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「…その件に関しましては、後日…ゆっくり説教されますので今日は勘弁して下さい」 って、アンタ…。逃げるつもり? 「私も男ですからね。自尊心は愚か、格好付けたい時もあるんですよ。土下座をするとしたら、覚悟が出来たらですかね。はぁ…」 「…」 「四十ハ歳の親父が、これから若い男性に振り回されると考えたら…茶番ですかね。あぁ、でも…栄燿栄華だと思うのも悪くはない。振り回されるだけ振り回してくれれば、相手に踊ろされるのも…陶酔か。ふふっ…」 クスクスと喉を鳴らし、倉科 海凰は放心状態の織家の御曹司を抱き上げた。 「――…気色悪っ」 「夢中になる相手が出来たら気色悪くって当然ですよ…」 目尻を下げた彼は恋い焦がれる男の顔をしていた。そして…『織家まで送ってきます』と言い、葵の間から出て行った。結局の所、深李さんの暴走で本題が逸れてしまったけど。 倉科 海凰にあんな顔をさせる相手が凄いと思った。

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