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第2話 組織

「オレは青龍と共に人の世に墜ちた 最初の転生は今の国で言うとルーマニア付近だ オレを人の世に堕としたのは神と意向だった 要は人の世に堕ちるように操作した……と言う事だ 人の世に墜ちたオレは龍の一族と出逢った それがヴァンパイアと呼ばれる存在だ……」 康太はそこまで話して「疑問はねぇか?」と問い掛けた 兵藤は「ヴァンパイアは龍なのか?」と問い掛けた 「青龍達のような龍とは違う……螭よりも上の龍(たつ)と呼ばれし存在だった 彼等は魔界ではなく人の世に生きる選択をした 人間との共存を願った……だが体躯が人の世に馴染まず異変が起きた そう……渇きが癒やされず……渇きを癒す為に彼等は人間に手を出した それがヴァンパイアと呼ばれる所以だ」 「………ヴァンパイアは本当に人の血を飲むのか?」 兵藤は想像できなくて問い質した 「喉の渇きは水や果物では潤されなかった 人の血だけが…ヴァンパイアを潤した ヴァンパイアは人を襲う様になった 中には見境なく人を襲う輩も出て来て統制が取れなくなってきた 神はオレに言った… ヴァンパイアに対抗できる存在を生み出せ……と。 それで生み出したのがダンピールだ…… ダンピールは見境なく人を狩るヴァンパイアを殲滅する為にだけ生み出された存在だ…」 弥勒は「その均衡が何故破られたのだ?」と問い掛けた 「引き金は………一人のヴァンパイアが……ダンピールを愛した 一人のダンピールが……ヴァンパイアを愛した 二人は…禁を破り交わった…… 絶対にヴァンパイアとダンピールは交わってはいけない……存在なんだ」 兵藤は「何故?元は一つの存在なんだろ?」と危うい均衡に異議を唱えた 「ダンピールはヴァンパイアと契ると…… ダンピールとして生きられなくなる ヴァンパイアの血が勝り…体躯の中に免疫の低下が起きる 免疫低下したダンピールが怪我でもしたなら……即、出血死となる ヴァンパイアもダンピールと交わると…血が吸えなくなる 互いが交わってはならぬ様存在なのだ……」 「…ダンピールと寝たヴァンパイアがいるのか?」 兵藤は……交わってはならぬ存在…と言う康太の言葉に引っかかり呟いた 康太は静かに……瞳を瞑った 「……許されない関係を築いた…… だから総てのヴァンパイアを殲滅する…… 今のダンピールはそれをやっているんだ…」 「……それで繋がった…… そのヴァンパイアが、カリウス・アマーリエ・フォン・ヘッセン=トランシルバニア公爵とか言う奴なのか……」 「そうだ!で、ダンピールの方は廉とか言う奴らしい 今、目に廉と名の付くダンピールを探して貰っている」 「………ヴァンパイアと契ったダンピールを生かしておくと……想うのか?」 無差別にヴァンパイアを殲滅しているダンピールが…… もう……消されているとしても不思議じゃないだろう 「ヴァンパイアと契ったダンピールは、ヴァンパイアの名前を言ってねぇらしいぜ?」 「………名前を言わないのに消せねぇ…ってか?」 「と言う事だ どの道……そんなに時間はねぇ… ヴァンパイアと交わったダンピールを消せば…… ヴァンパイアは狂うだろう…… 愛するモノを奪われて……狂った龍はこの世を火の海とするか……殲滅するだろう…… それはさせたくねぇな……とオレは想っている オレも……ずっと想っていた 青龍を奪う奴がいるなら……オレは死んでも良い この世の総てを焼き尽くして……消し去ってやろうと想っていた…… 愛されなくても良いんだ 生きていてくれさえすれば良いんだ 愛する人が……息をして笑っていてくれれば…… それだけで良いんだ…… だから……それさえ奪われたら……狂うしかねぇんだ 今……ヴァンパイアは愛する廉と言うダンピールに殲滅して貰うのを望んでいる その廉がこの世から消えたと知ったら…… オレは考える方が怖い……」 榊原は康太を引き寄せ抱き締めた 弥勒は何も言わずに黙って聞いていた 康太も黙っていた その時、ドアがノックされた 榊原は立ち上がると「今は遠慮して下さい」とドアを開けずに声を掛けた 「貴史、そこにいるのかよ?」 「います……」 「なら良い、話が終わったら呼んでくれ」 一生は疎外感を感じて、その場を立ち去ろうとした その時康太が「一生、来い!」と呼んだ 榊原は一生をリビングへと招いて鍵を掛けた 榊原は一生をソファーに座らせた 康太はメモ用紙に何やら書き込むと兵藤へ渡した 兵藤はそれを目にするとメモ用紙を細かく破り、丸めてズボンのポケットに入れた 携帯を取り出すと何やら始めた 一生は「何の話をしていたんだよ?」と問い掛けた 兵藤は笑顔全開で一生の肩に手を置いた そして康太と目配せした 康太は「この前のアレ、どうした?」と一生に問い掛けた 「この前のアレ?あんだよ?それは?」 一生は何が何だか解らず問い質した 「この前拾ったヴァンパイアだよ?」 一生の瞳がキランッと光るのを見逃さなかった 「ヴァンパイアがどうかしたのかよ?」 