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第100話 愛すべき未来へ ❶
康太は年明けてから研修に行かせた社員達が還って来て、活気づいた社内を見て回っていた
研修の成果は確実にあり技術と知識を得て戻って来た社員に触発されて、他の社員達もより頑張ろうと躍起になっていた
烈は、次に研修に出す社員達を決めてからイギリスに旅立った
レベルも意識も変わった社員達は、自分の仕事に誇り持つようになった
宗右衛門が明日へ繋いだ1000年先まで繋げた会社の変化を目の当たりにしていた
南雲建設からは、城田の発想力と技術に惚れた社長たっての願いで、南雲建設の社員を飛鳥井に研修に出すから迎え入れてくれ!と要望が来て、迎え入れていた
互いの会社をより高める為に、協力して切磋琢磨して逝くと誓った
3ヶ月ずつの研修の2度目を終える頃、烈は帰国した
【R&R】のメンバーも一緒に帰国していた
拠点はあくまでもイギリスから移す事はない
だが、何処にいても仕事は出来るのだ!と烈と共に倭の国へ還って来ていた
倭の国の【R&R】の事務所は総て撤廃した以上、もう作る気はなかった
作るとしたら【R&R】ではないモノにしような!って竜馬と話していた
烈は帰国してから精力的に動いていた
学園の方も進級テストに合格して初等科の2年になった
学園長の神楽四季は大学の卒業証書と学位記まで取っている烈だから形式的にテストを受けさせ進級させた
その日 烈は研修から還って来た者達や資格を取った者達に宗右衛門から研修を終了した認定証を渡す為に会社へ出向く事になっていた
烈が宗右衛門の着物を着る
凛が竜胆の着物を着る
椋とレイはスーツを着て慎一に会社まで送って貰う
その横にはニックとケント兄弟が護衛に着いていた
烈はカニパンをモヨモヨ食べていた
帰国した烈は家に還るよりも早く飛鳥井記念病院に連れられて久遠の診察を受けていた
「おめぇ、数値悪かったらカニパン一日一個な!」と謂われて受けた検査は………
カニパン一個にさせられる程悪かった
「おめぇ……俺の目の届かねぇ所にいて好きなの食いやがったな!」
とかなり怒られた
メンバーと美味しいの食べまくってたから仕方ない
目を光らせてる者がいないと、ついつい少しなら………となるのだ
「当分は一日に一個だなカニパンは!
リンゴジュースもかなり薄めな!」と謂われた
ショックを受けて帰宅すると清隆には
「少し丸くなってませんか?」と
玲香には「横に伸びたのぉ~」と謂われた
康太も「おめぇ、痩せねぇと久遠に叱られっぞ!」と謂う程だった
榊原は「やはりスコーンばかり食べてましたか?」と言った
スコーンは美味しいけど毎日は食べてなかった
でも美味しいのは食べてた
そして「いちにち、いっこの、かにばん」となった
味わってモヨモヨ食べる
菩提寺の檀家に可愛がられていた凛も最近は久遠に怒鳴らる程の数値で、煎餅は一日に一枚だけとされていた
「りん、せんべーいちまい?」
「うるせぇわい!」
「せいじんびょう まっしくら?」
「おめぇはかにばんいっこやろ!」
喧嘩をしてると、レイが凛に飛び蹴りをかます
「いたいって!れいたん」
「れつ いじめるからよ」
レイの烈贔屓は変わっていなかった
そんな光景を康太は笑ってみていた
会長の清隆が姿を現すと3人は静かに背筋を正した
烈は清隆の横に立ち、凛もその横に立った
烈は宗右衛門の声で
「皆 研修お疲れ様じゃった
顔付きが変わって自信に満ちた顔付きになっておるな!
そんなお主達に研修を終了した認定証を渡そうと思っておったのじゃ!
暫し野暮用でこの国におらなんだ故遅くなった
お疲れ様じゃったな!名を呼ばれた者前に出るのじゃ!」
と謂うと一人一人名を呼び、烈自ら研修を終了した認定証を渡した
社員達はやはり宗右衛門か還って来ると気が引き締まるわ!と痛感していた
一人一人に苦労を労い「良くやったな!」と言葉を貰う
それだけで報われた気持ちになり、社員達は泣いた
宗右衛門が送り出す精鋭だから、それに報いねば!と頑張って来たのだ
烈もイギリスの地で頑張っているのだと想えば耐えられた
全員に研修を終了した認定証を渡すと、解散となり各々の部署へと散らばる
城田は「烈、お帰り!」と声を掛けた
「ただいま、しろた」と烈は言った
「日本に還って来たって事はまた日本でイベントをやるんですか?」と問い掛けた
「やらにゃいよ、もうここではやらにゃいつもりなの!」
「え、そうなんですか?残念です」
城田はテレビでヨニーが【R&R】に謝罪して事業縮小となった経緯を話しトップの交代劇となったニュースを見ていた
ヨニーが全面的に圧力を掛けて追い出した【R&R】が、イギリスの企業の全面的な支援により名を売った
あの【R&R】の世界を知っているファンはその現実に打ちひしがれ、戻って来て欲しいと願っていた
そんな経緯を知っているから「やらにゃいよ」と謂われたら残念だが引くしかなかった
相賀や神野や須賀もイベントを一緒に遣りましょう!とイギリスの事務所に依頼を打診したが、スタッフが総て烈に聞いて断りを入れていた
「もう倭の国でイベントをやる事はありません!」と。
3人は仕方ない事だと想っていた
冬に行われたフギュアスケート選手権のエンディングを彩ったのは【R&R】が手掛けたプロジェクションマッピングだった
人目に付く仕事を増やしたのか?
その活躍は倭の国にいた頃よりも目立っていた
戸浪は倭の国に烈が帰国している事を田代から聞き、康太に連絡をした
「康太、少し話せますか?」
『若旦那、お久し振りです
すっかり最近はご無沙汰ですみません!』
「飛鳥井は研修を始めかなり成果を上げてると話を聞いたよ
我が社も是非とも【R&R】に依頼をして講習会を開きたいと想っているのだよ
烈君 帰国して来てるんだよね?
話をさせて貰えないかな?」
『多分 烈は倭の国ではもう講習会は開かないつもりです!
