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第99話  目まぐるしい日々

12月24日 Xmas その日は【R&R】が全面的に繰り広げるイベントの本番当日だった 生で放送されるイベントは局を上げての一大イベントとして放送される事となった 午後7時 花火が一発上がり始まりの合図をぶっ放した Xmasと謂う事もあって、イルミネーションを彩ったプロジェクションマッピングが華やかなバッグを映し出す スケートリンクと言う事もあり出演者は皆、スケート靴を履いての参加となる為、練習に余念がなかった スケートリンクを取り囲む様にしていたスクリーンが組み立てられ、今回はスケートリンクに色彩を入れられる様にして連動させて貰える事になった ベルサイユ宮殿バリのごージャースな空間に雪が舞う そこへ純白のドレスを着た榊原真矢が登場した 純白のドレスなのに華やかな雰囲気で、夫の榊 清四郎にエスコートされ登場した 清四郎は漆黒のタキシードを着ていた そこへサンタの格好をした一条隼人が登場し、3人は楽しげに雪が舞う中、滑り始めた 何人もの華やかな彩りの男性俳優や女優が登場して、音楽に合わせて背景がコロコロ変わる 音と実際に降らせた雪がリアルで美しさを醸し出していた Xmasって事で聖歌隊も登場して、Xmasの歌を歌う ハンドベル演奏が雪の世界に響き渡り神秘的な空間を創り出していた 各々が好きに滑り、舞台は美しさを輝かせる その為にバッグや周りを滑る人のドレスや服の色を指定した Xmasならではのワクワクしたイベントに視聴者も夢中になり、その場に居るような雰囲気を味わう 真矢は楽しくて仕方がなかった 清四郎も楽しくて仕方がなかった 隼人も楽しくて仕方がなかった そしてその場にいなくてはならない存在をソリを手に迎えに行く 手摺の方へ行き、トナカイさんをソリに乗せた 観客はそれは反対じゃないのな?と笑う サンタがソリを引いて楽しげに滑る 一頻りソリを引いて回ると、真矢と清四郎の方へと向う 真矢はトナカイさんを目にして笑っていた 烈の傷だらけの顔を隠すにはやはり被り物しかなかった トナカイの被り物をして真っ赤なお鼻を着けて後はメークで隠した 真矢は隼人がソリに乗せて来たトナカイさんに 「ふふふっ トナカイさんいらっしゃい」と言い手を差し出した するとトナカイは真矢の手を取り、一緒に滑り始めた 清四郎と真矢と共に滑る 隼人も、加わり4人で滑る 最高の想い出だった 烈はずっと笑っていた そしてラスト10分を切った時、スケートリンクから一斉に人が出て行くと、プロのスケート選手がリンクに入り優雅に滑り人々を魅了して逝く 雪がキラキラと舞う中真紅のコスチュームを着たスケート選手が舞い踊る リアルな雪に結晶の映像が重なって、溜め息が出る程に美しかった 演奏が終わるとスケート選手は烈に近付き、バラの花を1輪手渡した 烈はそれを受け取り、それを空に放り投げると空から花びらが舞い散った 今度のは大歳神ではなく、仕掛けで花びらを散らした 雪と花びらの饗宴でイベントは幕を閉じた 真矢は「烈、楽しかったわ」と声を掛けた 清四郎も「本当に夢のような時間だったよ」と笑って言った 隼人も「最高のXmasなのだ!」といった 烈は「おもいで、できてうれしいにょ!」と笑顔で言った 今年最後の烈の想い出はキラキラ光る雪のように輝いて心の中に刻まれた ステージが終了すると、それを見届けた観客は感動冷めやらぬ想いで立ち上がり絶賛した 大きな歓声が上がり、拍手喝采を贈り、スタンディングオベーションが巻き起こった 【R&R】のイベントは終わった 烈は祖父母との思い出を作り、幕を閉じた 残り2日やるイベントは辞退した 烈が怪我してそんなに体力がないの事を全面的に出し、辞退した 烈の絆創膏だらけの顔に残念な想いをしながらも引くしかないと、諦めたのだった 表向きはそれで通して何とか危機的状況の回避をした このイベントにより【R&R】は大々的に名を売る事となった 兵藤はイベントまで烈と共に過ごしてくれた 年末年始は家で過ごして年始の挨拶回りをせねばならない!