「飛鳥井はもう厄介事に巻き込まれるのは勘弁だかんな、適当な所で下ろして良いって言ったやん その後のヴァンパイアなんて知らねぇよな?」 「………あぁ……知らねぇ……」 「闇に消えて行った後は関与してねぇのに…… あんで付け狙われてるか知らねぇか一生?」 「さぁ?………知らねぇよ」 「悪魔からの逆恨みで結構ダメージ食らったかんな 当分は厄介事はご免だからな‥‥ 関わらねぇようにしねぇとな!」 「だな……」 「と、言う事で一生、そう言って来いよ」 「………え?………」 一生は不思議そうな顔で康太を見た 「魔界は一切の介入をしねぇ! それでも関わるのなら……殲滅すると伝えて来いよ!」 「………何処へ……」 「ダンピール協会に伝えるしかねぇじゃねぇかよ? それとも他に行って聞きてぇ奴がいるのかよ?」 康太はおかしな事をいうな……と笑った 「そっか……なら伝えに行くことにする!」 そう言い一生は立ち上がろうとした 「ダンピール協会には創立者の写真が協会理事室に飾ってあるそうだ 幾ら歴代の理事がその写真を排除しようとも、その写真には触れられねぇ…… 魔力を秘め、ある忌日を遺して、今もその写真は協会理事室に掲げてあるそうだ」 皮肉に唇の端を吊り上げて康太は嗤った 「よりによって赤いのか……」 康太が呟くと何もない空間から……… スーッと姿を現した存在がいた 「彼奴が一番チョロいと想ったのであろう…」 金色に光る髪はライオンの鬣の様にキラキラ靡いて輝いていた その世に漆黒の闇に溶ける様な……鋭い猛禽類の瞳をした男が立っていた 「嘆かわしや……我が弟はチョロい奴扱いなのか……」 その横に酷似した顔で茶髪の男が立っていた 「兄上はお人好し故……人の良さに付け込まれやすいのだと想います」 とフォローしようと必死で口にした 親兄弟に好き勝手謂われて、拗ねて唇を尖らせて…… 「放っといてくれ!」と言い……本人が立っていた 榊原は「父上、兄さん地龍……赤いのを弄らないでやって下さい……」 と緊張感のなさで口にした 金龍は一生を上から眺めた 黒龍もマジマジと一生を見た 地龍はその場に立っていた 金龍は一生の前に立つと 「我等は魔界に棲む龍の一族! お主の中にも龍の血は流れておるであろう!」 金色の瞳がカッッと光ると…… 一生の姿をしていた奴は本来の姿に……変わって行った 「ダンピール如きが龍族に叶うと想うなよ!」 目の前でガラの悪い男に睨まれて…… 一生のフリをしていた男は……震え上がった 「一生ならば、ドアが開かない時点で何かあると察知して近寄りはしません!」 榊原は冷たい瞳をダンピールに向けた 「………このままで終わると想うなよ!」 捨て台詞は立派だ 康太は嗤って男を見た 「教えてやったやん 協会理事室にはオレの写真が飾ってあるって…… 協会を殲滅するも存続させるも…… 総ての権利はオレの手の中にあるのを忘れるな! ダンピールは炎帝を敵に回して生き残れるか…… やってみても良いぜ? 人の世にいる総ての神を総動員してダンピールを殲滅して逝くのは容易い事って忘れるな! 離してやってくれ……そしたら逃げ帰って上の奴に報告するだろ? そしたら二度と再び飛鳥井の地は踏めねぇようにしてやんよ!」 まるで悪魔のような嗤いだった 血の気が引けると言うのは……こう言う事なんだと…… ダンピールは悟った そして闇へと姿を消した 本物の一生はふて腐れてソファーに座った 「よりによって俺かよ?」 その言葉に、その場にいた全員が爆笑した 康太は一生の頭を撫でた 「拗ねるな オレはどんな姿になろうともお前は解る それじゃ駄目かよ?」 「お前に解るならそれで良い」 一生はご機嫌を直した 金龍は康太の前に傅くと 「炎帝、馳せ参じました!」と挨拶した 「悪かったな呼び付けて」 「いいえ!貴方が我を呼ぶなど一大事な時にしかあらぬ!駆けつけずしてどうしますか!」 「………龍の事だからな……見届けて欲しかったんだ 道は違えたが……元は一緒の一族だからな…… 知らなかったでこの世から消えたら…… いい気はしねぇだろ?」 「炎帝は我等……龍族の事を……何処までご存知なのか?」 「龍がこの世に誕生した瞬間を見届けたのは……オレだ!」 「………え………その様な遥か昔から……」 金龍は驚愕の瞳を康太に向けた 「………真面目に生きた蛇が、神の加護を得て生き長らえた それが龍の総ての始まりだ…… 神の加護で永らえた蛇は、長い年月を生きた その年月が蛇の姿を……変えさせた 5000年たつと蛟(みずち)になり さらに10000年たつと龍になる 龍が更に50000年たつと角龍となり 更に10000年たつと應龍になるという 應龍が龍の最高ランクということになり 金龍は最高ランクの應龍として一族を納めている オレは蛇が龍へと姿を変えるのを見届けた そして龍の一族を見守ってきた……」 こうして話を聞くと…… 長い月日を生きてきたのだと……解る 「龍は血を遺した その血を組む者が子孫を作り、増えていった それが龍族の始まりだ 数が増えれば、それぞれの考えも出て来る しかも龍族は転機を迎えて迷っていた 結果、それぞれの考えの元に分かれた 魔界に逝く者と、人の世に隠れ棲む者とに分かれた それが今、魔界に棲む龍族とトランシルバニア地方に棲むヴァンパイアとに分かれた龍族だ」 金龍は……信じられない想いで康太の話を聞いていた 「………元は同じ始祖を持つ一族なのですね?」 