相賀達がわざわざイギリスの事務所にイベントの打診をしたみたいだけど、断れたと言われてますからね』
「………やはり恨んでいるのかい?」
『そうじゃない、でもリーダーとして安定した仕事をさせねばならないのなら、もう倭の国でやる必要がないんですよ
【R&R】は多彩で色んな資格を持つプロ集団だと名を売った今、見てる世界はそんな小さな枠には収まらない、そんな感じなのでしょう!
【R&R】のメンバーは総て【R&R】の名を全面的に出して仕事をしている
企業講習会もその一環の事業としている今、たかが1000万でやらなくてもその何倍も出してでも来て欲しい企業は後を絶たない、と謂う事です」
戸浪は言葉もなかった
「【R&R】を海外に追いやったツケは大きい
我等は……今更と謂う事なんですね」
『でも烈と話はしてみて下さい
烈が動くならばメンバーは何処までも着いて逝くでしょうから!』
「メンバーは倭の国にいるのかい?」
『彼等はリーダーのいる場所にいる
そこが自分達の居場所として共にいる
なので烈と話して下さい』
「携帯、繋がらないんだよ」
『あ、烈は全ての携帯を解約して新しいのにしてますからね
ならば日程を作りますので、予定が合えばその日に場を設けます、それで良いですか?』
「解ったよ、それで構わない」
戸浪は電話を切った
田代に「康太から予定の打診があったら、その日に合わせて時間を作ってくれ!」と頼んだ
田代は「相賀達も躍起に烈と逢いたいと康太に連絡を取ってますけど、今更なんでしょうね……
あの日、我等は静観を決め込んだ
その結果海外に流出させてしまった
名だたる企業の支援を受けてなきゃ、【R&R】はあの時に潰されいましたよ!」と腹立たしげに言った
戸浪は「今更なんだろうけど、それでも飛鳥井を見てると意識改革をしたいと想うんだよ
本当に都合の良い話になってしまうのは仕方ないけどね」と自嘲気味に笑った
皆 解っているのだ
あの日、あの時、静観を決め込んで見ないフリしてスルーしてしまった事を……
あれが康太ならば我等は何としても力を合わせて反撃に出ただろう
烈だから、静観を決め込み……黙殺してしまったのだ
それは痛い程に解っていた
後日 康太から「烈が今はその時ではない!」と、言っていたと連絡を貰い撃沈した
そんな時 せーなん海運に【R&R】が企業講習会を開くと謂う話題が流れて来た
だがそれは【R&R】を使えば儲かると謂う輩の仕業で
【R&R】はイギリス本国から【倭の国で【R&R】は一切活動をする事ない!】と発信された為明らかにされた事だった
康太が【R&R】と名を出せば人が群がる今、【R&R】の名を出してやるのは逆効果だと言っていた、と伝えた
それで断られた意味が解った
神野ばずっと悔いていた
あの日、解りやすい嘘で烈を騙し怒らせた
小鳥遊が康太に「神野が落ち込んでます、烈と話をさせて貰えませんか?」と話を持ち掛けた時にはもう倭の国にはいなかった
半年して烈が帰国して来てると聞いても、神野は動けずにいた
康太は会社に顔を出してる烈に
「神野、そろそろ許してやれよ!」と言った
「じんの?ぼく、おこってもいにゃいよ?」
「なら電話してやれよ!」
「でんわしてもいいにょよ?
でもね、じんののもくてきは、それじゃないでしよ?
だからね、はなしたとしても……へいこうせんにしかならにゃいのよ」
「あぁアイツ等は【R&R】と仕事したいんだよな?
あんなに静観を決め込んで、【R&R】を見殺しにしたも同然でよく言うよ!ってか?」
「かあしゃん、ぼくね、そこまでねじまがってにゃいのよ!
どうでもいいのよ、ぼくは
てのひらかえされても、うらぎられても、どうでもいいのよ
りようかちがあるか、にゃいかでちかよってくるのも、どうでもいいのよ」
ネジ曲がってない!と言いつつ、どうでもいいのよ、と謂う台詞はあまりにも正反対で康太は苦笑した
「おめぇ本当に人生に絶望した様な事言うなよ」
「…………ぎょめん、ぼくのべーすが、ほら、ふくしゅうしかなかったやつらから…ねくらにゃのよ」
康太は笑って烈の頭を撫でた
「おめぇにはオレも伊織も家族も兄弟もいる
皆 おめぇの事を大好きで傍にいるんだ
打算や目的で傍にいるじゃないって解ってるか?」
烈は頷いた
「ぼくね、かぞくだいすきよ!
にーにやちんいちくんたちも、だいすき!
じんのもね、あつりょくにくっしてつらかったの、わかってるけどね、いまはだめにゃの
ぼくたちのなまえだすと、にせものがでるからいやにやにゃの!
そして、そのあとに ぼうがいうけるのよ
だから、いまはね、だめなのよ」
「ならば、そう伝えておけよ!
あ、お前の携帯全部解約したんだったな?
イギリスで作ったから、こっちの解約したままだわ
今日、契約に行こうぜ!」
「かあしゃん、ぼく……かにばんいっこよ」
哀しげに言われても、それは直せなかった
「おめぇイギリスで上手いの食いまくったんじゃねぇのか?」
「あんましへるしーにゃのが、ないのよ
かあしゃんもいぎりすにいけばわかるにょよ!
こーすのすくにゃいのに、かろりーたかいのよ!」
「管理して作ってくれる奴ださなかったからな
仕方がねぇ事か…でも久遠が管理している今、オレは手が出せねぇんだよ烈」
「にゃら、がんばらにゃいとね」
「烈、若旦那に逢ってやれよ
後 神野や相賀達にも逢ってやれよ」
「あうらけね、はなしはすすめにゃいのよ」
「それで良い、後悔だけは捨てさせてやれ!
皆はあの時お前達を黙殺したも同然だと悔いているんだ……その悔いを取ってやれ!
それが出来るのはお前だけだ!」
「にゃらあうのよ
でもね、りゅーまはだめね
けっこう、うらみふかいのよ
めんばーもね、そうにゃのよ」
「アイツ等はおめぇを苦しめた奴等が許せねぇんだろ?
まぁ今は倭の国で何もやるつもりねぇんだろ?
