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【家族以上 2】
◆fujossy様ユーザー企画投稿作品
★「絵師様アンソロジー夏」7月6日19時公開!★
【キーワード】
①浴衣でエッチ
②おじさん攻め×美青年受け
③秘密の共有
そんなシチは、覚束ない足取りで部屋の畳を踏んだ。
「おまつり、みんな……いくって」
俺のすぐ近くに立ったシチが、言葉を区切りながら呟く。
つい数年前まで、シチはずっと海外に住んでいた。
日本語が分からないわけではないが、話すのは得意ではないらしい。いつも、こんな調子だ。
気付けば、家の中が静かになっている。
シチの言葉から推測するに、親戚や家族総出で近所の夏祭りに行ったのだろう。
「あれだけ騒いでたくせに、随分と元気なこった。……シチは、行かないのか?」
振り返ると、シチはフラフラと体を揺らしていた。
「おさけ、のんだ。だめって」
二十歳になったばかりのシチに、酒を強引に勧めた奴がいたのだろう。
かなり飲まされたのか、酒に弱いのかは分からないが……しっかり立っていられないくらいには、酔いが回っているようだ。
「とりあえず、座ったらどうだ?」
「ん」
シチは俺の言葉を聞いてから小さく返事をすると、畳の上に座り込んだ。
シチが着ている翠緑の浴衣ははだけていて、白い肌を無防備に晒している。
そもそも……浴衣の正しい着方なんて、知らないのだろう。
着させられたはいいが、乱れたらどうしていいのか分からないから、そのままにした。……といったところか。
よく見ると……ほんのり、シチの目元が赤くなっている。
ペタンと畳に座り込んだシチは、いつもと変わらずボーッとしているに見えた。
おそらくなにも考えず、ただ畳を見ているだけだろうが。
……その姿は、同じ人間とは思えないほど……浮世離れしていて、美しい。
だが、見た目に騙されてはいけない。
今ここにいるシチは、ただの酔っ払いだ。
現に……座っているだけなのに、フラフラと上体を揺らしている。
「オイ、倒れるなよ」
今にも倒れてしまいそうなほど不安定なシチを見ていられず、俺は一度、作業を中断した。
シチの後ろに膝をつき、その上体を支える。
すると、シチが俺の膝の上に座った。
そのまま、俺にもたれかかってくる。
「――うぉッ!」
……前言撤回。
『もたれる』なんて可愛いもんじゃない。
全体重を預けて、シチは俺ごと床に倒れようとしてきているようだ。
慌ててシチの体に手を回し、バランスを取らせる。
――その瞬間。
――ピクン、と。……シチの肩が、跳ねた。
「――んっ」
咄嗟に回した俺の手が、シチの素肌――胸に、触れたからだ。
甘い響きを含んだ声が、薄く開かれたシチの口から漏れ出る。
シチは俺に寄り掛かったまま、小さく息を吐く。
――その姿も、美しい。
「……ねえ」
不意に、シチが俺を呼ぶ。
いつもボーッとして、どこを見ているのかよく分からない瞳が、後ろに座っている俺に向けられた。
白魚のように、それでいて儚い印象を与える細い腕が伸ばされ、華奢な指が俺の頭を撫でる。
「……あつ、い」
言われてみると、シチの肌はうっすらと汗ばんでいた。
「……離れるか?」
「やだ」
シチが、首を小さく横に振る。
「さわって」
シチはそう言うと、脚をモゾモゾと動かし。
そのまま……脚を、開いた。
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