「そうだ……元は一つの一族だ 魔界に墜ちた者は飢えを獣を食らう事で癒やした そして永らくの環境に適応して血を啜る必要はなくなった…… だが人の世に墜ちた者達は……飢えを人の血を啜る事で癒やした…… 人の世に墜ちたオレはその均衡を司る様に啓示を受けた だからヴァンパイアと契った人間を逝かして増やした それがダンピールだ ヴァンパイアに敵対して殲滅できる種族でなくば……負ける そして狩る者と狩られる者との均衡は護られていた……筈なんだけどな…」 康太はそう言い‥‥息を吐き出した 「……何が狂ったのか……ダンピールがヴァンパイアを無差別に殲滅始めた…… 一人残らず狩るつもりなんだろうな…… 世界各国で……無差別に狩られているのが現状だ」 金龍は「ダンピールは何を狙っているのですか?」と問い質した 弥勒も「ヴァンパイアが消えた世界では用のない種族なのに……」と呟いた 赤龍は「……何者よりも優れた生き物はダンピールだと……想っているのかな? だからヴァンパイアなど殲滅して生き残る道を選んだ?」と最悪の序章を口にした 「………多分……間違っちゃいねぇな」 と康太は客観視した結果を口にした そして天を仰ぐと 「八仙、持ってきてくれ」と頼んだ 八仙の一人が姿を現すと、手の中のモノを康太に渡した 「太陽鏡(ひかり)に御座います」 「よく手に入ったな?」 康太は太陽鏡(ひかり)を手にすると榊原に渡した 榊原は太陽鏡(ひかり)を受け取ると 「何処に飾りますか?」と尋ねた 「そこのサイドボードの上にでも飾っといてくれ」と答えた 金龍は「太陽鏡(ひかり)?」と康太に尋ねた 「この鏡はな金龍、魔界の至る所にある魔界を照らしている鏡と同じモノなんだよ 魔界をひかりで照らして魔の介入を遠ざけている 元々はこの鏡は天照大神が神より授かった太陽鏡と言う神器だ その一部を砕いて鏡にして魔界をひかりで照らした この鏡は天照大神の化身とも言える加護されたひかりで闇は祓われるんだ 飛鳥井の家に魔が入り込もうとしても…… この鏡さえ在れば祓われる……簡単には出入りはできねぇと言う訳だ」 赤龍は「……なら前から何で使わなかったんだ?」と素朴な疑問を投げかけた 「………んなに簡単に人の世に持ってきて良いもんじゃねぇんだよコレは……」 「なら……なんで今回は持ってきたんだよ?」 「ダンピールにはこの鏡が一番効果的だからな 八仙に頼んだんだよ しかもこの鏡は魔界を照らしてるのとは、ちょっと違うんだ!」 金龍も真剣に「何処が違うんだ?」と問い掛けた 「この鏡は天照大神のひかりを吸収して創らせた鏡だからなバージョンアップしてんだよ 今回の一件が終わったら法廷でも照らさせようかな? そしたら青龍が仕事しやすくなるだろ?」 榊原は妻の優しさに触れて…感動した 抱き締めて……ついつい接吻をした 黒龍は「……おいおい……」と止めた 「この家は大丈夫だ 子ども達は手は打ってあるかんな 簡単には近寄れねぇ手筈は付けてある」 康太が言うと弥勒が「………本当に苦労したけどな」とヤケクソになって謂った 康太は八仙に「今夜オレは仙界に逝くつもりだ…」と告げた 仙界 聞いた事ならあるが…… 冥府同様 仙界も謎な世界だった 金龍は「………本当にあるのか?仙界と言うのは……」と信じられない気持ちで呟いた 「あるぜ?逝くか?」 「………簡単には……逝けぬのでは?」 「簡単には逝けねぇけどな…… 逝けねぇ場所ではねぇ」 「……何をしに……逝かれるのですか?」 「六王に逢いに逝こうと想っている 仙界の六王……陸王 海王 天王 地王 花王 妖精王と言う王が存在するんだよ 彼等は人の世の秩序を護る為に存在する どの道、妖精王にも話はあるしな 逝くしかねぇと想っている…」 「………噂でしか聞き存じない方達ばかりです… 本当に……存在していらっしゃったのですね……」 金龍は信じられずに……呟いた 「名が在る神は姿は見えなくとも存在しているんだよ 何処にいるかは……知られてねぇけどな…… 名がある以上は確かに存在している」 金龍は改めて炎帝の凄さを目にした この方がいる限り…… 魔界は滅びはしない ならば自分の使命を全うせねば…… と覚悟を新たにした 八仙は炎帝に傅いた 「何時でもご出立なされる様に手筈は整えて御座います」 「なら……逝くとするか…… 聡一郎、来い……」 康太は聡一郎を呼んだ 暫くするとドアがノックされた 榊原はドアを開けに向かった 聡一郎はリビングの中に入ると 「お呼びですか?」と問い掛けた 「少し留守にする 留守の間、守り通してくれ 後、家族に……留守を伝えてくれ」 「解りました! 貴方が留守なれば僕が留守を護ります 貴方は何も気にせずに逝くと良い」 「赤いのは置いて逝く……」 「……あらら……お留守番ですか?