やっても偽物でるし、それこそ静観してねぇとだもんな!」
「やっぱ、かあしゃん、うざいからすこしでも、ちからをそがにゃいとだめね!」
「だな、オレも結構ウザくて人を駒にしか想わねぇヤツの相手は疲れるからな、そろそろ力を半減させようと想ってるんだよ!」
「そのまえに、れいがてをうつからって、らいん きたのよ
かあしゃん、れいなにするきなの?」
「それ、何時来たんだよ?」
「いまさっき」
康太は立ち上がると走り出した
榊原も烈を背負ってその後を追う
康太はレイが何をする気か知っていた
そしてそれを止めようとレイを探した
康太は「レイと共に会社に来たんだよな?」と問い質した
「そーにゃのよ!』
「ならば屋上か……」
康太は屋上へと上がるドアに手を掛けた
するもドアは開いていた
康太は屋上に出ると「レイ止めろ!行くな!」と叫んだ
レイはニコッと笑っていた
最近、本当に父親に似て来て美緒でさえ、何も謂わぬが誰の子かを把握していた
康太はその顔で笑うなよ……と想った
烈は榊原に下に下ろして貰うと、レイの所へ走って抱き着いた
するとレイは烈を抱き着かせたまま……姿を消した
康太は「あ~逝っちまった!」と叫んだ
榊原は「まさか創世記の泉に行ったんですか?」と問い掛けた
「そうだろ!すっと烈の邪魔をする奴は許さない!って言ってたやんか」
「目から光線が出て口から火を吹いて、触ったら破壊する力欲しいとずっと言ってましたね?
あれは何の影響なんですか?」
「あれか?マーベルの映画見させ過ぎたか?」
「君がレイ達に見させていたのですね」
「暇してたから、プライム入ってやるんか
でな暇してたから見せてたんだよ!
まぁ作り物だ、あんな力は存在しねぇだろ?」
「………でもレイは欲しいと言ってましたよ?」
康太はタラーンとなった
それは逆立ちしても無理でっしゃろ………
「そんな力俺だって欲しいよ!」
目からビームだすのか?口から火を吹いて、触ったの破壊させる力を……本当に欲しいのか?
榊原は苦笑して、まぁ架空の世界の話だと、話題を変えた
「創世記の泉に行って彼は何をする気ですか?」
「天地創造した神々が蒼い地球(ほし)に配置されるずっと前から、創造神の絶対の信頼を得て冥府の地下で、地球(ほし)の循環をさせていたのがニブルヘイムなんだよ
創造神がめちゃくそ信頼を置いて、めちゃくそ煙たがってるのは皇帝閻魔だと想われがちだが、ニブルヘイムに大役を授ける程に信頼して煙たがっているんだよ」
そんな壮大な話をされても、榊原には想像すら出来なくて苦笑して
「それ程にニブルヘイムば創造神の信頼の厚い神なのですね」と謂うしかなかった
「絶対の信頼があるから創世記の泉をニブルヘイムに授けた
授けたと謂うのはニブルヘイムに、泉を下賜したって事なんだよ
そしてニブルヘイムはその泉から湧いた水を冥府の地下まで巡廻させて闇を黙らせて来たんだよ
その創世記の泉にはニブルヘイムしか行けねぇ!
創造神でも入り込もうモノなら蹴り飛ばされ即座に追い出される事となるだろう
それ程に創世記の泉は特別な想いで成り立っているんだよ」
康太はそう言い笑った
「レイは何をしに行ったんですか?」
「多分、雨を降らせる為だ!」
「雨ですか?」
「そう、創造神を脅して、この地球(ほし)に創世記の泉を汲み上げた水で雨を降らせろ!と謂うんだよ
これより一週間は雨だな
雨は人々を濡らし、建物に浸透して総てに浸食を開始する
それは部屋にいる者にだって効果はあり、清めて闇を祓う事となるだろう
大地は潤い浄化され清らかになり生まれ変わるんだよ
全人類のアイツの駒が一旦リセットされた事になる
レイはそれを狙っているんだよ」
榊原は驚愕の瞳を康太に向けて
「そんな事、出来るのですか?」と問い掛けた
「出来るんだよ、小鳥遊を見ただろ?
世の中で黒い涙を流す奴が出て来るだろうな……
パニックになるしかねぇとオレは想ってる」
小鳥遊が水を飲んだ後黒い涙を流した
榊原はそれを見た
そんな人間が全世界で出ると謂うのか?
それはパニックになって当然だろう
康太は「此れは勝也と閣下に話を通しとかねぇとな……」と呟き携帯を取り出すと電話を掛け始めた
電話の相手は信じられぬような話をされ、どう対応すれば良いか解らずにいた
だが【確実に】そうなると聞けば!国としても対応して逝かねばならない
やはり翌日からは天気予想を大幅に狂わせて雨となった
天気予想の雲の動きは晴れと出ているが、現実は雨だった
世界中が天気予想を無視した様に雨になり、その雨は雨季を知らない、砂漠まで濡らした
雨が皆無な国にさえ降り大地を濡らし、人々は奇跡だと騒いだ
その雨は一週間続き、雨に当たった者の中から黒い涙を流す者が出て、ニュースでは連日この現象を
【黒い涙事件】として取り扱っていた
雨の成分を調べても何も出て来なかった
寧ろ、この雨は清らか過ぎて雨の成分としては混じりっ気のない純正の水とまで謂われた
神のお告げだ!信憑性が加わり世の中は騒然となる
烈はレイに抱き着いた瞬間 姿を消した
呪文を唱えていたから消えるつもりだったのだが、烈がくっついて来たのは想定外だった
烈とレイはこの世のモノとは想えぬ綺麗な光景の世界にいた
碧天が広がり雲がモコモコ触れそうな程に近い泉の前に立っていた
辺りを見渡しても何もない
鳥すら飛んでない、音もない世界だった
烈は「ここ、どこ?」と問い掛けた
レイは「そーせーきのいずみよ!」と答えた
烈はそれが「そーせーじのいずみ?」と聞こえたらしくて、レイは笑った
「そんなおいしくにゃいのよ」
「そーにゃの?」
「そーにゃのよ!」
レイは烈と手を繋ぎ泉の周りを歩く
少し歩くと泉の畔には白い目が痛くなる程に眩い白亜の神殿が建っていた
レイはそこへ烈を連れて行った
そして烈を椅子に座らせた後、精神統一して交信を始めた
『創造神よ、私の声を聞き届けたのなら声を聞かせなさい!』
"どうしたのだ?ニブルヘイム"
『この泉の水を大気圏ギリギリまで水を吸い上げ、この地球(ほし)全地域に満遍なく雨を降らすのです!