と還って行った 飛鳥井の家にレイと椋と凛が戻って来た 年始の挨拶回りをせねばならないからだ! 烈も飛鳥井の家に戻った だが戻った烈は外出を一切禁止され、出掛ける事はなくなった 家族はまだ烈は狙われているだと、察した 竜馬も年末年始は還れ!と父親に謂れ、三木の家の方へ還った 父方と母方との親族に年始のご挨拶をせねばならぬのだ 竜馬は「毎日ラインするから!」と言い泣く泣く還って行った 帰る瞬間まで名残惜しそうで、何度も何度もラインするからね!と言う竜馬だった それを見て康太は「恋人かよ!」と吐き捨て暴れそうになっていた 榊原はどうどう!と康太を止めた 年末の大掃除は社員一丸となりピカピカに磨き上げ、休みに突入させた 今年は文句なしの出来で、甲乙付け難くて、榊原を唸らせた そして冬休みに突入した 康太は烈を何時までも休ませる訳にはいかない、と考え始めていた 狙われているが、此方が用心していても狙われる時は狙われるのだ どうしようもないのだ 魔界へ行き、良い方法はないかと知恵を求めても、何時来るのか?解らねば対策の取りようもなくて、途方に暮れるしかなかった レイは烈と離している間に魔界に連れて行き、闇に囚われてないか? 閻魔や釈迦に調べさせたり、何故魘されて黒いヨモヨモが出てるのか?調べた 調べた結果、黒いヨモヨモは寝ているレイが闇を捕まえて浄化してるからだと釈迦が言った 烈を護る為に寝ていても、レイは闇を浄化して綺麗にしていると聞き康太は 「職業病かよ!」とボヤいた 榊原も寝ても仕事の事を忘れないサラリーマン戦士だなっと想った その昔……24時間働けますか?と謂う栄養ドリンクのCMがあった様な…… 康太は「止めさせた方が良いのか?」と聞いた 釈迦は「寝てて無意識だったら止めようがないではないか……」と言った それもそうだと、康太は諦めた その事は慎一にも話した レイは慎一の部屋で寝ているから、話さねばならないからだ! 慎一は「解りました、ならば止めずにいます!」と言った 無意識にやるならば慣れるしかない ……慣れるのか?慎一 自問自答する慎一だった 寝ていて横を見ると黒いモヨモヨが蠢いている光景は………最初はチビる程驚いた まぁ慣れだ、慣れだ! 慣れるか解らないが言い聞かせていた 新年 飛鳥井の一族の年始の挨拶が始まり、家族は菩提寺への向かう 皆 ビシッと着物を着て迎える新年の恒例行事だった この日は耀を一族の者に紹介する事となった 宗右衛門の着物を着た烈が耀を連れて皆の前に立つ 「この者は明日の飛鳥井の礎に入る飛鳥井耀だ! この者は後一度で転生を終えられる源右衛門を継ぐ者として、転生者の輪に入られた者 以後 お見知り置きを!」 と紹介した あれから何度も何度も烈は耀と逢い、儀式を行い修行をさせた 耀は前世の記憶もちゃんと持っていた 祖父母に愛され過ごした耀は、体重も増え順調に育っていた 耀は「源右衛門を継ぐ者 飛鳥井耀です! 以後 お見知り置きを!」と転生前の大人の声で自己紹介した! これで飛鳥井宗右衛門が繋いだ転生者の顔見世は終わった 1000年続く果てへと繋がった瞬間だった 総ての転生者の紹介が終わり配置された果てへと進む その道程は楽ではないだろうが、途切れる事なく繋がれる明日は、そんな者達により繋がれて明日を刻むのだった そんな仰々しい一族詣でを終えた康太は真贋の着物を脱がせて貰い、腹をポリポリ掻いていた その横で烈が宗右衛門の着物を脱がして貰い、締め付けられていた帯辺りの腹をポリポリ掻いていた そしてまたその横で翔と凛とレイと椋が腹をポリポリ掻いていた 烈が「きもにょ ぬいだあとは、かゆいのよね」とボヤいた 康太も「だな!