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第1話 新しい日々の始まり

ヒラヒラ      ヒラヒラ      桜の花が散る    子供達の肩に桜の花びらが散る     新しい日々が来る     新しい日常の幕開けの朝 飛鳥井の家は朝から慌ただしかった 「ハンカチ持ったのかよ?」 康太が叫んだ 慎一が「右のポッケにハンカチ、左のポッケにティシュ、ちゃんと入ってますから落ち着きましょう!」と窘めた 流生が「おちちゅくにょ!」と康太を撫でた 「大丈夫かよ?」 康太が心配して呟く 太陽が「らいじょうび!」と康太に口吻けた 大空も「かぁちゃ ちゅき!」と反対に口吻ける 音弥は「おとたん ほんびゃん ちゅよい」と母を安心させ 翔も「かけゆも ほんびゃん ちゅよい」と康太に抱き着いた 「名前呼ばれたらお返事するんだぞ!」 「「「「「あい!」」」」」 子供達はお返事した 榊原は落ち着かない妻を微笑みながら見つめた そして抱き上げて膝の上に乗せた 「少し落ち着きなさい」 「そうは言っても……落ち着かねぇ……」 康太が呟くと母 玲香が綺麗に着物を着て現れた 「康太は本番に弱いからのぉ~」 玲香は笑っていた 孫の幼稚舎の入園式だから、飛鳥井の家族はこの日会社を半休にして出席する算段だった 清隆もスーツに身を包み応接間にやって来た 「………もう幼稚舎の入園ですか……」 感無量で涙ぐむ 愛する愛する孫だった 清四朗が妻の真矢と共にやって来た 清四朗は礼服に身を包み、真矢は着物を着ていた 清四朗と真矢は支度が終わった子供達を見た 康太は子供達より緊張した顔をしていた 真矢は「………康太……どうしました?」と問い掛けた 榊原は「………緊張してるんですよ……」と康太に変わって教えた 「………あぁ……胃が痛ぇ……」 康太は胃を押さえた 聡一郎がやって来て「そろそろ時間です!逝きますよ!」と告げると、康太は立ち上がった 四宮聡一郎はスーツを着ていた 緑川一生も四宮聡一郎も一条隼人も緑川慎一もスーツに身を包んでいた 康太は子供達を連れて応接間を出た 子供達は皆、制服を着せられていた 修学館 桜林学園の幼稚舎の制服だった 登園すると体操服に着替えて過ごす事となるが 通園時は濃紺のブレザーと半ズボンと帽子の制服を着る事となっていた ブレザーにゴムのネクタイと半ズボン そして帽子をかぶって、幼稚舎へ行く 歴代の飛鳥井の男の子が通った桜林学園の制服は変わっていない 康太もこの制服に袖を通して通っていた時期があった 康太は子供達の姿を見て 「懐かしいなぁ……」と呟いた 一生や聡一郎、慎一は「だな!」と頷いた 一生は笑って当時を思い浮かべる 「康太は入園式の日、瑛兄さんの膝の上で迎えていたよな? 俺、瑛兄さんが康太の父親だと、ずっと想ってた」 瑛太の膝の上で過ごした……… と言うより、悪さをするから瑛太が掴んでいた…… と言うのが正解なのだが…… 瑛太は苦笑して 「掴んでないとスカート捲ったり……とにかく大変な子だったから……必死に掴んでましたね」 当時を想い出して言葉にした あの時の康太も成人を迎えて大人になった 21の青年に姿を変えていた 瑛太は感無量になった 皆で外に出て桜林学園を目指す 桜林学園は広大な土地に建っていた 幼稚舎から大学院までエスカレート式の私立の学校だった その歴史は古く、昔は士官を養成する学校として創立された 飛鳥井の男の子は総て桜林学園へ通う事となっていた 康太の子供も、桜林学園へ入園する 大学を卒業するまで、桜林学園に身を置く事となる 子供達は新品の靴を履かせて貰って嬉しそうだった 飛鳥井の家から桜林学園まで徒歩で15分ちょっと 皆で歩いて桜林学園 幼稚舎へと向かう 康太は流生と手を繋いでいた 榊原は翔と手を繋いでいた 太陽は清四朗、大空は清隆、音弥は瑛太と手を繋いで