赤龍?」 「仙界へ逝く、赤龍では耐えられねぇだろ?」 「………仙界へ逝かれますか…… ですね……仙界は崑崙山と魔界と冥府の間に存在する空間……赤龍では……弾かれてしまいますね」 「と、言う事で赤龍を引き取って留守を護ってくれ!」 「解りました!」 聡一郎はそう言い一生の首根っこを掴むと、リビングを出て行った 二人が出て逝くのを見計らって、八仙は時空を崑崙山と繋げた グニャッと空間が歪むと……吸い込まれる様にして……康太と榊原、朱雀、金龍、黒龍、地龍が吸い込まれて逝った 地龍を崑崙山で下ろして、そのまま……消えて逝った 赤龍同様、地龍も仙界は耐えられないと、留守番となった 仙界は幾十もの結界を超えて逝かねばならなかった そう容易くは踏み込まさない為に張り巡らされた結界に耐えて、進まねばならない 精神的にも身体的にもキツい空間を超えて…… 道は開ける先へ続く 炎帝は「何度来ても此処は疲れるな…」とボヤいた 誰も何度も来られたのですか?……と言う突っ込みはしなかった 結界を超えるたびに気圧も違う 温度も違う わざと、そうやって結界から結界までの距離に差を作ってダメージを与えているのが解る 最後の結界を超えると……… そこは花が咲き綻び、木々が歌い 風が舞う……楽園のような所だった 淡い優しい光が辺りを包んでいた 薄ピンクの髪を足首まで伸ばした男が…… 炎帝を見ていた 炎帝はその視線を受けて笑い 「花王、元気そうで何よりだ」と言葉を投げかけた 花王と呼ばれた男は……冷ややかに炎帝を見ていた 「何しに来た?」 「人の世に影響がこんなに出てるのに、仙界の六王は何をしてるのかと想って出向いた 当然、それらしい言い訳くらい用意してあるんだよな?」 炎帝は唇の端を吊り上げて皮肉に嗤った 花王と呼んだ男は黙って後ろを向いた そこには5人の男たちが整列していた 六王と呼ばれし王の中でも一際、際だって見える男がいた 真っ白の髪に真っ白の衣を着た男は炎帝を見ていた ピンクの髪をした花王 漆黒の髪をした天王 緑の髪をした陸王 茶色の髪をした地王 蒼い髪をした海王 そして真っ白な髪をした妖精王 六王はそれぞれ護るべき場所の髪の色をしていた 六王の中で一番位の高い王は妖精王だった 妖精王は炎帝に「ヴォルグの事で参ったか?」と問い質した 「ヴォルグの事で言いたい事なら山ほど在るが…… オレはそこまで暇じゃねぇんだよ? お前達が使命を全うしてねぇから確かめに来たんだよ?」 「………役目を全うしていなかったら……… どうすると言うのだ? お前にそんな権限などあったのか?」 炎帝は紅蓮の炎を燃え上がらせた 炎帝の姿が…… みるみるうちに変わって行った 真っ赤な髪が蔦が生える様に伸びて行き…… 足首まで伸びると、うねうねとその髪はうねった 「オレの存在理由は適材適所 配置するが役目 お前達が使命を全うしてないと見做したら 殲滅しても神は文句など言うもんか!」 その迫力に……六王は言葉をなくした 「答えられよ! 人の世の闇を、どうして放置した!」 妖精王は「………放置した訳ではない……」と苦しげな表情を見せた 海王が「そうです……我等の存在理由こそ……人の世の均衡……みすみす放置した訳ではないのです」と訴えた 「ならばオレは聞く義務があると言う事か なればオレをもてなせ!」 炎帝が言うと陸王が「此方へ!」と案内した 木々の生い茂る森みたいな道を通って逝くと お城みたいな建物が見えた 炎帝達は、そこへと案内された 朱雀は「………すげぇな……」と呟いた 妖精王は炎帝達を座らせた 妖精達が、もてなしの飲み物をテーブルに運んだ 「では聞こうか?」 炎帝が言うと妖精王が 「ご一緒におられる方は……何方がお教え願えますか?」と申し出た 「オレの伴侶の青龍と青龍の父金龍と兄黒龍と朱雀と……転輪聖王………だ!」 転輪聖王………と聞き…… 六王はざわめいた 「………実在されたのか?」 「名の在る神は実在すると常に言ってる 転輪聖王は遥か昔から存在していた」 「………それで、わざわざ仙界まで来られた理由 お聞き致しましょう! 貴方の戯れ言ではなく真実をお願い致します」 妖精王は皮肉に嗤った 炎帝如きに取り締まられたくはないから…… 「オレが来たのは人の世の闇の影響を何故放置したか? それだけだ……何度言わす気だ? そうやって、のらりくらり誤魔化す気なら…… お前達など消し去って言う事を聞く奴を据えた方が容易いんだからな!」 「お主が全権を任されている証拠は? それが解らぬのなら……従う気はない! しかも言うに事欠いて……神に全権を任されているなどという嘘をつけたモノですね (創造)神が全権を任しているのは今も昔も皇帝閻魔…ただ1人の筈だ 破壊神と言われた貴方がついて良い嘘ではない」 妖精王は言い捨てた その台詞に過剰に反応したのが青龍だった 「………破壊神……」 地を這うような低い声が聞こえたかと想うと…… ゴォォォォォォォォとブリザードが吹き荒ぶ様な空気を醸し出した 「それは誰のことを言っているのですか?」 