出来ますよね?出来ないなんて言いませんよね?』
創造神はニブルヘイムの有無を言わせぬ迫力に、"諾"としか言えなかった
"承知した、この泉の水を大気圏を包むように吸い上げて雨を降らせる事を約束しよう"
『私は人の世の時間の一週間、ここに滞在してそれを見届けてから還ります!
この雨で弱らせている間に貴方はアイツの神聖を奪いなさい!
そすれば力を着けるまでの間は大人しくなるでしょ?
まぁアイツの事ですから、力などなくてもちまちまと嫌がらせならして来るでしょうが、人を駒の様に使い捨てして踏み躙るのは許せないので、闇に染まった者を浄化します
その雨に打たれた者を闇に染めようとしても簡単には行かない
我等も暫しの猶予が必要なのです、その間に此方も状況の立て直し位は出来る筈です!』
”お主は遥か昔かは融通がきかぬ頑固一徹なヤツじゃな
それ故に絶対の信頼を得て、前より性能の良い眼を与えたではないか
そして前よりも性能が断然違う力も与えたと謂うのに……神使いが相変わらず荒いのだな”
『私は貴方の愛しき子ではないので、信頼を勝ち取り実績を積み重ね生きて行くしか出来ぬ神ですから!
少し位私の願いを聞き届けたとしても罰は当たらじゃないですか!』
少しの恨み言を込めて謂う
気が遠くなる程の孤独に耐えて闇に飲まれた
闇を浄化する神が闇に飲まれて消えるなんて屈辱以外の何者でもない
恨み言も少し位謂わせて貰わねば溜飲は下がらないってもんだ!
”そなたも我の愛しき子じゃよ"
『あ~そんな御為ごかしは要りません
なので、サクサクお願いします!』
と言い会話を打ち切った
創造神はすっかり捻くれてしまった子に苦笑して願いを聞き届けてやるのだった
創世記の泉の水が吸い上げられて行き、蒼い地球(ほし)を包み込む
その光景は圧巻としか言いようがなかった
この水は雨となり人の世を浄化する
そして天界も魔界も冥府にも雨は降り頻り、この地球(ほし)総てを浄化するだろう
【雨】を知らない天界に雨が降る
ガブリエルはレイが消えて直ぐに炎帝から連絡を貰い雨が降る事を知らされた
だからこそ天使達に雨が降る事を告げられた
やはり天使の中でも黒い涙を流す存在はいて、ガブリエルはショックを受けた
闇はすぐそこまで、やってきていたと謂う事なのか……
【雨】を知らない魔界にも雨が降る
閻魔も炎帝に雨が降る事を告げられる事となった
最初は信じられない想いでいたが、実際に降り頻る雨を目にして不思議な感覚でいた
雨を知らない魔界に雨が降り魔族も大地も濡らし浄めていく
やはり魔界でも黒い涙を流す者が出て来てパニックになった
閻魔が黒い涙を流すのは闇に体が侵食されているからだ、と伝えると、怖がる者怯える者も出たが、素盞嗚尊と大歳神が「風呂に入って綺麗になった気分で行こうぜ!」と謂い、率先し雨に打たれるパフォーマンスをしてくれた為、パニックとなり暴走する事は避けられた
【雨を】を知らない冥府にも雨が降る
皇帝閻魔はそれを嬉しそうに見上げ
創造神が扱き使われて仕事させられたんだろうな〜と想い笑っていた
誰よりも孤独で
誰よりも頑固な神を想う
世界樹はキラキラと光って輝いていた
本来の使われ方をした世界樹は数多くの食物を育て、動物の生命を活発にし数を増やさせた
そして花々は咲き乱れ妖精が、空を飛び
冥府も生まれ変わりつつあった
これはニブルヘイムが導き出した世界
哀しき神が導き出した世界だった
蒼い地球(ほし)はキラキラと光り輝いていた
烈はそれを見て「きれいね!」と言った
レイはニコッと笑い「そーね」と答えた
一週間、烈はレイとその地で暮らした
不思議とお腹の空かない世界は居心地が良かった
レイと裸で屋敷の中にあるプールに入り泳いだ
そして疲れて寝てしてたら、一週間はあっという間に来て、光り輝く蒼い地球(ほし)をこの目で見て
「ありがとう、れいたん」と言った
こんな光景は一生の間に見られる人間は自分しかいないだろう
そんな幸せを独り占めで満喫出来たのだ
レイに礼を謂うしかない
レイはニコッと笑って「見届けてくれてありがとう烈!」と謂う
烈はこの日を絶対に忘れないと誓った
レイは「かえろっか!」と謂うと二人はスーッとその世界から姿を消した
そして再び屋上に戻ると、康太と榊原が心配した顔で出迎えてくれた
康太が「雨が止んだからな、そろそろかと想って待ってたんだぜ!」と言った
烈はレイの手を引き「かあしゃん!」と言い母に飛びついた
そして振り返り「とうしゃん!」と謂うと、榊原は康太ごと烈とレイを抱き締めた
榊原は「お帰り」と言い烈にカニパンを差し出した
烈はカニパンを受け取り、ヨモヨモとカニパンを食べ始めた
「なんか、かえるとおにゃかへるのよね」と言い、カニパンを食べる
榊原はレイにとカニパンを差し出した
レイもカニパンを受け取り、食べ始めた
家族は一週間烈が帰らず心配したが、何も聞かなかった
半年前、突然イギリスに行く!と聞いた時も家族は何も言わずに送り出してくれたのだ
烈はそんな家族に報いるように、一緒にいられる時は一緒にいられるように努力をした
烈は竜馬に連絡すると『何処に行ってたんですか!』と心配された
烈は笑って「きれーにゃところよ!」と言った
だが、それ以上何も謂わなかった
烈とレイは不在だった時のニュースを榊原に見せられた
全世界でかなりの人間が【黒い涙】を流してパニックになった記事を見せられた
康太はレイに「これで何時まで足止め出来たのよ?」と問い掛けた
するとレイはニブルヘイムの声で
「あの人に神聖の剥奪を依頼しておきました
それが出来たとしたら、駒を失い神聖をなくし、前の様には動けないでしょうから7年ば余裕でしょう
でも、あの人に神聖を奪えるチャンスがなかったとしたら、5年も経たない内に動き出すでしょうね
でもあの雨に打たれた人間がそんなに簡単に闇に染められはしない
なので駒を創る為に再び反魂やろうとするでしょうね」
と予想を交えて言った
康太は「おめぇでもっても、アレは倒せねぇのか?」と問い掛けた
「私は貴方程の力はありませんから、単独では無理ですね
その力は弱められたとしても、倒せるだけの力はない
そんな全知全能の神みたいな力、私にはないので無駄な足掻きにしかなりません!