スキップしながら歩いていた 桜の花がまだ残っていて ヒラヒラ……ヒラヒラ……舞い散っていた 満開の桜の花を見上げ 康太は榊原を見上げた 「……来年も……再来年も……」 榊原は康太の手を強く握り締め 「10年後も20年後も……未来永劫…… 君と見続けると約束しましたね」 「………伊織……」 康太は瞳を潤ませた 「愛してます…… 君だけを愛してます」 榊原の笑った顔が……     桜と同化して……       康太はその姿を瞳に焼き付けた 忘れない 絶対に忘れない…… 桜林学園 幼稚舎の正門の前には、学園長の神楽四季が生徒達を出迎えていた その横に教師の佐野春彦も立っていた 二人は康太を見付けると、嬉しそうに笑った 「ご入園 おめでとうございます」 四季は深々と頭を下げた 佐野は子供達の胸に入園式の祝いのブルーのリボン付けた 男子はブルー、女子はピンク 康太の子は全員ブルーのリボンを胸に着けて貰っていた 流生は康太を見上げて「ちれい!」と訴えた 「飛鳥井 翔君 流生君 音弥君 太陽君 大空君ですね!」 四季が名を呼ぶと5人は手を上げて 「「「「「 あい! 」」」」」と答えた 四季は笑顔だった 佐野は「父兄の方は体育館へお願いします お子さんはこちらで預かります」と言うと 数人の保母が子供達の傍にやって来た 不安そうな顔をして康太は子供達と離れた 佐野が康太の子供達を連れて行く 泣くかな…と想っていたのに…… 子供達は佐野に連れられ良い子して付いていった 康太は家族と共に体育館へと向かった 体育館へ行くと教師の長瀬匡哉が康太達を待ち構えていた 「飛鳥井の方は此方へどうぞ!」 飛鳥井は家族総出で来るのは知っていたから、事前に何人来るかを聞いて席を用意する事になっていた 全員、椅子に座って入園式が始まるのを待っていた その時、背後から聞き知った声が掛けられた 「貴方も……そんな顔するのですね」 不安な顔…… 心許ない顔…… 康太が親だという証拠だった 振り返ると戸浪海里が笑顔で立っていた 「………若旦那……何で?」 康太が呟くと戸浪は 「桜林学園 高等部PTA会長をしています PTA会長として幼稚舎の入園式で祝辞を述べます」 と説明した それで康太は納得した 「………貴方の横に座りたいのですが…… 前の席に座っていなければならない……口惜しいです」 戸浪は本当に残念そうに言った 【これより、桜林学園 幼稚舎の入園式を行います】 とアナウンスが掛かると、戸浪は前の席へと向かって座った 【園児入場 拍手でお迎え下さい】 父兄は拍手した 康太も必死に拍手で園児を迎えることにした 先生に連れられて園児が入場した 子供達は組ごとに分けられていた 【星組 入場】 流生が先生と手を繋いで入ってきた その後に音弥が入場して来た 流生と音弥は康太と榊原の顔を見て笑っていた 【桃組 入場】 桃組は大空一人だった 【花組 入場】 翔と太陽が入場して来た 子供はバラバラにされて並んでいた ずっと離れずに生きてきた子供達だった 同じクラスで……と言う訳にはいかないにしても…… 大空だけ一人だなんて…… 康太は泣き出した 6人……作っとけば良かった 5人だから一人だけ……一緒じゃなくなるなんて…… 榊原は康太を抱き締めた 瑛太は康太が何で泣くか解るから……泣きたくなった 玲香も清隆も清四朗も真矢も…… 大空だけ一人なのが気になっていた なんかの考えがあるのだろうけど…… 入園式は滞りなく終わった 式が終わると、各のクラスに父兄は向かった 真矢と清四朗は星組 玲香と清隆と瑛太は花組 康太と榊原、一生達は桃組へと向かった 大空は無表情で椅子に座っていた 榊原はまるで昔の自分を見ているようで…… 胸が痛かった 「何で飛鳥井大空君だけ一緒のクラスにならなかったか解りますか?」 