猛禽の鋭い瞳でギロッと睨まれて……身が竦む 青龍は妻を背後から抱き締めて 「我妻を破壊神などと蹴落とす発言は控えられよ! 妻を侮辱すれば私が黙ってはおりません! 私の持てる総てを使って消し去るのは容易い…… 妻を非難すれば四神も黙ってはおらぬ!  魔界を敵に回して全面戦争する気は、おありですか?」 冷たい……感情も灯らぬ瞳だった 「……青龍殿であられるか?」 「妻を侮辱する輩に答える気は皆無です!」 一歩も引かぬ姿勢に……妖精王は言葉を窮した 妖精王は青龍の前に傅いた 四神の一角 青龍の噂なら……仙界にいても届いてくる 法皇になられた魔界の秩序と謂われし存在を侮辱などしたら……龍族から反発は避けられないだろう…… 「……青龍殿が妻を娶った……と言う噂は本当であったか……」 六王は呟いた 「我が妻を貶める輩は何人たりとも許しはせぬ! 謝罪はまだ受けてはおりませんが?」 朱雀が青龍の横に立った 「青龍、我が友を貶されて俺も胸くそが悪い 転輪聖王、お前もだよな?」 転輪聖王は「切り裂いてやろうかと想ったわ!」と吐き捨てた 皇帝炎帝は嗤って 「このままだと収拾がつかねぇぜ?」 と言い放った 八仙は仙界と冥府を皇帝炎帝の覇道を使って繋ぎ合わせていた 「炎帝殿、呼べます」 八仙が言うと皇帝炎帝は「親父殿、来てくれ!」と呼び掛けた 『我を呼ぶのは我が息子 皇帝炎帝か?』 「親父殿……話が拗れて進まねぇ…… 来てくれねぇか? オレは案外、神々からの信用はねぇらしいからな」 『我が息子を………破壊神扱いした輩の前に出ろと謂うのか? 八つ裂きにしても構わぬと謂うなら…… 姿を現してやってもよいがな!』 皇帝閻魔はそう言い高々と声を上げて嗤った そして空間を歪め……皇帝閻魔が仙界に姿を現した 六王の前に、かって共に闘った皇帝閻魔が立っていた 漆黒の闇に溶ける黒髪を靡かせて立っていた その髪は足首まである長い綺麗な黒髪だった 闇に溶ける黒衣の正装で姿を現した皇帝閻魔は、我が息子の頬に手を伸ばすと……抱き寄せた 「炎帝……我が息子……お前を誰よりも愛しておる」 皇帝閻魔は敢えて息子に、その言葉を贈った そして息子を抱き締めたまま六王に向き直った 「皇帝炎帝は我が息子 息子を侮辱するのは我を侮辱するも同然 売られた喧嘩なら100倍返しで買ってあげます」 正面切って啖呵を切られたら……… 六王は謝罪するほかなかった 六王は皇帝閻魔に深々と頭を下げた 皇帝閻魔の瞳には…… 怒りの炎が灯っていた 「私の息子の婿には謝罪はなしか? お前達は何時から、その位で謝罪をする様になったのじゃ? 浅ましい行動に出るとは……嘆かわしい 六王など我が息子に挿げ替えられても文句も言えぬであろうて……」 そう言い皇帝閻魔は皮肉に嗤った 妖精王は皇帝閻魔に 「皇帝閻魔……貴方は(創造)神に誰より愛された存在……なのではないのですか? 総ての権限は……皇帝閻魔、貴方が手中に収めているのではないのですか?」 「(創造)神が誰よりも愛した存在は皇帝炎帝 ただ1人……… あの方は……私の子を管理下に置いて共に過ごした あの方は私の唯一無二の存在を託され……愛して下さった…… この子が伴侶を得た今……総ての権限は我が息子に在ると言っても過言ではない あの方はずっと胸を痛めていた 誰よりも愛して望んで託された存在だが… …我等は……(空っぽの中身を)埋めてはやれなかった…… 苛立ち故に荒れ狂い破壊神と呼ばせるしかなかった それは……私も……(創造)神も……不本意な出来事だった だが今、我が息子は伴侶を得た 皇帝炎帝のストッパーを伴侶殿がなる 我は全権を息子に委ねてある あの方も……そう想ってらっしゃる! 皇帝炎帝は我等の意向そのもの! 決して軽んじられる相手ではない!」 皇帝閻魔は言い捨てた その時、天空を切り裂く声が響いた “相手を値踏みしてしか聞く耳を持たぬとは…… 愚かよの……六王よ お主らは何時から【心】を忘れてしまったのじゃ? これなら……お前達を消して再び作り直した方が早い…… と謂われても反論など出来ぬであろうて…” (創造)神の声だった 六王は顔色をなくした まさか……本当に……皇帝炎帝に全権を委ねてあるとは想わなかった なれば……失礼な事を言い連ねた事となる 消されたとしても…… 文句は言えない 仕事を放棄して来たのは…… 自分達なのだから…… 妖精王は深々と頭を下げ、青龍に詫びた 「……貴方の妻に失礼な事を申して…… 大変申し訳なかった……」 六王全員で青龍に謝罪した 「権力で謝罪をされても……嬉しくもありません 貴方達は皇帝閻魔と(創造)神の声に…… 謝罪をしただけ…… それは僕の妻に対しての謝罪にはならぬ!」 言い捨てた 青龍は皇帝閻魔から皇帝炎帝を貰い受け抱き締めた 青龍の鋭い瞳が身も凍る光りを放った 「仕事もせぬ六王など、消し去って作り直せばよいのです! 丁度運良く(創造)神もいる事ですから! 素直で仕事をよくするモノに入れ替えれば済むだけの事ではないのですか?」 