ですが良い機会だったので、原始の力で弱った審議監理局は完璧に消し去ってやりました!
あんな直ぐに乗っ取られてしまう木偶人形は不要なので、一番に片付けてやりました!」
康太はコイツ怖ぇ~と想った
そしてトドメを刺す
「あの人にもう余計な事はするな!と釘を差しておきました!
審議監理局なんて作っても敵に回れば厄介な事になるだけですので、二度と創るな!と言っておきました」
その言葉を聞いて創造神が煙たがる存在と謂うのが理解出来た
絶対的に服従している皇帝炎帝や、文句を言いつつも従う皇帝閻魔とは違う、言いたい事はズバズバと謂うニブルヘイム
絶対の信頼を得ていても、こうもズバズバ謂われたら煙たがるのは当たり前なんじゃ………と榊原は想った
康太は「5年か……それだけ足止め出来たら何とかなるか……」と呟いた
「でもアイツの神聖を奪わねば、ナワルのジャガーが動きますよ?
ナワトル語でtezcati(鏡)poca(煙る)と謂う意味を持つ神だけあって黒曜石をこの世から消し去る事が出来ない以上ば、闇夜に広がる夜は警戒を怠れはしない
人間や動物は操れはしないが、ナワルと黒曜石があれば、そいつ等が動く事でしょう」
「厄介な奴なんだよな……」
「人の文明の上に生み出された神は、創造神の手の及ばぬ力を秘めてますからね
あ~本当に消し去りたい!
何で私には破壊の力がないんでしょうね!
あれば即座に消し去ってやるのに!」
ニブルヘイムは悔しがる
だが榊原は想う……だから力を与えなかったんだろうな…と。
こんな暴走型に力を与えたら、どうなるか解らない
ある意味恐怖だとさえ感じた
康太はそんな榊原の感情など置いておいて、烈に向き直ると
「ホテルに部屋を取ったんだよ烈!
良い機会だからさ、面倒な事をこの機会に片付けちまえよ!」と言った
面倒だからこの際全部一気に片付けようと謂うのが見え見えだった
烈は「ぜんいん?」と聞いた
康太は「おー!そしたら一気に片付くやんが!」と笑顔で言った
相当な電話にウンザリしてたんだろうな………と想う
烈は「にゃら、めんばーよぶわ!」と言った
康太は「おめぇが話を聞いて謝罪を受けろ!
話はまずそこから始まるんじゃねぇのかよ?
メンバーは呼ぶな!オレの言葉の意味が解るな!」
烈は頷いた
メンバーは、と謂うか特に竜馬が拒絶するのが目に見えているから呼ぶなと謂うのだ
話だけ聞いて謝罪を受ければ話は終わる
嫌、終わらせる
そんな意図が見え見えだった
烈は「かあしゃん おなかへったにょ」と謂うと
「ホテルの部屋に行ったら伊織特性のヘルシー弁当食わせてやるよ!」と言った
此処で食べさせない辺りがセコいのだ
お腹が膨れたら寝ちゃうのを警戒しての対策だった
烈はレイと手を繋ぎ、両親に連れられてホテルニューグランドへと向かう
既に部屋は取ってあるのか、ホテルに入るとスタスタとフロントを無視してエレベーターへと乗り込み
目的のフロアに止まると、スタスタと進み部屋の前で止まった
ドアをノックすると慎一がドアを開けた
康太は烈とレイを中へ押し込み、ソファーに座らせた
ソファーに烈が座ると、神野が烈に深々と頭を下げた
「烈……本当に済まなかった!
俺は嘘まで付いてお前を欺こうとしてしまった
本当に済まなかった!」
憔悴した神野の顔を見ればどれだけの苦渋を飲んで来たのか解る
烈は「もう、いいのよ!じんの」と言った
神野は「なら今度こそ我等とイベントをしてくれますか?」と問い掛けた
烈は宗右衛門の声で「それは無理な話だ神野!」と言った
「何故なのですか?
我等か貴方達を見殺しにしてしまったからですか?
メンバーが怒っているからですか?」
「我等は生き残りをかけてイギリスの名だたる企業の支援を受けた
それでヨニーを黙らせたが、その時に交わした契約書があってな、最低でも2年は他の仕事はせず、スポンサーになってくれた会社の仕事を優先する!と交わしたからな、お主らと仕事をすれば契約違反になるのじゃよ!」
契約違反……それは考えてはいなかった
神野は「【R&R】は仕事を吟味してやると言ってませんでしたか?」と問い掛けた
「それが出来る状況ではなかった
あのままたと【R&R】は消えるしかなかった
実際、倭の国からは綺麗サッパリ消えたじゃろ!
それが倭の国限定ではなく、この世から抹殺される所だったとしたら、お主等は悠長な事を言ってられるのか?
好き嫌いじゃなくグールプの存続を賭けるならば、形振り構わず、条件を飲むしかなかった
でなくば、【R&R】は消えておった!
消えるしかない状況はお主らが一番解っておった筈じゃないのか?
その時、お主等は動いたのか?
お主等は我等の為には動かぬのは知っておった
じゃから我等は協力が願える場所を選んだのじゃ!
