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 ◇  その日の夜。  モンモンを抱えたまま仕事をしていた俺は、夕飯時になってテーブルに着いても、まだモンモンとしていた。  ちなみに今日の夕飯の一品は俺が作ったんだぜ。  三初はミートソースのパスタと豚しゃぶサラダ。  俺が作ったのは冷蔵庫の余り野菜で作るコンソメスープだ。  半分の人参とか一個だけのジャガイモとか若干しなびたキャベツを、朝飯に使うウィンナーで煮込んだ簡単な料理である。でもちゃんと料理だ。  野菜別に切り方があるんだと三初に小馬鹿にされつつも調理し、ちゃんと野菜もくったくたにならずに完成させた。  多少黒コショウが効きすぎていることを除けば、完璧な仕上がりである。  ズズ、とスープを飲んでパスタを飲み込み、朝礼のコンビ再結成の話を振る。  俺はこんくらい気にしてるんだから、お前もちょっとは気にしてろ。  そういう気持ちも若干ある。  絶対言わねぇケドよ。 「まぁ俺は別に、仕事に関しては、経験不足な系統の企画をしないといけないわけじゃないんで、あんま気にしてませんけど」 「そんなこったろうと思ったわこの俺心不感症めッ」  そうは言っても案の定気にしていなかった三初の返答に、俺は目尻を吊り上げてガオウッ! と吠えた。  クソ、ちっとは気にしやがれ。  どれだけ内心で唸っても届かないのは、いつものことだ。 (自分は外されたのに、同じ職場故に山本と二人で仕事するお前を見るハメになるってのが、俺はなんとなく気にくわねぇってのに……!)  ムスッ、と不貞腐れた俺はさっさと食事を進め、眉間にシワを寄せたままそっぽを向く。  どうにもならなくても寂しがれ。  仮にも恋人だってのに、リップサービスをする気は一ミリもないらしい。  そうして拗ねた俺を見ていた三初は緩慢な動きで手をあげ、前触れなく俺の頭を強かにチョップした。 「いッ!?」 「俺より先輩のほうがやばいと思いますけどね」 「テメェのせいでそのやばい頭から脳細胞が死滅したわチクショウ死ね」 「ないものは死滅しない。逆転無罪」 「どっちみち侮辱罪で有罪だろオイ」  ブンブンと頭を振って痛みを飛ばしながら、ふざけるなと威嚇する。  こいつはなんでいちいち俺に危害を加えてくんだ、コノヤロウ。  慣れたけどな。不本意ながらなッ!  とりあえずこのままでは話が進まないのでいつか復讐することにして、それ以上なにも言わずにじっと睨む。 「竹本先輩は柔軟なタイプですし結構鈍感なメンタルしてるんで、フェスの出店とかできますけど……先輩それ、壊滅的じゃないですか」 「ぐッ」 「竹本先輩が今担当してる企画って、ショッピングモールの限定店舗販売ですよね? あの夏味トポスのお家でできる食べ方ってやつ」 「ぐ、ぐ……ッ」  至極まっとうな指摘に俺は睨んでいたのを一転し、目力を緩めて呻く。  三初の懸念は物凄く的を得ているのである。

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