と背後から声が掛かった 康太は振り返ると、神楽四季が立っていた 「………解らねぇ……」 「あの子は兄弟の前でしか表情を変えません 他は必要ないのです…… なので少し兄弟から離して様子を見ようと想います この先ずっと一緒とは行きませんからね 何時かはクラスは変わります 他に慣れる必要があります 他を受け入れる必要があるのです まぁ伊織に似てるので大きくなれば上手く出来るでしょうが……様子を見させて下さい」 神楽四季の説明に康太は納得した 榊原は「……僕は……あんな感じでした……」と答えた 他は要らない 興味もない そうやって生きてきた まさか……大空が自分と同じようになってるとは想いもしなかった 榊原は神楽四季に深々と頭を下げ 「宜しくお願いします」と頼んだ 【記念撮影を行います 父兄の方、新園児さんは校庭に出て下さい】 アナウンスが掛かり、康太達は校庭に出た 一生が「……俺達は離れてた方が良いだろ?」と遠慮した 康太は「学園側には記念撮影まで全員でやると伝えてある!気にするな!」と一蹴した 全員で記念撮影を撮った この日の入園式は無事終わった 康太は息を吐き出した 校庭で待ってると大空が走って康太に抱き着いた 「どうしたよ?かな?」 「……きゃにゃ……ちとり…」 「大空……」 「きゃにゃ……ちゃみちぃ…」 「………大空……」 康太は大空を抱き締めた 「………離さないで育てたのがいけねぇのか?」 康太は呟いた 罪を作ったも同然に育てたから…… 大空は何者にも関心をもたなくなってしまったのか? 「康太、様子を見ましょうと言っているので…… 決めるのは辞めて下さい」 「だって伊織……」 康太はそう言い泣き出した 清四朗は子供達に「ファミレス行きますか?」と尋ねた 大空が「ぷじん!」と叫んだ 流生も飛び上がっていた 太陽は清四朗に抱っこを強請っていた 康太はそれを止めて榊原に太陽を渡した 「……清四朗さん……無理は駄目だって!」 「康太、義父さんと言ってくれたのですか?」 「義父さん……無理すると悪化すんぜ!」 「足もリハビリの甲斐あって治っている 今はこうして普通に歩ける様にもなった」 清四朗は退院して来たばかりだった 近いうちに仕事も再開する予定も出ていた 「……頑固なのは血筋か……」 康太はそう言い笑った 翔は大空と手と繋いでいた 「らいじょうび かけゆいる!」 そう言い慰める 「かけゆ……きゃにゃ やっちぇける!」 「むりちゅんな!」 翔は誰よりもお兄ちゃんだった 翔は大空と手を繋いで歩いていた 誰よりも頼りになるお兄ちゃんだった…… 飛鳥井に戻り、車に乗り換えるとファミレスへと向かった ファミレスに行くと兵藤貴史が待ち構えていた 「よぉ!」 片手をあげて挨拶する 「貴史……」 「席取っておいてやった!」 「お前、飛鳥井に来るかと想った」 「入園式に乱入するのは辞めろと美緒が五月蠅かったからな、ファミレスで待ってた」 人数分席を取って待っていた 康太は兵藤の隣に座った 康太が座ると兵藤は、康太の耳元で何やら囁いていた 康太は果てを見て何も言わず聞いていた 何やら話し終えると、背中に隠し持っていた封筒を康太に渡した 康太はそれを胸ポケットにしまった 「……これ?」 「そうだ!お前は何も気にするな! それよりもほら、プリンアラモードを食え!」 兵藤は康太の為に注文したプリンアラモードを差し出した 「貴史……悪かったな…海外にいかせて…」 「気にするな!」 兵藤はそれだけ言うと子供達に笑顔で 「幼稚舎 入園おめでとう!」と祝辞を述べた 子供達の制服にやはり兵藤も「懐かしいなぁ」と懐かしんだ 「康太は美代子のスカートばかり捲りって俺の所へ逃げて来るから俺は美代子に何時も叱られた」 そしてボヤく…… 一生も「そうそう!何時もスカート捲ってこようぜって悪ガキが言うから逃げてばっかの幼稚舎時代だったな」と当時を想って笑った 聡一郎も「本当にとばっちりなら嫌になる程に受けました…… でも康太のズルいのは先生方に怒られても絶対の人気があるという事ですね 憎めないから何時も可愛がられてました」と昔を懐かしんで言葉にした 慎一は何も言わなかった 幼稚舎の頃が一番幸せだったから…… 流生は机の下をくぐって兵藤の所へ来た 「ひょーろーきゅん」 「お!