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第1話
身体が痛い。
全身バラバラにされてしまったような痛みだ。
頭の中のネジが全部外れてしまったかのように、思考も覚束無い。
重たい瞼をようやく開くと、真っ黒い知らない天井が広がっている。
ここは、どこだ。
身動ぎひとつできずに、オレは虚空を睨みつけた。
最期の記憶は、どこだっただろう。
新宿かどこかの繁華街。
「無理して動くな。やっと魂と身体を繋げたばかりだ」
上から見下すような、地の底を這うような声がして、オレはぎょろりと視線をそちらに向ける。
首を動かそうにも、びくともしないからだ。
視界に映るのは、黒い羽根でできたモサモサの服を纏い、頭には黒い2本の角を生やした顔色の悪い彫りの深い美青年が立っている。
こんな格好でなければ、ファッションショーのモデルにもなれそうな素材である。
しかし、ハロウィンは、1ヶ月前に終わったはずだ。
かなりの厨二病か、頭がイッてしまっているやつかと見受けられる。
服の素材は良さそうなので、口車に載せれば手持ちの薬を捌けるかもしれない。
「我に驚いたか。我が名はグラシーモ。新たなる下僕となる貴様には名乗っておこう。光栄に思うがいいぞ」
すっかり自分の世界に入り込んでいるグラシーモと名乗る男にオレは憐れみの視線を投げる。
まあ、幻想にしか生きられないやつはどこにだっている。
そういうやつを食い物にしているのがオレたちなんだけどな。
「あー。グラちゃん。身体が動かないんだけど、どうすりゃいい?」
眼球も唇も動くので、頭の方は問題はなさそうだ。
「ぐ、グラちゃん?!魔王に向かい不遜な人間だな。お前は昨晩路地裏で死んでいた。それを、我が拾ってゾンビ化させてやったのだ」
ふはははははと高笑いされて、ゾンビとか意味の分からないことを言い出す。
眼球を動かして自分の姿を見てみるが、ゾンビ映画にあるように肌も青かったり、緑だったりはしない。
ただ、本当に身体はビクともしない。
「路地裏で心臓をナイフで一突きされていた。それ以外は綺麗な死体だったのでな。我の下僕にちょうどいいと思ったのだ。顔も好みだったしな」
衝撃的な言葉に面食らうが、確かにオレは路地裏で縄張り荒らしをしてきたチンピラ相手に喧嘩をしていた。
その中の1人が刃物を出して、オレの胸元に飛び込んで、きた。
そうだ。
溢れ出す血液。
身体がショックで動かなくなる恐怖。
薄れていく視覚。
逃げ出すチンピラの足音だけ、硬直していく身体でも。ずっと聞こえていた。
ああ、そうだ。
オレは死んだのだ。
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