それを今更、倭の国でイベントをしましょう!と言われてもな身動きなど取れぬ状況だと謂うしかないわ!」
と宗右衛門は吐き捨てた
神野、相賀、須賀は言葉もなかった
あの時、動かずに見殺しにいたも同然だったのだ
それを今更に【R&R】の名が世界に響いたから、一緒に!と言ったとしても見向きもしてもらえぬのは……
解っていた筈なのに…………
こうして直接言われると、言葉もなかった
宗右衛門は「謝罪は受けた、遺恨は残さぬ!それで手打ちでよいではないか!
我等は我らの道をゆく、お主らはお主らの道をゆけ!」と謂う
神野は「あの時……」と悔しがった
宗右衛門は「神野、悔やむでない、お主は事務所を護る為にそれしか手段がなかったのじゃろ?
我等もそれしか手段がなかったのじゃ、お互い様じゃ
だから悔いるのは辞めるのじゃ!」と言った
須賀も「もうご一緒するのは無理なのですか?」と問い掛けた
宗右衛門はニカッと嗤うと
「それは主らの努力次第じゃろ?
我等のスポンサーは倭の国にも席を置く筈じゃ
なれば、そのスポンサーを動かせば仕事は出来ぬ事はない
じゃが外資のスポンサーはシビアな上に厳しい目を持つ起業家じゃ!
主等はそのお眼鏡に叶う人材を育てれば共演も夢ではない!
もう昔のように仲良し小好しは出来ぬ!
それは我等は世界に名だたる【R&R】だからじゃ!
我等に釣り合う輩を生み出すのじゃな
そしたら共演は夢ではない!」と言い切った
相賀は「受けて立つしかあるまいて!」と言った
須賀も「君達に恥じぬ者を育て饗宴出来る様に頑張ります!」と言った
神野も「可能性があるならば…諦めなくて良いと謂う事ですか?」と問い掛けた
「そう謂う事じゃ!
我等は2年は雇用主がおる身故に自由はない!
まぁ相当気に入らねば蹴るがな!
魂までは我等は売ってはおらぬからのぉ!」
誇り高きパフォーマンス集団【R&R】としての矜持は捨ててはいないのだ!
と、まずは3人との話し合いは終えた
だがまだ戸浪と田代が待ち構えていた
烈は相当空腹なのか「おにゃかすいたから、もうしゃべらにゃい!」と言い出した
幾ら面倒だからって言って纏めて場を作らなくても…
と、烈は空腹を感じて面倒になっていた
「若旦那、烈と話したいでしょうが、烈は空腹なのでこのまま話をしても面倒臭かってマトモに話はしませんので、お弁当を食べさせるので待ってて下さい」
と言い、榊原は戸浪には少し待たせて、烈とレイの前に手作りのお弁当を出して食べさせ始めた
烈はヘルシー弁当をモグモグ食べ始めた
榊原達はルーサービスを呼び、ティータイムとした
お弁当を食べ終わると、熱々のお茶を淹れてもらい飲み、落ち着く
お茶を飲み終わると宗右衛門が「では話を聞こう!」と言った
戸浪は「我が社も企業講習会を是非ともお願いしたくて、こうして時間を取って貰いました」と切り出した
「トナミ海運は統制は取れておるが、一人一人のスキルが稚拙過ぎて企業としてはランクは落ちる
真贋がかなり前にスペシャリストを投入したはずではないのか?」と問い掛けた
やはり、そこを突いてくるのか……と戸浪は想った
だが何故それを知る?
「我が社を調べましたか?」と問い掛けた
「調べずとも、経営状態を見れば我等はそれで推測が出来るのじゃ!
戸浪は海賊船の件とコロナで手痛い損失を出した
お主等は現状維持を焦るあまり、目先にしか視線を向けてはおらぬ
少し調べれば、それ位の事は読めて来る
それが出来ぬのならば企業講習会など開く資格などない!と言う事じゃ
まぁお主の会社も意識改革は必要ではあるな!
だが、先程言ったが、我等はもう飛鳥井に行った程度の値段では動けぬと申そう!
まぁあれもリーダー値引き価格で何とか行った訳で、我等を使うならば、覚悟が必要だとと申そう!」
「覚悟とは?」
「金額、そして現実
我等は企業ランクB以下の会社の講習会はやらぬ
それは幾ら意識改革させようとしても、資質が伴わねば効果がないからじゃ!」
「戸浪はランクとしては?」
「B以下ではないから講習会を受ける資格はあるが、今はメンバーの予定が合わぬ故に無理じゃな!
なんせ、我等は2年間は企業の為に仕事をする
それ優先にせねばならぬ故、他に使う時間などないのじゃ!」
「何としても無理なのですか?」
引き下がらない戸浪を目にして、烈は携帯を取り出すと電話を掛け始めた
「儂じゃ!」
第一声がそれ………オレだ!の康太と変わらぬ電話のかけ方に、榊原はたらーんとなった
宗右衛門は何やら話して場所を告げて電話を切った
「今竜馬が来る、話はそれからでもよいか?
まぁ引受は出来ぬが、視点を提議してやるから、それを持ち帰り考えると良い
何度も言うが、儂等はイギリス本国に席を置く、従って事務所もイギリスにある
海を超えて来るのは不可能じゃと何故気付かぬのやら…………」
と宗右衛門はボヤいた
相当近くにいたのか?それ程待たずにドアがノックされた
慎一がドアを開けに行くとビシッとアルマーニのスーツを着込んだ竜馬が立っていた
慎一に部屋に招かれて入ると、烈を見掛けて傍へと近付き横に座った
竜馬は鞄から書類を出すと、烈に渡した
烈はその書類を指で弾いて戸浪の方へ飛ばした
戸浪はその書類を前にスライドされ
「見ても?」と問い質した
烈は頷いた
竜馬はずっとキツい瞳をして座っていた
時には睨みつけ、許してないぞアピールが酷かった
烈はため息をつくと、母に「かあしゃん りゅーまにおちゃをたのみましゅ!」と言った
榊原は慎一にルームサービスを頼んだ
暫くしてティーセットが運ばれた
烈は竜馬に「のむよろし!」と言った
竜馬は仕方なく紅茶を飲み始めた
「りゅーま」
「何?烈………」
「いいおときょは?」
「………顔に出さない…でも烈………」
「てうちしたのよ!」
「烈が決めたのなら………」
と、竜馬は引いた
慎一はご飯を食べ終わった烈に薬を飲ませた
そしてレイがお弁当を少ししか食べてない状況を見て「食べられないんですか?」と問い掛けた
レイはコクッと頷いた
「帰り久遠先生の所に行きますよ?