怒らせると皇帝炎帝よりもタチの悪いのが青龍だった 妻を貶され、青龍は怒り心頭に発する勢いだった 「今後、私の前で破壊神などと謂うなら…… 瞬時に凍らせて砕きます! お忘れなきように!」 青龍はそう言い捨て、優雅な笑みを浮かべて貴公子がする様な動作で、傅いた 朱雀は「………こう言う時のこいつには近寄りたくない……」とボヤいた 六王は顔色をなくして…… 呆然と佇むしかなかった 「ほら、喧嘩売ってる暇に座れよ! サクサク片付けねぇと還れねぇんだぞ! ほら親父殿も座れよ!」 皇帝炎帝に謂われて……皇帝閻魔は情けない顔を息子に向けた 「……だって……お前が……」 「オレの今までの行いがそう言う発言をさせたって事だろ? 自業自得……を逆恨みする気はねぇんだよ」 「だけど……私の息子だ! 私が……愛する統べてを(体躯の一部を)与えて創った私の息子だ! 誰にも文句など言わせはしない!」 皇帝閻魔は泣きそうな顔で……そこだけは譲らない……と口にした 「親父殿が解っててくれたら、オレはそれで良い 今は青龍もいてくれる! ほれ、青龍も座れ! オレは子供達に淋しい想いをさせたくねぇからな、早く帰りてぇんだ!」 そう言われると……言う事を聞くしかない 青龍は椅子に座った 「ほれ、朱雀も、金龍と黒龍も座れよ! 八仙……お前……八雷神を呼ぶ気だったろ? あれを魔界から呼ぶのは禁止だろ?」 そう言われると八仙は拗ねた様な顔をした 「我等の主は炎帝、お主しかおらぬ 主を馬鹿にされて黙っておったら八仙の名が廃る! 他の七仙も我の謂う通りだと申すに決まっておる」 「んとに短気なんだからよぉ!」 皇帝炎帝はそう言い笑った 子供みたいな笑みだった 八仙はその笑顔を護りたいと想った その日から炎帝に仕えて来た 主を持たぬ八仙が炎帝を主と決め仕えて来たのだ 「……我等が短気になるのは炎帝にだけじゃ!」 「ありがとな八仙……でもオレの為に怒るな」 皇帝炎帝はそう言い八仙を抱き締めた そして体を離すと六王に向き直った 「この地球(ほし)は今、悪意と虚栄と欺瞞に満ちている……… それが日々巨大な力を持ち始め吸収し始めている……何故か解るか?」 皇帝炎帝の瞳が妖精王を射抜いた 「………我等はただ手をこまねいていただけではない 闇を消そうと各地に散らばって対処を始めた だが対処する傍から……闇は拡大して…… 手が付けられなくなった 炎帝が悪魔を退治して、その主犯格を冥府に送ったと言う辺りから、魔の勢力は衰えたが…… 闇の勢力は衰えはしなかった その闇が大陸を覆い……光を吸収し始めた 光の中で生きている多くの妖精が……闇に飲み込まれた 我等では……手立てはない……と言うのが現状だ… 黙ってみているだけではない…… この先も黙って見ているだけにはしない!」 「でも動いた形跡はねぇからな…… オレは職務怠慢なのかと想ったぜ?」 「………動いた形跡がないと言うのは?」 「オレは人の世に堕ちて世界の各地で転生を繰り返した その転生で世界各国の神々と懇意になった その神々に聞くのが一番手っ取り早いんだよ 神々は代々、その他を守護して来たんだからな そんな神々が口を揃えて言った 木々が花々が悲鳴を上げて息絶えようとしていても…… 仙界からの助けはなかった それで多くの妖精や精霊が死に絶えた 海が汚れて……汚染は拡大した 船舶事故で……海は黒く覆い尽くされた 魚や海に棲む妖精や精霊が悲鳴を上げて息絶えようとしていても……誰も救いには来なかった 山も空も大陸も……花々も……まるで放置されたかのように……六王は来なかった それは(創造)神の知る所となった…… だからオレは遣わされた この目で見て知らせる義務がオレには在る」 一歩も引かない瞳を受けて、六王は……覚悟を決めた 皇帝炎帝は六王に問い掛けた 「オレの言ってる事が間違いだったら反論しろ」 反論しないなら……見捨てたと言う事なる…… 皇帝炎帝の瞳が紅く鋭い光を放った 総てを見透かされそうな瞳をしていた それは皇帝閻魔よりも鋭くて…… 容赦のない光を放っていた 「………やる気が失せて……妖精など助けるに値しない 死に逝く妖精なんて……どうなってもいい…… そんな気持ち……があったから……ヴォルグを一人で逝かせたんじゃねぇのかよ?」 妖精王は皇帝炎帝を見た 魔界でたった一人になった妖精 誰にも知られる事なく… 気の遠くなる程の月日を過ごした小さき妖精 「魔界に置き去りにされた理由を聞きてぇ…… お前にとって……たかが妖精の一人や二人…… 消えてもどうでも良い……と言う事なのか?」 「………違う!そんな事は言ってないでないか! 妖精は大切な仲間だ! 我は妖精総ての頂点に立つ者 総ての妖精の悲しみや苦しみの声が……解る存在なのだから……」 「何故……ヴォルグを置き去りにした!」 「……あれはヴォルグが望んだから…… あの子は魔界が好きだった 七色に輝く魔界を見るのが好きだった…… そして何より皇帝閻魔が大好きだった だから魔界を去るとき……彼は私に言った 『オイラは何時か皆が魔界に還る日を待つよ』……と。 