あんなに締め付けるから痒いんだよ!」とボヤいた 凛は竜胆の着物を作らせ着る事となった 耀、レイ、椋は普通の黒い着物を着させられていた 今世は自分の着物には袖は通せない 次代に着る事となると伝えられた 榊原はポリポリ腹をかく親子を目にして 「傷になりますよ!」と止めた 康太から痒み止めを塗り始めると、慎一と一生もそれを手伝った 烈は一生に痒み止めを塗られていた 竜胆はそれをキツい眼でみて何も言わず 「んとによぉ、何時だって着物は暑苦しくて痒いよな!」とボヤいた 康太は「だよな、今世からスーツとかに変えちまうか?」と悪ノリを始めた 宗右衛門が「この戯け者めが!」と怒っる 何時もの光景だった 烈は大空にカニパンを貰いヨモヨモ食べていた レイもカニパンを貰いヨモヨモ食べる 竜胆はバリバリの煎餅に齧り付き 「あー!好きな煎餅も食えねぇじゃねぇか!」とボヤいた 烈は「はがよわいにょよ!」と怒って言うと 凛は「おれの は は、ちゅよいの!」と言った するとレイが凛に飛び蹴りをかました 「いたいなぁ!れいたん!」 「れちゅ いじめにゃい!」  「いじめてにゃいよ!」 ベジベジとレイから繰り出される足蹴りは止まらない 榊原がレイを持ち上げ止める 凛は「つぎは、ごとーやらからな!」と意気込んでいた 椋は「えー!しゃんとーや おわったばかりよ」と文句を言う 凛は「やるにょ!おー!」と気合を入れて、熱血指導に燃えるのだった 椋はトホホとなる そんな椋を翔が抱き締めて撫でた 音弥が「凛は松岡修造ばりに熱いのよ!」と冷静になれと頭を撫でて言う 大空は烈を抱き締めて「烈はあんな頑固親父になったらダメよ」と言った 凛は「おれは、おやじゃにゃいぞー!」と怒った 太陽はレイを抱き締めて「レイ、最近足グセ悪いのよ!」とケリを入れる事を注意した レイはクシュンとなった 烈がレイを抱き締めて撫でると太陽も一緒に撫でてやった 流生はそんな兄弟達を黙って見ていた 康太は流生が烈に一生の事を助けてと頼んだのを知っていた だが何も言わなかった 総て烈が決めれば良い 烈が決めてた事ならば、それに従うつもりでいた 烈は流生に「にーに、おはな!」と言いあの時手渡して貰った花を流生に手渡した 流生はその花を貰い「綺麗な花ね」と言った 「にーにのはにゃのほうがきれーよ!」 「烈……」 烈はカニパンを半分折ると流生に渡した 「にーに!」 「烈のカニパンだよ! お腹空いちゃうよ!」 「らいじょうぶよ!ばぁちゃん おにゃかすいたの! やくおとちよ!たべにいくのよ!」と言った 玲香は「ならば精進料理を食すとするかのぉ!」と言い着物をバサバサ脱ぎ始めた 清隆は慌てて玲香を控室から出して更衣室に連れて行った 流生は烈のくれたカニパンを食べていた 兄弟達と竜胆はそれで烈の意図を理解して、何もなかった事にする事にした 烈がそれを望むならば、それを飲むつもりだった 烈が断ち切ると謂うのならば、哀しいが流生と一生を切り捨てるつもりでいた それしか烈に報いる方法はないと想っていたのだった 流生は「お腹すいでない?」と聞くと烈は「ぺこたんよ!」と言った 私服に着替えると慎一と一生が家族全員の着物を畳む 隼人と聡一郎もそれを手伝い片付けて逝く マイクロバスで料亭に向かう頃、烈は寝ていた 康太は烈を膝の上に抱き締めて座っていた 何かあった時に手が打てられる様に、榊原はレイを膝の上に乗せて抱き締めていた 慎一が烈のよどを警戒して烈の顔の下にタオルを入れて、即座に動ける体制を取る レイは「とどめ、しゃしゃにゃいと、れちゅのにちじょー こにゃいのよね」と、ブツブツ言っていた 「れもにゃー とどめしゃしぇるかにゃー あいちゅ しぶといもんにゃー」とレイの独り言は止まらない 榊原はたらーんとなり、そんな独り言を聞いていた 何処から突っ込んだら良いんですかね? 