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第1話

 ――愛しくて、胸が苦しくて、貴方のすべてが欲しくなる。  その欲望はとどまる事を知らず、胸の内で昂ぶり続けていた。  乱れたシーツの上で荒く息をする細い肢体。汗と体液に濡れた体を見つめながら、西条智紀は恋人の耳元で囁いた。 「葵さん……もう一回、いい……?」  智紀は若い。二十一歳で初めて出来た年上の恋人、雪田葵に向ける欲望は凄まじいものがあった。どれだけ触れても、どれだけ達しても、満足できず際限なく葵の身体を求め続ける。激しい行為がどれほど葵を消耗させているかなんて分かっていた。それでも、込み上げてくる欲望に抗うことができなかった。  臨戦態勢の智紀とは違い、すでに限界を迎えていた葵は乱れた呼吸を整えながら薄い唇を開く。白い肌にはいくつも赤い痕が浮かんでいて、それがさらに智紀の雄の本能を刺激した。 「――……いい、よ」  掠れた声は微笑を含んでいた。  許しを得た智紀は猛獣のように葵の身体にかぶりつく。手首を掴んでベッドに押さえつけ、身体中を思う様蹂躙した。そうして、葵が自分のものである事を実感する。その瞬間が快感だった。  疲れ果てて眠り込み、朝日が昇るころにはきっと後悔しているのだろう。『またやってしまった』と。しかし、今の智紀には自分の欲望を止める術はなかった。

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