そんな日など来ないのは解っていて…… あの子は魔界に残ったのだ」 「ヴォルグの唯一の願いをオレは叶えてやるつもりだ 虹色に輝く魔界を……もう一度見せてやるつもりだ お前達……六王はヴォルグを見捨てた 死してもヴォルグの魂を回収には来なかった…… だからオレは親父殿の処へヴォルグは送ってやった! 同じ妖精が消滅しても……お前達には心などない ヴォルグがどんな思いして消滅したのか……お前達には知る由もない 他の妖精達が……どんな想いで消滅して消えて逝ったか……お前は耳も貸さなかった! 救われねぇからと……各地の神々がオレに救いを求めて来た…… 『安らかに眠らせてやって下さい』 神々はそう言いオレに頼んだ オレは妖精達を……(創造)神の元へと導いた それをやるのは、お前達六王の務めではないのか?」 六王の存在理由 それは妖精総ての魂を司る役目 消滅して消えてしまった妖精の魂を輪廻の輪の中へ入れてやり、再生する 妖精を守護して護る それこそが六王が生かされてる存在理由だった 「何故動かなかった? お前達は世界各国にいる妖精や精霊の命を護るが役目 死した妖精や精霊の逝く道を指し示す存在 なのにお前達は何をした? 大量に消えた妖精や精霊達の為に何をした? 妖精や精霊を導いたのはお前達じゃねぇ…… オレだ! オレが神々を動かして逝くべき道に逝かせた お前達の仕事はどうしたよ?」 「………皇帝炎帝……お前がこの地を尋ねるのは…… 予知の鏡が知らせていたから知っておる この地に来る目的も……知っていた」 「へぇ~知ってるなら少しは仕事してやってます的なパフォーマンス位しとけよ!」 「………我等は……尽きる時を待っていた……」 妖精王がそう言うと炎帝は殴り飛ばした 「ふざけるんじゃねぇ! 自分の命が尽きるのを願っていたから見殺しにしたと言うんじゃねぇだろうな?」 「………そうだ………」 妖精王は静かに瞳を瞑った 皇帝炎帝は妖精王を殴り飛ばした そして皇帝炎帝の剱ではなく…… 破滅の剱を手に出した 「終えてやんよ! お前の望み通り……終わらせてやる! この剱は破滅の剱だ…… この剱の手に掛かった奴は輪廻の輪には入れねぇ……滅ぶしかねぇんだよ!」 紅蓮の炎を纏った剱は、皇帝炎帝の手の中で燃えていた 青龍は皇帝炎帝を止めた 「殺してくれと言う奴を消して喜ばせてどうするのですか?」 「この剱は使う事なく魔界に呼ばれたからな 一度手にしたかったんだよ」 「だと思いました こんな簡単に狩る気じゃ在りませんからね 死んだ方が楽だと泣き言を言っても許さない…… それが君の遣り方ですからね……」 「流石、オレの夫だな! だが時間がねぇからな狩るぜ! やっとこさ此処に朱雀を連れてきた甲斐があるってもんだ! 朱雀、仕事しろよ!」 朱雀は恨みがましい瞳を皇帝炎帝に向けた 皇帝炎帝は姿を変えた 真っ赤な紅蓮の髪を元の長さまで戻し、炎帝の姿になった 「………やっぱ……目的がなきゃ紅いのと同じ留守番だよな? なのに連れて来たから何かあると想った……」 「何かなきゃ崑崙山に置いてきたぜ!」 悪びれずに笑う炎帝に、朱雀はやっぱしな……と、ため息をついた 「さぁサクサク仕事しやがれ!」 炎帝が言う 「俺は何をしたら良いんだ?」 朱雀が問うと炎帝はニャッと嗤った 「朱雀、我が伴侶が此奴等の闇を祓う 皇帝閻魔がその闇を一つ残らず冥府に送る お前は六王を再生の輪に入れろ! そしたら八仙が此奴等を導き……正しき心を持つ六王を創る! そしたら少しの不在で総てリニューアル出来るからな!」 「………闇に……囚われてるのか?」 朱雀は信じられずに呟いた 「このままでは確実に闇に乗っ取られる日が来るだろうな…… 最初は心に浮かんだ疲れに宿った 宿った闇はどんどん吸収して、兄弟の心に根付いた ここ最近言い争いが絶えねぇし、何をやっても空回りしか出来ねぇ…… 上手くいかないから余計に焦り、どんどん追い込んで逝くしかなくなる……負の連鎖に取り込まれてる…… これじゃ正常な判断なんて無理だろ? 今 闇を祓い正しい道に導かねぇとな……」 「了解!青龍が闇を祓ったら輪廻の輪に入れ再生の道を辿る!」 朱雀が言うと皇帝閻魔は 「なれば我は闇を捕まえよう!」と立ち上がった 闇はずる賢い 捕らえるのは至難の技だが、相手は皇帝閻魔 見事に闇を捕まえて冥府に送ってくれるだろう 炎帝は青龍に魔祓いの剱を渡した 「これは?」 剱を手にして青龍は問い掛けた 「魔祓いの剱だ! これで魔を祓ってくれ!」 炎帝は呪文を唱えた 六王の足下には魔方陣が出て呪縛していた 動こうにも……魔方陣が動きを封じていた 青龍は剱を綺麗に回して剱で風を切った ピキッピキッ……と青龍の冷気で空気が鳴る 「Return to darkness You aren't supposed to be in the world」 青龍は呪文を口にして六王を斬り付けた 刃が六王を擦り……… 六王を取り巻く闇を祓った 闇を祓うと、皇帝閻魔が闇を回収した そして「我が息子 炎帝よ、我は還ることにしよう!