「めきゃら びーむでて、くちきゃら ほのおはいて ふれたら ぜんぶきえちゃうちから、どこかににゃいかにゃ……」 そんな凄い力は逆立ちしても、ないだろう 天地がひっくり返っても、それは無理だろう 何を見たらそんな発想になるのやら? 榊原は「そんな事になったら烈と生活はできなくなりますよ?」とブツブツを止めさせようと言った そしたらレイは大泣きして榊原は困った 慎一が榊原からレイを受け取り慰める 烈は「うふふ かにぱん……おおきにゃ……かにばん」と言う寝言を言っていた コイツもどんな夢見てるのよ?だった 後ろでは竜胆が「気合だ!宗右衛門、気合を入れろ!」と叫んでいた そして太陽に「暑苦しいのよ!凛!」と怒られていた 騒がしい喧噪に飛鳥井の家族は笑っていた 火が消えたように静かな日常を送るならば、多少煩くても笑って過ごしたいのだ 皆で過ごしたいのだ 流生はずっと烈の手を握っていた 慎一が一生に「流生は兄弟から切り離される覚悟でお前を救って…と烈に頼んだそうだ」と話した 一生は流生にそんな想いをさせていたのか……と後悔した だがもう後ろは振り返らない 前を見て逝くと決めたのだ 後悔も悔しさも悲しさも全て飲み込み、逝くと決めたのだ! 精進料理のお店に到着すると烈はパチッと目を開けた 榊原は凄いセンサーだなと感心する 康太の膝から降りて、玲香の元に逝く 「ばぁちゃん、せっかくらし、ばぁたんたちよんだら?」と提案した 「それは良いわな!」と言い榊原の家に連絡して居場所を伝え、盛大な厄落としをする事となった 真矢と清四郎は笙夫妻と子と共に来て、楽しげな輪の中に加わった もう普通に一生とも接して話をしていた 何もなかったかの様に本当に普通に接していた 玲香や清隆も真矢達が感じていた事は感じていた だが烈が何もなかったと決めたならば、普通に通すと決めていた 真矢と清四郎もそうしてくれる想いが嬉しかった 真矢と清四郎はイベントの話をする 烈はヘルシーな精進料理をパクパク食べていた そして熱々のお茶を淹れて貰い飲んでいた お茶を飲んでいてもお酒をのんでいる様な貫禄は健在だった 笙は烈の怪我した顔を撫でて「痛くない?」と話しかけた 「しょーたん、にゃんでいべんと でにゃかったの?」と問い掛けた 「え?あれ、僕も出て良かったのですか?」と問い掛けた 「そーよ、しょーたん いやなのかにゃっておもったのよ!」 「そんなぁ、あれは祖父母と創る想い出だと僕は涙を飲んで諦めたのに、出ても良かったのですか?」と残念そうに言った 「しょーたん どこかにぶいのね」 「えー!烈、そんな事言いますか? 僕は涙を飲んで諦めたと言うのに!」 「あきらめにゃくても、えかったのよ」 「僕もあのプロジェクションマッピングのイベントに出たいです!」 「でたいにょ?」 「出たいです!」 「にゃら、じんのつれてきゅるのよ! そしたらきいてあげりゅのよ」 烈が言うと明日菜が「癖になるから甘やかさずともよいぞ!烈」と突っ込んだ 烈は明日菜に「そーにゃの?」と問い掛けた 明日菜は笑って「そうなのだ!」と言った 笙は妻に「そんな事言わないで!」と言うと 「ならば、少しだけ聞いてやってくれ!」と頼んだ 烈は笑って「あちゅいね!」と言った 家族は笑っていた 慎一や一生も素直にその空間に溶け込み笑っていた 気負わず焦らず自然に自分を置こうと決めたのだ 玲香は「烈、夫婦円満の秘訣なのじゃ、大目に見てやるがよい!」