烈も様子を見せるので、一緒に行きましょう」とサラッと言った
レイは竜馬のお口にヘルシーなお弁当の卵をホークで指して差し出した
竜馬はそれを食べて「あ、これ伊織さんが作ったお弁当ですね!」と言い美味しそうに食べた
榊原はレイに「食べられませんか?」と問い掛けると、レイは頷いた
レイを抱き上げるとその軽さに驚いた
烈は「れいたん ごめんね、もうはなれにゃいから!」と言った
離れていた日々に少しずつ少しずつ食べなくなっていたのだろう…
竜馬はレイのお弁当を全部食べて綺麗に片付けた
その間戸浪は黙って者類を見ていた
田代もその横で黙って見いた
言葉なんか出なかった
総て読み終わった時、戸浪は大きく深呼吸をして居住まいを直した
「此処まで書かれては言葉もなかったよ
この書類は誰が?」と問い質した
烈は「りゅーまよ」と言った
竜馬は足を組むと不敵に嗤い
「リーダーの頼みですから、そこまではしました!
ですがそれ以上は我等は手を貸す気は皆無ですので!」と宣戦布告だとばかりに言った
戸浪は「それは我等があの時何もしなかったからかい?」と尋ねた
竜馬はフンッと鼻で嗤い飛ばし
「元より貴方達には何も求めてはおりません!
俺や烈の為に貴方達が動くとは想ってもいませんから!
なので何もしなくても別にどうでも良い 事です!」吐き捨てる様に言った
「私も…あの時は何も力になれなくて済まなかったと想っている…」
の戸浪が謝罪するとレイが
「口先だけの謝罪など烈も竜馬も欲しくなどない!
そんな言葉を聞かされる方の気持ち考えてます?」
と辛辣な言葉を投げ掛けた
戸浪は言葉もなかった
烈は宗右衛門の声で「レイ、竜馬辞めんか!」と怒った
レイと竜馬は黙った
烈は宗右衛門のまま「それを見て何かを感じたのならば、会社の社員達もそう感じるじゃろ!
意識改革は一朝一夕で成し遂げられる事ではない
飛鳥井も常日頃、意識に留めて変わろうとせねば無理な事じゃ!
そしてそれを我等に放り投げられ成果を求められても困る
我等の研修会さえすれば成果が上がる
そんな容易な考えでは、始めからせぬ方がよいとしか言えぬ!
それをよく見て社員と共有するのじゃ!
我等【R&R】は今 ヨニーよりも強大はスポンサーを得ておる
スポンサー契約しておる以上は倭の国で何一つやる気はないのじゃ!
と言う事で、この話も手打ちじゃ!」
今後はその話は一切出しても聞く気がないと告げたも同然だった
宗右衛門は「三木竜馬と謂う男は3年でオックスフォード大学を卒業した
本当なら2年で帰れる所を心理学に興味を持ち、一年で学位記や博士号を取り帰国した程の天才なのじゃ!
その男が齎す心理学は第一線の学者に敗北を与えた程の実力を持つ
その竜馬が齎す意識改革は企業では絶賛の嵐じゃ!
その竜馬がタダでテキストを作った、それだけで引くがよい!」と言った
引き時が見えてない戸浪は、その言葉に引くしかないと決めた
戸浪は深々と頭を下げ「ありがとうございました!」と礼を述べた
自分達は【R&R】を見殺しにし消し去ったも同然なのに、その【R&R】に縋りつこうなんて虫が良すぎるのだ
康太に頼みをすると聞いてもらえると、何処かで思っていた
康太ならば、我が子に言い聞かせて頼みを引き受けてくれるだろう……って何処かで思っていた
実際には【R&R】は烈が関わっていると言っても、他のメンバーが納得しなきゃ絶対に動きはしない
康太にはそれが良く解っていたのだろう
だからこそ、烈に関しては冷たくあしらっていたのだ
竜馬の凍て付く瞳を見た瞬間にそれを感じた
戸浪はテキストを手にして、何度も何度も烈と竜馬に謝罪して還って行った
神野や相賀、須賀は言葉もなく席を立ち出て行こうとした
すると烈は笑って「がんばって、こらぼさせるのよ!」と言った
3人は烈を抱き締めて泣いていた
「あすかいにくるのにょよ!
みんにゃ、よろこぶよ!
そしたらよるは、みんなのおごりでえんかいよ!」
3人は許された想いを抱いた
飛鳥井烈は許したのだろう
【R&R】のリーダーとしては、高みまで上って来いよ!と宣戦布告して焚き付けた
烈は年相応………嫌 幼い顔して笑っていた
康太は何も謂わなかった
烈が決めた事ならば、それに従う
「にゃら、じんの、すが、おうーが、あすかいにいくまえに、びょういんよ!」
神野が「え?我等は久遠先生のお世話には……」と言ったが、烈が「やつれてるにょよ!さんにんとも!」と怒った
竜馬も「ええ、見てビックリの窶れ具合ですから、久遠先生に点滴お願いしてあげます!」と言った
相賀は「え?点滴………儂は…注射とか嫌いなんだよ!」と言ったが「きゃっか!」と言われホテルを後にした
慎一が駐車場へ行くと「レイと烈、そして3人を病院にお連れします!」と言いワゴンに全員を乗せて飛鳥井記念病院へと向かった
竜馬はその後を追って走って行った
榊原は康太を助手席に乗せて飛鳥井へと向かった
「若旦那は烈に何を見せられたのです?」と問い掛けた
「飛鳥井と同じだよ、痛い弱点を突き付けやがるんだよ!アイツ等は!」
「トナミはそんなに弱体化してない筈ですよね?」と問い掛けた
「海賊に船を拿捕されたりコロナで豪華客船はダメージ受けたり、今だって前の様に景気の良い状態にはなってないからな……
目の前の仕事をかたづけるのに必死になりスキルや資格を疎かにしてたら、それは中々トップの人間は知らねぇ現実だからな!」
「【R&R】はもう倭の国で企業講習会をやらないんですかね?」
「意識レベルが海外と倭の国とでは違うんだよ
海外は講習会を大枚払って開いたとしても、成果を即座に期待はしねぇ
だがこの国はお金を払う以上は成果を期待して、直ぐに効果が出ないと金返せ!とまで謂う
それにも嫌気がさしてるんだろ?