またな我が息子よ」と炎帝を抱き締めて…… 皇帝閻魔は闇を持って冥府に帰って逝った 朱雀は六王を輪廻の輪に入れた 八仙が輪廻の輪の六王の進むべき道を示した 闇に囚われた神の再生の儀式 その存在を一度消して蘇えさせる どれか一つの行程が少しでも狂えば……… 無理な賭だった その賭に全員が乗り 全員が総ての力を合わせて導く道を辿った その結果……六王は再生の道を辿る事となる その手順の良さに感嘆の息が漏れる 誰一人予行演習した訳でもないのに 望むとおりに皆が動いた結果だった 六王は記憶も自我も総て残った状態で、再生の道を辿る事となった 自分達の失敗はリセットされない 今回の職務怠慢は遺ったままの状態で…… 闇を祓い、体躯だけ再生して、同じステージに乗せたも同然となった 八仙に導かれて輪廻の輪から戻って来るまでの間 炎帝達は待った 弥勒は「記憶は遺ったまま……剣山の上に乗せる様なもんだろが……」とボヤいた 朱雀も「闇に囚われてましたと言う大義名分ももう使えねぇからな…今後仕事をサボったら本当に職務怠慢になるしかねぇよな……いや……キツい道だわ」と容赦のないやり方に……やはりボヤいた 青龍は「今度職務怠慢したら僕が凍らせるので、君は即座に叩き割って、砕いてやれば良いのです! それで少しは溜飲も下がるってもんです」とご機嫌で宣った…… 怒らせると一番厄介なのは………青龍………だった 温厚で寡黙な男だが、妻の事になると冷静さも温厚さも何処かへやってしまう奴だった 妻の悪口でも聞こうモノなら…… 龍になってブリザードでも吹きまくって、瞬間冷凍して尾っぽで叩き割るだろう…… 本当に妻のためなら何でもやりそうで……タチが悪い 「炎帝、君を傷つけるモノ総てから僕は君を護ります!」 青龍はそう言い炎帝の手を取り、手の甲に口吻けた 甘い空気が二人を包む 朱雀は解っててやってる青龍に「ケッ!」と毒突いた 弥勒も「………青龍殿だけは怒らせるのは止そうと想う でなくば、凍らされて砕かれて一巻の終わりではないか!」とボヤいた 朱雀は「コイツなら喜んでやるわな」と賛同した 炎帝は我関せずの顔して、妖精のもてなしてくれるお茶とお菓子を食べていた 「このお茶、うめぇな 何のお茶なんだろ?」 しきりにお茶を口にして、その美味しさに人の世でも飲みたいと想っていた 八仙は「ルピナスの花のお茶に御座います」と説明した 「ルピナスの花のお茶かぁ…… 人の世にルピナスってあったっけ?」 炎帝は花を思い浮かべた でもなんせ花とは無縁な生活してるので…… 花と言ったら流生がくれる折り紙の花しか思い付かない 流生は何時も何時も康太に折り紙で折ったお花をくれる 実際、お花が好きな流生は何時も花を見ている 康太は我が子を思い出していた 「………流生……泣いてねぇかな?」 母にべったりの子だった 「翔は怪我してねぇかな?」 康太がいなくとも修行は休みではない 慎一が菩提寺まで修行に通わせている筈だ 「音弥は……無茶してねぇかな?」 音弥は超未熟児だっただ影響が骨に出ていた 骨を形成する胎児期の栄養不足が原因で脱臼の症状が出てオペをした 以来、音弥は父と母……周りの皆を心配させたくなくて、走れるよアピールをする 元気になったよ! もう心配しなくて良いからね! そんな想いで音弥は無理しているのを…康太は知っていた 「太陽はずる賢いからな…… 見てねぇと直ぐにズッコしやがるからな…」 太陽ほどに空気も状況も見極める奴はいないだろう 流石、笙の血を分けているだけの事はある 下手したら笙よりも太陽はずる賢いかも知れない 「大空は感情表現下手だからな……」 言いたい事の一つも伝わらなくて…… 何時も泣きそうな顔で耐えている 「もっと我が儘……言えば良いのによぉ…」 何処まで逝っても大空は不器用だ 寡黙で不器用な榊原と酷似して……康太は少しだけ不安だった 下手したら榊原よりも不器用かも知れないから…… 「烈……風邪治ったのかな?」 家を出る時は少し風邪気味だった 鼻水を垂らして、それでも康太に抱き着いて甘えていた 烈は兄弟の中で一番ガタいが良くて健康に育つ その兆候か、少しの風邪ではビクともしない 我が子を想う やらねばならぬ時は考えない様にしてるけど…… こんな風に思いがけず時間があると…… ついつい我が子を想う 親だから…… 翔 流生 音弥 太陽 大空 烈 飛鳥井康太の六人の子供だ 榊原伊織と育てる夫婦の子供なのだ 誰より愛して育てると親達と約束した だから……本当は淋しがらせたくはないのだ…… 榊原は何も言わず妻を抱き締めた この男は何時も静かに想いをくれる 康太は瞳を閉じた 愛している この男しか未来永劫 愛せない この男がこの世にいなくなったら……息を止める 生きていたくない それ程に愛しているのだ 康太の命だった 炎帝の命だった なくせば……生きてはいられなかった 優しい想いが炎帝を包む 夫の愛に護られていると…… こう言う時に思い知る

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