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02
「腹減ってる時になに言ってんだか……昼飯がタコ焼きとかお好み焼きとかしょっちゅうあるじゃないですか。しょっちゅう使うなら普段買うでしょ」
「ンなもんしょっちゅうねぇよ。焼きそばならあるだろうがタコ焼きとかお好み焼きとか滅多に昼飯に家で作って出すもんじゃねぇ」
「無視できねーぶん並みのクレーマーよりめんどくさいなぁ……」
「クレーマー言うな。無視もすんな」
「だぁから構ってるんじゃないですか」
いまいち噛み合っていない俺と三初。
三初は呆れたため息を吐きつつ、手首のスナップを効かせて素早くふっくらカリカリのタコ焼きをひっくり返していく。
それから皿の上に、鰹節と青のりをパラパラ。
「おかしい……なにもかもおかしい……!」
「なに。お好み焼きマヨが気に食わなかったんですか? これソース系ならなんにでも合うマヨなんで問題ないですって。とん平焼きとか、オムそばとか。あ、イカ焼きとかも。今度からタコ焼き専用買っておくんで黙って餌食ってて。カツオ踊ってるうちに」
「手軽な昼飯とか言ってナチュラルにタコ焼き器が出てきた上にスムーズに焼かれた俺に常識の顔で専用調味料を出すコイツの文化がおかしい……ッ!」
「はぁ……焼き立てのタコ焼きにすぐ手を付けない駄犬の文化のほうが理解できませんって」
「もがっ」
突然、腕組みをして裏稼業の人間がごとき目つきで三初を観察していた俺の口の中に、いい具合に冷めたタコ焼きを突っ込まれた。
パラパラとしていたのは、俺の未完成のタコ焼きを完成させていたらしい。
──だからって一言もなく人様の口の中に突っ込むんじゃねぇ! 通り魔か!
放置していたせいで火傷はしなかったが口の周りがソース塗れになった俺は、渋い顔でキレ気味にタコ焼きを咀嚼する。
ったく、三初は勝手だぜ。
香ばしい香りと青のり、鰹節の風味がマッチして実に香しい食い物だ。
こんなもん勝手に突っ込まれたら口の周りベタベタじゃねぇかチクショウ。
てかちょっとマスタード入ってんのかこれ。ソースは甘めだし、トロっとしててトンカツソースとかの辛みがあんまねぇ。
カリカリの外側とトロトロの内側をソースと一緒に噛んでいるうちに噛み応えのあるタコが見つかるとか。
食いごたえ抜群かよ。
飲み込むと腹の中あったまるしよ。
「…………」
……まぁ、ソースは舐めときゃいいよな。屋台とかで食うタコ焼きよりちっせぇから、量入れねぇと夜まで持たねぇし。
「…………」
「そこらへんは冷蔵庫掃除で若干食べきれなかったサラミと明太子ですね」
「おう」
「右の皿、野菜補給にブロッコリーとアスパラ」
「おう」
「そこは当たり。俺のつまみのクリームチーズとクラッカー」
「おう」
俺はテーブルの上に並べられたタコ焼きをソースとマヨ、鰹節と青のりで彩り、手当たり次第にご賞味する。うめぇ。
タコ焼き、うめぇな。
三初がタコ焼きを作りながら教えるタコ以外のタコ焼きもなかなかイケるぜ。
甘いもんがあれば最高じゃねぇのか?
「普通にチョコ入れて焼いてもいいんですけど、あとでホットケーキミックスで鈴カステラにしましょうかね」
「お~」
──自家製タコ焼きランチ、御割 修介の文化に根付く。
こうしてタコ焼きが焼けるのを大人しく待つようになった俺は、三初の家に泊まった時、しばしばキッチン上の収納を開けるようになるのであった。
了
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