それと、オレの知り合いだから知り合い価格で講習会をバンバン入れられたくねぇってのもあるんだろ?
実際 若旦那はオレの知り合いだから烈に言い聞かせて講習会を開かせてくれるだろう……なんて甘い考えが透けて見えていからな
トナミを許せば、なら自分の所も!と名乗り出る輩もいるだろうし、予防線は必要なんだよ!」
「なら何故、烈は竜馬にテキストを作らせたんですか?」
「それはまぁ、オレに対しての忖度だろ
譲歩出来るギリギリゾーンで、竜馬の怒りを収めさせ作らせたんだよ
だがそれ以上はする気はねぇんだよ!
それで手打ちとする!」
榊原は納得した
飛鳥井の家に還ると、一生達が忙しそうに宴会の準備をしていた
それを見た康太が「何してるんだよ?」と問い掛けると
一生は「烈からラインが来たんだよ!
烈 1週間還ってなかったから心配していたんだけど、突然 神野達を連れて神野達に奢らせて宴会よ!って謂うからな、準備してるんだよ」と伝えた
康太はやっぱり神野達に奢らせるのかと想った
「神野 奢っても良いって?」
「小鳥遊から連絡来ていた
3人で割り勘して奢りますから!って」
「それはすげぇな久しぶりの宴会か
母ちゃん達喜ぶな、あ、烈 祖父母喜ばせる為に呼びやがったな」
「玲香さんにはもう伝えた
真矢さんにも伝えてくれるって!」
久しぶりの宴会に一生、聡一郎、隼人は準備に余念はなかった
一方、烈とレイを連れて病院に行った慎一は、久遠に「3人も是非診察お願いします!」と言った
まずは烈の診察をして
「今度大きな検査して数値が戻ったらカニパン2個にして良いぞ!
まぁ今回は康太から生活の世話をする奴を送れなかったからだと聞いたから、数値が安定したら戻してやる」と言い、烈の頭を撫でた
烈は嬉しそうに笑っていた
「次、レイ、どうしてこんなに栄養失調ばりに痩せてるだよ!」と怒っていた
レイは「れちゅ いにゃかったから……」と泣きながら言った
久遠は「烈、おめぇ、レイがこんなになるから、何処かへ行かずちゃんと体を治せ!」と言った
烈は頷いた
レイは点滴になった
慎一に当分はお粥を食べさせて栄養補助のドリンクを飲ませてくれ!と言った
次は神野
久遠はブチッと青筋立てて怒りまくっていた
相賀も須賀も纏めて点滴となり、4人はベッドに横になり点滴を打たれていた
神野は小鳥遊に連絡を取り病院に来てもらうと
「飛鳥井の家族に奢るからデリバリー頼む!」と謂われた
相賀、須賀も共に出すから最高に美味しいのと、最高にヘルシーなの頼む!と頼まれた
小鳥遊は「予算は?」と聞くと一人2万、で3人で6万と謂われた
小鳥遊は「解りました、一生と連絡を取り注文入れさせます!足りない分は僕が出してあげます!」と言った
「その変わり、僕も宴会に加わって良いですか?烈」と問い掛けた
「いいにょよ!みんなでたのしくね!」と言った
この台詞を聞いて、遺恨を残す事なく話は着いたのだと想った
4人の点滴が終わると、慎一は飛鳥井の家に帰った
一生は慎一が戻ると「おい!注文どうしよう?」とまだ注文してなかった
慎一が注文して皆で宴会の準備をする
烈は真矢に電話を入れた
「ばぁたん?あすかいで、えんかいやるのにょよ!」と謂うと
『まぁ、烈、それは直ぐに行かなきゃ!』と言ってくれた
「ばぁたん しょうたん つれてくるにょよ!」
『了解よ!待っててね烈!』
祖母と電話して嬉しそうにしてる烈だった
そして帰宅して来た玲香と清隆に振り返ると
「じいちゃん ばぁちゃん えんかいよ!」
玲香は「おー!それはよいわいな!」と喜んだ
そして神野達を指さして「おごりにゃの!」と謂う
「それはすまぬな!晟雅、直人、和成!」と3人に礼を言った
3人は楽しそうに笑っていた
小鳥遊はこんな顔、最近見た事なかった……と涙ぐんでいた
凛が小鳥遊にハンカチを渡す
「にゃくにゃ!」
「凛ありがとう」
小鳥遊は嬉しそうに涙を拭くと、烈は
「へるしーにゃの、ある?」とワクワク問い掛ける
「れつはこんにゃく たべてろ!」と凛が言うとレイが飛び蹴りかました
「いたいにゃー!れいたん」
「れちゅ いじめるにゃ!」
「いじめてにゃいよ!
れつ、よこにふといやんか!」
ベジベジ足蹴りすると、およばれに来ていた兵藤がレイを持ち上げた
「オメェ足グセ悪いのな!」とボヤくと
「うるしゃい!」とレイは言った
烈が「れい!」と謂うとレイは泣き出した
「ひょーろーきゅん おろちて!」
と烈が言うと兵藤はレイを下ろした
烈はレイを抱き締める
烈は凛も抱き締めて頭を撫でた
凛は大人しくなった
椋は大人しく座っていた
玲香は椋を膝の上に乗せると「お主は本当に大人しい子だわな!」と言った
康太はやんちゃな凛に「良い子じゃねぇと飯抜きな凛!」と少しイジメた
すると凛は「ばぁちゃ おれ きょうのごはんありゅ?」と泣きながら聞いて来た
玲香は凛も撫でながら「あるに決まっておるではないか!誰かに無いと言われたのかえ?」と聞くと凛は康太を指さした
玲香は「康太、幼き子をイジメるでない!」と言った
「ごめん、嘘だ!凛!
少しからかっただけだ!」
康太が謂うと京香が「メッ!」と怒った
凛は京香に慰められ泣き止んでいた
悠太は笑ってその光景を見ていた
騒々しいが愛しき日々の光景がそこに在った
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