と言うと笙と明日菜は顔を赤くした そんな楽しい時間を過ごし、一族詣では事無きを得て終わった 凛、レイ、椋は飛鳥井の家から幼稚舎へ通っていた やっとレイも日本語に慣れて中途で幼稚舎へと通い始めていた レイの日本語はかなり上達していた 今は栗栖の指導により英語と日本語を使い熟せるだけの能力は着いていた 冬休み明け、烈は桜林の初等科へ通い始めた まだ顔の傷は治ってなくて……いや、前に見た時より酷くなっててクラスメートを心配させた 近寄って騒いだクラスメートがいなくなると公家宮涼太が烈の傍に行き「大丈夫なの?」と心配してくれた 「だいじょうぶよ、りょーた ぼくのいなかったあいだ、いじめられにゃった?」 「大丈夫だったよ、こうーせーと海がいてくれたから!」 「りょーたの、かあしゃんにあったにょよ!」 「うん、聞いた 僕ね烈、君の役に立てられるように頑張るよ」 「りょーたはね、がんばらにゃくてもだいじょうぶよ」 「烈!うんん!烈の役に立ちたいの」 それでも涼太は絶対に役に立つと決めていた それが自分を庇って怪我までしてくれた友に報いる総てだと想っていた 学園生活は穏やかで変わりなく過ごした だがクラスメートを巻き込む事になるやも知れないから、クラスメートとは距離を取って過ごしていた 授業を終えると慎一が必ず迎えに来て会社へと送って逝く 凛と椋が来るのを待って、3人で動く 現場を見たり、職場を見たり、眼は何時だって皆を見ていると知らせる為だった そして困っている現場や社員がいると即座に動いた 竜胆は「会社が落ち着いたら一族だぜ!宗右衛門!」と今日も燃えていた 栗田は烈に「今日も元気ですね竜胆は」と言った 「そーなのよ、もぉね あつくるしいのよ!」と答えた そんなボヤきを聞きつつ、社員は気を引き締める 陣内の部署に逝くと、陣内は何時になく落ち込んでいた ジメジメ梅雨を纏った湿気を感じる落ち込み方だった 「どーしたにょ?じんにゃい はなちてみるのよ!」 「烈、なら会議室に来て下さい」 と言い陣内は3人を連れて会議室へと向かった 陣内は「真奈美が全部話してくれました」と言った 烈は「かこはかえられにゃいのよ!じんにゃい」と言う 「解ってます…でも心が…不安になるのは駄目な事ですか?」 烈は宗右衛門に変わり 「駄目ではないが不安がる必要などないのじゃ陣内 榮倉はお主を愛しておる そしてお主も榮倉を愛しておる それでは駄目なのか?」と言った 陣内は椋に向き直ると 「貴方は悔いはないのですか?」と問い掛けた 椋は東矢の声で「悔いなどないよ! 僕は既に宗右衛門が敷いた果てへと歩み出しています そしてその歩みは止まらない 僕は飛鳥井の礎として収まると決め転生した だからあの人が今もこれからも幸せでいてくれるのなら、何一つ悔いも想いも遺してなどいないのです! どうか陣内、あの人を幸せにして上げてください」と言った その声は穏やかで優しくて、力強い魂の響きを感じさせる声だった 陣内は烈に深々と頭を下げると「すまなった烈」と謝った 烈は陣内の膝に乗ると撫で撫でと陣内の頭を撫でた 「こわがらにゃくても、だいじょうぶ じんにゃいは、あいされてるから!」 「烈……」 「じんにゃい、ぼくねおなかへったにょよ!」 「食堂にお連れしますとも!」と言うと烈は 「たかいのたのむにょよ!」と言った 陣内は「俺の小遣い確実に減るじゃねぇかよ!」とボヤいた 陣内は気が楽になっていた そして叶わないと想う 潔のよい男には叶わないと想う だが【今】俺が傍にいて幸せにしてやれるのだ!と想い、東矢に報いる為にも幸せにしようと心に誓った この日 烈と椋と凛はお高い定食を陣内に奢らせて、満足に笑っていた 烈は「ごちになりまちた!」と言うと、社員達は統括本部長の奢りっすか?ならば我等も!と便乗して来ようとして「お前等に奢ったら離婚されるわ!」と吠えた 皆は笑って「あんな美人と結婚しただけでも夢見れましたよ統括本部長!」