流生、どうしたよ?」 「ひょーろーきゅん どこちってたにょ?」 「え?何処って……」 「ちゃいちん みにゃきゃったね」 鋭い指摘をして来る流生に、兵藤は苦笑した 「兵藤君は最近まで日本にいなかったんだよ」 「ちゃみちきゃった……」 流生は兵藤に抱き着いた 「ごめんな流生…… 兵藤君も淋しかったぞ!」 兵藤は流生を強く抱き締めた 音弥も翔もテーブルの下をくぐって兵藤に抱き着いた 翔が「ひょーろーきゅん あちゅきゃい いきゅにょ!」と一緒に帰ろうと訴えた 音弥も「いっちょ!ひょーろーきゅん いっちょ!」と必死に訴えた 太陽と大空も「「いきゅにょ!」」とお席に座ったまま訴えた 一生は子供達を席に座らせると 「服が汚れるからな良い子にしてろ!」と康太は怒った 兵藤は「それ言う資格ねぇだろが……」と笑った 何時も制服をドロドロにしていた悪ガキだったから…… 一生も聡一郎も慎一も頷いた 康太は「ちぇっ……」と拗ねた 兵藤は笑って「拗ねるな……可愛いだけだぞ」と言った サラッとその台詞言うか……と一生は想ったが、みなスルーして笑っていた 子供達が食べ終えると、ファミレスを後にした そして飛鳥井へと帰った 康太は飛鳥井の家に還ると、自室に戻った 兵藤は飛鳥井のリビングに通された 子供達や家族、清四朗達は各々の部屋に着替えに向かった 一生も「着替えてくるから少し待っててくれ!」と言い自室に戻った 兵藤の携帯が震え取り出して見ると、兵藤は立ち上がって応接間を後にした 呼び出したのは康太だった 兵藤は三階まで上がっていくと康太の自室のドアを開けた 康太と榊原の部屋は三階で、ドアを開けるとリビングになっていて、その奥に簡易キッチンが取り付けてあり 食いしん坊の康太のデザートを冷やしてあるのか、大きな冷蔵庫が備え付けてあった 手前が寝室のドアで、その横にもう一つドアがあった ドアを開けると、康太と榊原の寝室で、ドデカいベッドが鎮座していた ベッドの横にナイトテーブルがあり、品の良いナイトランプが置いてあった その横にソファーがあり、奥のドアは浴室と洗面所だった 洗面所にはドラム式洗濯機も置いてあり 二人の生活空間が広がっていた そこは二人しか入れないのだが…… 開け放たれたリビングには誰でも入れた 線引きは譲らない榊原だった 康太は兵藤を見て「悪かったな」と声を掛けた 「気にすんな で、……俺を呼んだ理由は?」 「この報告書……本当か?」 「本当だ、領地は既に盗られて殺戮の限りを尽くされていた……一族根絶やしだ…… 助かったのはカリウス・アマーリエ・フォン・ヘッセン=トランシルバニア公爵とあと一人 こいつの弟……シリウス•アマーリエ•フォン•ヘッセンだけだ」 「………弟は……何処にいる?」 「行方知らずだ……」 「領地を取り戻さねぇとな……」 「だな……早くしねぇと開発が始まるらしいぜ?」 「広大な土地だ、既に始まっててもおかしくねぇだろ?」 「………祟り……らしいぜ 今まで高名な呪術師や祓い師が呼ばれたらしい」 「今も呪術師必要にしてるのかな?」 「してたぜ! ほら、この写真見ろよ まぁな……こんな怪しい場所で呪術師募集の張り紙しても……来るのかよ?とは想うけどな」 兵藤の言葉を康太は聞いて考え込んでいた 「………呪術師だって弥勒」 康太が呟くと弥勒が姿を現した 「我は……飛行機が大嫌いだと申したであろう! あの様な鉄の塊が空を飛ぶなど……信じはせぬ」 弥勒はふて腐れてそう言った 兵藤は爆笑した 弥勒は怒った顔して 「煩い!朱雀!」と怒った そしてソファーにドサッと座った 「貴公子と呼ばれし朱雀がこんなにがさつな奴だとは想いもしなかったわ!」 