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【先輩は綺麗でいながら 15】 ~了~
◆fujossy様ユーザー企画投稿作品
★「絵師様アンソロジー夏」7月6日19時公開!★
【キーワード】
①プール
②読書
③先輩後輩
図書館へ向かう途中。
上機嫌そうに歩いている浅水先輩の後ろ姿を、俺は恨めしそうに睨み付けた。
「嫌いです、先輩なんか大嫌いです……っ」
「ハイハイ。オレは大好きだよ」
アスリートの精力というものは、いったいどうなっているのか。水泳部の練習以外に、あれだけ俺を犯したくせに……足取りが、軽い。
機嫌は良さそうだし、それはなにより。……だけど。
「こっちはあちこちが痛いので、もう少しゆっくり歩いてほしいです……っ」
大好きな図書館に行くのを断念して、ひたすら横になっていたい気分だ。そのくらい、俺の方は疲れている。
睨まれても、浅水先輩にとってはどこ吹く風。軽やかな足取りで、図書館を目指す。
「お前だって、何回もイッただろ?」
「怒りますよ……っ!」
「不思議と、オレにはもう怒っているように見えるのだけど……」
浅水先輩は歩を緩め、俺の隣に立つ。
「悪かったよ。あまりにも可愛かったから、歯止めが効かなかった」
「っ!」
手を握ろうとしてきた浅水先輩をかわして、俺は俯く。
「だからって……そんな顔で、笑わなくたって……っ」
いつもは、口元を緩めるくらいの小さな笑みしか浮かべないくせに。
──今の笑みは、違う。
目尻を下げて、愛おしそうに俺を見下ろしている浅水先輩が。……どうしても、直視できない。
「本当に、浅水先輩はずるいです……っ」
プールで泳ぐ先輩は、どんな物語の主人公よりも……綺麗だと思う。
でも、それ以上に……。
──先輩が俺だけに向ける笑顔は、どんな物語の主人公よりも。
──素敵で、カッコいいのだ。
【先輩は綺麗でいながら】 了
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