と冗談めかして言った 「うるさいわい!俺は離婚なんかしねぇよ! 真奈美を愛しているんだからな!」と叫んでいた そこで定食を食べていた康太がそれを聞き 「あ~惚気は家に帰ってやれ!」と言った  「真贋!惚気けてなんかいません! 真実を語っただけです!」 その場に榮倉もいたが、顔を真っ赤にしてその場を去った 烈はそれを見て「あちゅいね!」と言った 竜胆は「アツくなきゃ離婚だわさ!」と言いガハハハっと笑った 社員は皆 竜胆の毒舌 熱血キャラに愛着を持っていた まるで真贋を駄々っ子にしたみたいで、竜胆は愛されていた 「もぉ新婚に突入して子沢山間違いなしだぜ!」 と言う竜胆を烈が「りん、やめりゅのよ!」と止める 陣内は自棄糞で定食を食べていた 社員は烈に「年明けてから竜馬さんお見掛けしませんね」と問い掛けた 烈は「そーね、りゅーまもいぞかしいのよ!」 と言った 年が明けてから烈は精力的に会社内を凛と椋だけ連れて歩いていた だが帰るのは別々で来るのも別々だった 烈は竜馬さえ遠ざけて、精力的に動いていた 烈の何時もの携帯は切っていた そして2台目の携帯は何時の間にやら解約して繋がらなかった 竜馬は焦った 康太に何度も電話して烈の事を聞くと 「烈、烈、うるせぇよ!新婚か!」と怒った 榊原に至っては「痴話喧嘩みたいな話は我が家の犬だって食いません!」と言われ切られてしまうのだ 一生や慎一に電話しても「妻に逃げられた夫か?」と揶揄される始末だった お手上げ状態で竜馬はどうして良いか分からずにいた 兵藤がそんな萎れた竜馬に連絡を入れ逢うと 「今はな危ねえから傍に寄るなって言ってたぜ!」と伝えた 「危ないなら尚更傍にいなきゃ駄目なのに!」と竜馬は叫んだ 兵藤は「それだと確実に巻き込まれるから、距離を取ってるんだろ? アイツは本当に康太に似て危なくなれば危なくなる程に距離を取るんだよ 大切に大切にしてるレイにさえ、距離を取るから、レイは泣いている」と言い、だから静かに待て!と言った 竜馬は兵藤の言葉を仕方なく聞く事にした だけど何時でも呼ばれれば駆け付けられる準備だけして、烈からの連絡を待った 烈は大概部屋に閉じ籠もるのは嫌になり、何処にいても狙われるなら、出てやる!と精力的に動いていた 康太も出口の見えない日々に烈を閉じ込めておくにも限界を感じて、烈の好きにさせる事にした 何をやっていても、何処にいても、同じならばせめて家の為に動こうと決めていた 仕掛けてくるのは今かも知れないし、数年後かも知れない そんな不確定要素の為に日々の時間を隠れて使うのは嫌なのだ 学園生活でも烈は目立っていた 一年なのにあの貫禄、あの存在感、と騒がれ人気者となっていた そんな話は兄達の耳にも入っていた だが確実に周りを巻き込んで、烈の周りの何かが変わり始めていた 烈はそれを感じつつも、闇雲に動く事も出来ず臍を噛むしかなかった その日烈は【R&R】の仕事に影響が出てると聞き、事務所まで来ていた 烈を【R&R】か事務所にしている倉庫まで乗せて来たのは、ニック.マクガイヤーだった アメリカからやっと還って来たのだった ニックは烈の学校にも潜伏し解らない様に警護していた そして行動を共にする 榊原が作ったSPの会社は近年需要と供給のバランスを欠いてしまっていた SPが絶対的に足らないのだ アメリカからプロを派遣して貰える様にニック達が本国に還り手続きして来ていたのは、それもあった 傭兵上がりの強者や軍隊上がりの強者を訓練し使えるものはSPとして働く訓練学校もアメリカで幾つか作って来たと謂う そして成果を上げて還って来たら、烈が狙われてその傷も治ってない現状を知り、ニックは腹を立てて悔しがった 狙われているなら、プロが護り通す! その気概を見せて烈と共に行動した 竜馬はやっと顔を見せた烈に抱き着いた 「何で傍に行っちゃ駄目なの?」 