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第3話 禁断の苺③

莓と楽しく夕食を済ませた後、俺は出掛ける支度をした。 食器を洗っていた手を止め、莓も玄関までやって来る。 「もう行くの?行ってらっしゃい」 にへぇと笑う。 その笑顔にホッと安堵感を得ると、俺は莓を抱き締めた。 「なんだよー、寂しくなるからやめろよー」 そう苦言を立てながら、俺を抱き締め返してくれる。 「あぁ、早めに向かう…莓、行ってくる」 「おぅ、気を付けてな」 名残惜しそうに離れた後、俺はドアを開けた。 ***** 煌びやかな街を少し外れて歩く。 誰も気に留め無い様な路地裏へと続く道が見えてくると、俺は軽く周りを見渡して、その路地裏へと続く道に入った。 暫く歩くと、ひっそりとBARは営業していた。 BARの名は la fraise noire(ラ・フレーズノワール) BARの扉を開ける。 カランコロンと鈴の音が鳴った。 カウンターには、前髪で片目が隠れたバーテンダーがグラスを磨いていた。 彼はこの店のマスターだ。 マスターは、俺に気付くと片目を細め微笑んだ。 「やぁ、いらっしゃい。1人は珍しいね」 「と約束してる」 カウンターに座りながら俺は答える。 「何か呑むかい?」 「いや、すまないが…」 「そ?まぁ、無理強いはしないさ」 磨いたグラスをテーブルに置くとマスターは微笑んだ。 俺は店内を見渡す。 チャラチャラした男や女、一見するとBARに不似合いな男や女が、テーブル席やカウンターに座って酒を呑んでいる。 バンッと荒々しくBARの扉が開くと、1人のが入ってきた。 (…来たな、特別(れいがい)) 「おいおい、此処は子供(ガキ)の来る場所じゃねーぞ」 素行の悪そうな男が少年の肩を掴む。 少年はギロッと男を睨んだ後、勢い良く顔面に唾を吐き飛ばした。 「っな!?!」 「うるせぇよ」 「てめぇ!!!」 荒々しく腕で顔を拭うと男は少年の胸ぐらを掴んで殴り掛かろうと動いた その時。 「2人共!やめてくれないか?」 パンッと両手を叩きながらマスターが2人を抑制する。 「うちの店で揉めるなら出禁にするよ、特に涼介(りょうすけ)」 「ーーッ」 涼介と呼ばれた少年がマスターを睨み付ける。 素行の悪そうな男は不服そうにしていたが、連れの男に宥められると店を出て行った。 「の為に未成年である君を黙認しているんだ、余りお痛が過ぎると……」 「チッ」 涼介は忌々しそうに舌打ちをするとカウンター席に座った。 「未祐(みゆ)!!!!」 「は、はいっ!!!」 未祐と呼ばれた女性が、急ぎ早にキッチンから出て来る。 「いらっしゃい、涼ちゃん」 「いらっしゃいじゃねーよ!ブス!」 「ご、ごめんなさい」 涼介は未祐に怒鳴ると脚を組んで、カウンターテーブルを叩いた。 「ぁ、ぁっ、涼ちゃん…反抗期?可愛い…」 涼介の荒々しい言動に、未祐は頬を染めうっとりとしている。 (この女は) 「未祐チャン、保護者らしくしっかり調教してくれなきゃ困るよ」 「すみません、マスター」 「誰が俺の保護者だって?!このバカ女がか?!」 マスターの嫌味に涼介が突っ掛かる。 未祐は慌てながら涼介の肩に手を充てると宥めた。 「マスターが私に甘いから、涼ちゃんは此処に出入り出来るんだよ?だからね、お利口にして、お願い」 「チッ」 涼介がまた忌々しそうに舌打ちをする。 それと同時に俺の携帯が鳴った。 着信相手はーー 「はい」 『あれ、もしかしてもう店?』 「あぁ、よく解ったな」 『BGMが微かに聴こえたよ、もう少しで着くから』 「解った」 三橋。 いや、今はスリジエと呼んだ方が良いか。 俺は静かに情報屋が来るのを待った。

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