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 ガゴン、と重さを計測して分別ラベルを貼り付けたゴミ袋を指定のコンテナに入れて少し気落ちする。  別にスタッフとの不仲程度でいちいち凹んでいるわけじゃない。  自分の短所がそれらを少なからず加速させている、という現実に僅かばかり凹んでいるだけだった。  本当は……多少の憤りも感じている。  俺はあくまで会社のために顧客のニーズに合わせた企画を考えて、そのために必要ないろいろを各部署や各企業を繋いで形を作り、目的のイベントや販売を促進させることが仕事なのに。  要するに、依頼品が売れるようターゲットを定めて宣伝して工夫を凝らしてマーケットに送り出すが、それをこの手で棚に並べたりはしないということ。  レジを打ったりしない。  当たり前だ。  自分に営業が不向きなことを、俺は昔からちゃんとわかっている。  わかっているから接客系がメインにならない裏方部署を希望した。  なのにこうしてトラブルでもない話題を呼ぶポジティブな現象が起こって、俺にとっての不都合が重なり、不慣れな業務をしなければならなくなった。  希望の会社に入って希望の部署に配属されようとも、苦手を全ては避けられない、といういい例である。  企画的にはチャンスなのに、俺は要領が悪くてコミュニケーション関連が下手くそだから、そのチャンスを生かしきれていない。立案者じゃない俺が竹本と担当を入れ替わる意味もなく。細部がスムーズに行かなくなる。  あんなに下準備をしてトラブル対策も頭に入れたが、まさか一番うまくやれないことに躓くなんて、思わなかった。 「……あー……クソ。……最低だな」  綺麗に手を洗って消毒してから、従業員用のトイレを出る。  ささやかに悪態を吐いた理由は、脳裏に浮かんだ元相棒のありがたみと自分の不甲斐なさを同時に痛感したせいだ。 『うわそれどう見ても俺向きの仕事でしょ。ハウス、御割犬。いても邪魔なんであっちでデータチェックしててください。ほら資料作んの得意なんだし』  いつもさりげなくフォローしてくれていたアイツを思い出す。  問題解決担当は、アイツだった。  合理的ではない俺にほんの少しクールな手助けをする。  竹本が悪いわけじゃない。  ちょっと軽率な行動が多いが竹本はできるやつで、いいやつだ。  スタッフの不満には気づいていないし、接客が俺に向いていないと気づいていてもフォローする余裕がないんだろう。  俺だって、竹本に迷惑をかける気はねぇんだ。  経験不足の企画で勝手がわからないからって、自分の苦手な仕事だからって、そんなことは言い訳にしかならない。  仕事ならばやらなければならないのが、大人というものだ。  多くの社会は、そういう仕組みになっている。  ただ、ただ、思い出してしまう。 「………三初」  俺に合うのは、仕事でも、私事でも、やっぱりアイツが一番なんだろう。  不慣れな仕事だろうがなんだろうが、今一緒に仕事をしているのがアイツだったら、もっとイイ空気で呼吸ができた。  こういう弱音も、アイツにならなんでもない愚痴として吐き出せる。笑い飛ばしてくれると知っているからだ。だからこんなに思い出す。  アイツがいれば……って。  なんてな。独り言だけどよ。  バックヤードを出て早足に戻りながら、くだらないもしも話を考えた。

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