と弱音を吐く 「あぶにゃいのよ、らからにっくがつおてるにょよ!」 謂われて見ればニックは烈から目を離す事なく少し距離を取り立っていた だが何かあれば即座に動き烈を護る、そんなプロの存在に竜馬は相当な事態が来てるんだと痛感していた 「危なくても俺は共にいたい 俺が政治家になるまでは共に動くと言ったのに……」 恨みがましく謂われると、烈は何も言えなくなる そんな烈の窮地をダニエル、トンプソンが助け船を出す 「今後の話をするんやで竜馬!」と声を掛けると 竜馬は切り替えて、今 【R&R】に何がが起こっていて!妨害されているのか?仕事がなくなった、と話し始めた 3年先まで詰まっていた仕事が総てキャンセルされて、一つも入っていない現状を伝えた メンバーはこの現状の異常さに 「何処からかの妨害か…?」と言った 「それすら調べようとすると妨害が入ってお手上げた!」 最悪の現状なのは確かだった 烈は「じんののじむしょから、れんらくはいらにゃかったにょ?」と問い掛けた 「ないです!」 「え?しょーたん はなさなかったのかしら?」 烈は首を傾げる 竜馬は神野に電話を掛けた ワンコールで電話に出ると竜馬は 「三木竜馬です、笙さんが前に烈と一緒に仕事したいと言っていたとの事でしたが、その話どうなりました?そろそろカタチにしたいので、返答をお聞かせ下さい!」と謂うと神野は押し黙り何も話そうとはしなかった 竜馬は不機嫌になる声で「黙ってられたら何も解らないのですが?」と問い掛けた 『笙は今……日本にいないから帰国したら電話するよ』とだけ言った 笙とは今朝逢っている烈は「しょーたんとあさあってるのにょよ!」と怒った 神野は何か横槍が入り動けない状態なのだろう 「それにゃら もうにどと しごとしにゃいのよ!」と言い電話を切った 竜馬は「何が起きてるんですかね?」と不安そうに言った 烈は「そろそろ しかけてくると、おもってたのね」と言った 「誰が?仕掛けて来るの?」 「ぼくをけしたいやつよ!」 烈が謂うとメンバーは言葉をなくした 人の心に不穏の影を植え付け大きく煽るのが得意な存在が関わっているのだ 仕掛けて来ない筈がないのだ 烈はレイから貰った水を竜馬やメンバーに飲ませていた これで闇に囚われる事はなくなる だがそうでない者は囚われて操られるしかない 駒のように使い捨てにされる 笙は康太と魂を結んでいるから、闇に囚われたら即座に手を打つだろう だから笙の心配はなかった 誠しやかに囁かれている【R&R】を使うと確実に妨害され、仕事が出来なくなる……と謂われる噂 烈達はその噂の出処を探っていた 人を使い駒を使い不安な種を撒き散らし火を焚べ最大限の火力になるまで煽る まさにそれをやられているのだと、痛感していた 【R&R】には利用価値もない 映像のプロならこの世にごまんといる! あのパフォーマンス集団はただのイベント屋にしかならない低俗集団だった……とまで聞こえて来る現状に腹を立てる ただのイベント屋と蔑まれ、正当な評価さえ得られないならば、早めに決断せねばらぬと想った 倭の国での活動は絶望となりつつあった 連日仕事の依頼が山程入っていたが、今は一件もない状態なのだ それで生活が困窮すると謂う事はない ないが、やはりそれで黙っていたら男が廃るのだ! 烈は「かつどうのばを、いぎりすにうつすのよ!」と伝えた メンバーはそれを了承し、活動の場を母国に移す事にした その日のうちに事務所は解体して、倭の国での活動は終了させた 連絡先も総て消してメンバーは倭の国を出国して行った 【R&R】の総ての足跡を消し去り、【R&R】は姿を消した 【R&R】の名前はイギリスまでも届いていた かなりの人気を博していた 倭の国以外の国でなら、仕事なら困る事なく入って来ていた 吟味した仕事を倭の国で煮詰め、本番一週間前に現地入りして調整して本番をふちかましていたのだ 倭の国で活動を停止させた【R&R】だが、着実に海外ではその名と実績を上げていた 榊原と康太もこの異常な現状に相賀に 「何が起きてるんだよ?」