弥勒はブチブチ悪態をついた 「俺も転輪聖王がこんなにガラが悪いなんて知らなかったぜ?」 と悪態の応酬 弥勒は兵藤の唇を摘まむと…… 「んな事を言うのはこの口か……」と伸ばした 兵藤は榊原に助けを求めた 共に闘った仲間ではないか! そんな瞳を向けた 「弥勒、その辺にしませんか?」 榊原に言われて弥勒は渋々手を離した 「伴侶殿はこの鳥の味方をされるのか?」 「共に生きて来た盟友故……お許しを!」 榊原は傅いた 「………ズルいなぁ伴侶殿は……」 弥勒はブチブチ言った 榊原は笑ってトドメを刺した 「呪術師 弥勒 その名は世界に届いているのです 飛行機に乗ったら直ぐに寝てしまえば大丈夫 目が醒めたら目的の国になります」 「………伴侶殿……」 恨みがましい瞳を向けられた 「そんなに嫌なら僕と康太が行きます 貴方は向こうに着いたら出てくれば良い」 譲歩するしかないと踏んだ榊原は最大限の譲歩をした 弥勒は「伴侶殿!!」と喜んだ声を上げた 「………日本からいなくなると……子供達が淋しがりますね……」 幼稚舎に入園したばかりなのに…… 慣れるまで……もう少しいてやりたかった 兵藤は「まずは下拵えしねぇとな 現地に逝くかどうかは、下拵えの結果待ちで構わねぇだろ?」と助け船を出した 弥勒は「ならば、下拵えをしようではないか!」と乗り気だった 康太は兵藤に貰った報告書を弥勒に渡した それに目を通した弥勒の顔色が変わった 「………古来より……約束された絆を…… こうも容易く破られていたとは……」 「狂ってるだろ?」 弥勒は奥歯を噛み締めて… 「狂いすぎじゃ!」と吐き捨てた 「ドラキュラはルーマニア語で「竜の息子」を意味して呼ばれた存在 ルーマニアの方へ渡った龍の一族は神の約束を果たして生息を許された…… 人々に危機と恐怖を抱かせる為に教えとして存在させた一族だ…… 古来よりの締結を破って殲滅して良い存在じゃねぇ どっちが神の教えを破ったか…… 教えてやる必要がある……」 康太が言うと弥勒は 「ならば何故此処まで拗れたか 我等は聞く必要がある、違うか?」 「………解った 全部話す時が来た…… 全部話しをする 少し長くなるからな…… 伊織、鍵をかけてくれ 誰も入れたくねぇからな」 榊原は立ち上がるとリビングのドアに鍵を掛けた 「………これは……切っ掛けにしか過ぎねぇんだ… ダンピールはその切っ掛けを利用して、この世の総てのヴァンパイアを‥‥嫌、闇に生きる者達を殲滅するつもりだ……」 「………ダンピールはヴァンパイアを監視する為に在る存在なのでは? なれば……ヴァンパイア総てを殲滅してしまえば 自分達の存在意味などなくなってしまうのではないのか?」 弥勒は疑問に想っていた事を口にした 「ヴァンパイアの陰に隠れて生きてきたのはダンピールだ! 第一級ヴァンパイアを殲滅する為にだけ存在する組織だ 人の世に堕とされ転生したオレが…… 初めて人とヴァンパイアと言う龍の一族とを線引きして、生きさせる為に作った組織だ 神からの啓示を受けてオレが人になって初めて手がけた仕事がダンピールの組織を作る事だった…」 榊原は共に生きて来たから…… その頃のこともよく覚えていた だから……康太の腰を優しく抱いた 「それを踏まえて俺の話を聞いてくれ ダンピールと言う存在は、人とヴァンパイアとの間に出来た子孫だ ダンピールの中にはヴァンパイアの血が流れている それを体内に上手く吸収して確立した存在としてヴァンパイアを狩る存在になった だからダンピールは十字架も朝日も大丈夫なんだ しかも刺されても驚くべき回復力で治癒する力を持っている だから……ヴァンパイアよりも増えてしまったと言うのもある」 康太はそこまで説明して…… 深くため息をついた 長い長い歴史に歪んでしまった組織の話を 康太は口にした

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