28 / 29
【千草と美藤(距離)】 *
◆表紙イラストの二人。
美藤 は元来、ボディタッチの激しい男だ。
友人を呼ぶ時は肩を叩くし、父親や母親へハグをするのも日課のようなもの。
……それは、千草 に対してもそうだった。
「ん……っ、ふ、ふぁ……ッ」
正面から千草に抱き付き、一生懸命キスをする。
千草がどんなに冷ややかな表情でも、美藤は距離を開かない。
「んあ、は……ッ! セン、セ……ふかいぃ……ッ」
体を震わせる美藤の腰に手を添えて、千草が眉を寄せる。
美藤は更に強く、千草に抱き付く。
「腰落としてんのはてめぇだろ馬鹿」
「だって……センセの、きもちぃから……ッ」
美藤は今……ソファに座る千草の上に座り、秘所に逸物を咥え込ませていた。
……勿論、千草の逸物だ。
千草が一瞬身じろぐだけで、美藤は慌てて抱き付き直す。
熱い逸物もしっかりと締め付け、片時も離れたくないと言いたげに。
「センセ……もっと、キスしたい……っ」
潤んだ瞳を閉じ、千草の返事も聞かずに唇を重ねる。
必死に唇を貪る美藤を、千草は至近距離で眺めた。
「ん、ん……っ」
くぐもった声を漏らし、腰を上下に揺らして快感を享受する美藤は、官能的だ。
余談ではあるが……千草は特段、ボディタッチが好きではなかった。
嫌いだと豪語するほどでもないが、美藤ほど貪欲に求めたりもしない。
――が、わざわざこういう時に跳ね除けたりもしない男だった。
「ふぁ、あ……ッ!」
腰に回していた手を、千草は自身の腹に擦りつけられていた美藤の逸物へ伸ばす。
指先がほんの少し触れただけで、美藤は面白いくらいに反応した。
それでも美藤は、キスをやめない。
「んんっ、ん、ふ……ッ!」
逸物を上下に扱かれ、爪の先で先端を引っ掻かれても。
美藤はくぐもった声を漏らしながら、キスをし続けた。
そのまま腰を揺らす速度を上げて、美藤なりに千草へ快楽を与えようと尽力する。
すると不意に、美藤の後頭部が掴まれた。
……千草の手だ。
それとほぼ同時に、美藤の口腔へ温かなものが差し込まれる。
「んんッ、んぅ……んッ!」
美藤の口腔を蹂躙するのは、千草の舌だ。
美藤は戸惑うも、頭を固定されているせいで逃げられない。
――もとより、逃げるつもりはないが。
唾液の絡み合う音と、美藤が腰を打ち付ける音。
それと、千草の手によって美藤の逸物から生まれる淫猥な水音が、室内に響く。
「んっ、んん……ッ! ん、んぅッ!」
美藤がビクリと体を震わせると、それに呼応する様、千草の体も硬直する。
千草の腹部には温かな欲望が吐き出され、美藤の体内にも同様な熱が吐き出された。
「ふぁ、あぁ……っ、は……ッ」
唇を離すと、舌の先が唾液の糸を引く。
それはすぐに切れて、美藤は悲し気な表情を浮かべた。
「はぁ……っ、センセ……好きぃ……っ」
脱力した体をなんとか動かし、美藤は千草の首に腕を回す。
縋りつくように抱き付いた美藤は、切な気に甘い吐息を漏らしていた。
「今日は、このまま寝たい……センセ、ダメ……っ?」
「ダボが。駄目に決まってんだろ。風邪ひくぞ」
ソファにもたれかかり悪態を吐く千草へ、美藤が瞳を輝かせて抱き付き直す。
「えっ、嬉しい! ボクの心配してくれて――」
「俺がだ、馬鹿」
「酷い! でも好き!」
「知ってる」
全く離れる気配の無い美藤の肩を押して、千草が忌々し気に眉を顰める。
「離れろ馬鹿。冷える」
「ヤダ~! ボクがあっためるから問題ないでしょ!」
すぐ真横にある美藤の耳元へ向けて、千草は低く囁いた。
「一人でナカの処理すんのと、俺にやってもらうの……どっちがいいか今すぐ選べ」
「センセがいい!」
「じゃあ離れろ」
「分かった!」
さっきまでの倦怠感は、どこへいったのか……。
美藤は上機嫌で千草から降り、不機嫌そうな顔をしている恋人の腕を引く。
「お風呂でくっついてもいい?」
「駄目だ」
「ヤッター! ありがと、センセ! くっつく~!」
「人の話を聴け、馬鹿」
美藤は元来、ボディタッチの激しい男だ。
中でも、千草に対しては一際熱烈で……。
……浴室へ移動する際、千草の腕に自らの腕を絡めるほどの、甘えたがりだった。
【千草と美藤(距離)】 了
ともだちにシェアしよう!