、訂正しなければならなくなった俺である。
その後は夕飯を食べながら、居候中のルールも決めた。
期間内は家賃を折半する。
雑費と光熱費は三初が払うので、食費は俺が払う。外食は別。
家事については、できる時にできるほうが率先してやることになった。
料理ができない俺が洗い物をするというのは固定だが、お互い一人暮らしをしていて家事はできるので、そうしたのだ。
ま、相手の性格はわかってるしな。
三初は自分がなにもしない状態で人に押し付けることはしない。
押し付けられるのが嫌いなのだから、当然やらない男だ。
俺だって自分の世話を誰かに押し付けるのは、むず痒くってできないだろう。
そしてどこにどの生活用品があるのかや、家電の使い方、生活のルールなんかは、まさかのガイドがついた。
そういうのを文書にしたものをPDFファイルで送りつけられたので、いちいち聞かなくても把握しろ、ということである。
有能な暴君、というのを体現した行動だ。
効率厨め。
兎にも角にも、こうして始まった三ヶ月の居候生活。
始まって一週間が過ぎ、祝日やら土日やらが重なった長いゴールデンウィークも、終わりへ向かう。
しかし残すところ後二日となってから──俺には既に思うところが芽生えていた。
「…………」
三初宅の無駄にふかふかなソファーに寝そべり、マルイを腹の上に乗せながら、ムスッ、と不貞腐れる。
なにがどうして不貞腐れているのかと言うと、話せば長くなる話だが。
結論からかんたんに言うと、目的が明確な恋人から日常的な同居人になった三初は──超個人主義だったのだ。
「おいマルイ。お前の飼い主、マジでサイボーグかよ」
「ナーウ」
「全然わかんねぇ」
犬派なのに猫にやたら構われる俺は、飼い主よりもかわいげのあるマルイの額を、カリカリと指先でなでる。
とりあえず根拠を説明しよう。
普段俺がここに来る時といえば、仕事帰りに食事に行った帰りに泊まる時や、ここで夕飯を作って食べる時だった。
いわゆるお家デート、ってやつの時も、やることはまぁ決まっている。
お互い大人で車もあるとなれば、基本的に外へ連れ出すことも多い。
とはいえおおむね俺の部屋に泊まったり集まったりしていたから、三初のプライベートをじっくり知ることなんてなかった。
しかし住むとなれば話は別。
流石に毎晩ヤッたりしねぇ。
当然ゴールデンウィークだからって、毎日デートしたりもしねぇだろ?
そうなれば三初というのは、元来気ままに生きる生き物である。
どうにも俺をマルイやナガイと同じように扱うフシが、目立ってきたのだ。
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