と問い質していた 相賀は「今は【R&R】を使えない状況なんです! ヨニーを怒らせたらしくて、ヨニーは全権力を持って【R&R】を排除すると宣言したらしくて、スポンサーとして敵に回したくない者が忖度して、【R&R】を排除する動きを加速させている現状なんだよ!」と窮地に追いやれている現状を教えてくれた! 康太は榊原に「悪意しか感じねぇよな」と言った 榊原も「全く……小賢しい現状をどうする気ですかね?」と危惧して言葉にする 「まぁアイツ等は強いからな、どん底に落とされても這い上がってくるさ!」と言った 烈は飛鳥井の家から消えた だが突然何も言わずに消えた訳では無い 両親にはちゃんと報告して許可を取り送り出された だがその時に烈は康太と約束を交わした 烈が飛鳥井の家から消えて3ヶ月後 【R&R】はど派手な花火をぶっ放す事となった 世界同時配信で世界に誇る名だたるイギリスの大企業が連名で【R&R】のスポンサーとなり全面的に支援して逝く!と表明を出し配信したのだ 今後、【R&R】とタッグを組んでCMからイベントまで数多く活動して逝くと発表された 金融のバーグレー 家伝のダイナリー ユニオンリーバ バーバリン オブライエン トンプソンと名だたる企業が名を連ね【R&R】を全面的に支援すると声明を発表した 世界に轟く大企業を敵に回したも同然の状況に持ち込まれ、苦戦どころかヨニーは一夜を持たず滅ぶしかなくなる現状を突き付けられる事となった ヨニーはその事態を目にして、全面的に引くしかなかった ヨニーの完全敗北となった 烈は最低でも半年は、イギリスで過ごすと康太と榊原に告げた 活動の場が倭の国にない以上、本拠地に腰を据えて落ち着く為に、イギリスに逝くと伝えた 「かあしゃん はんとしくらい、いぎりすにいきます」 「活動の基盤をイギリスに移す為か?」 「はい、じゃにゃいと むしょくのにーとよ それはたいへんにゃのよ!」 その言い方に康太はタラーンとなったが 「半年だけな、それ以上は駄目だ お前は、宗右衛門として目を光らせてなくちゃならねぇからな!」 「りょーかいです いっしゅーかんくらい、でかけるにょは、おーけーれすか?」 「それはOKだぜ! 俺だってそこまでは縛らねぇよ!」 「あいがとう、かあしゃん、とうしゃん」 「ならイギリスに半年いる間にスキップしまくって行ける所まで勉強して来いよ! 時間は有意義に使わねぇとな、約束だぜ!烈」 「わかりました、ぎゃんばってくるにょね」 そう言い、イギリスに来て、母と約束した日々を送っているのだった 家族や兄弟は寂しいが納得して送り出すしかなかった 神野や相賀や須賀は一夜にして大逆転となった現状を言葉もなく受け止めていた 神野は圧力に屈してしまった事を悔いていた 気が付けば【R&R】の倭の国での痕跡は綺麗サッパリ消えていた まるで最初からその場にいなかったみたいに消えた 連絡すら着かない現状に後悔を感じずにはいられなかった 烈はイギリスの名門校 バブリックスクールの付属学校に入学しスキップしまくりで、着実に学園生活を送っていた 頭脳だけあればスキップして上へ行ける制度はかなり重宝だった 竜馬は【R&R】の傍らで学園生活を送る烈に 「何処までスキップするの?烈?」と問い掛けた 「とりあえじゅ、だいがく そつぎょうしとく」 烈の通っている学校はオブライエン一族が運営する学園だった せっせと進級テストを受けてスキップしまくり、【R&R】の基盤をイギリスで定着させる その為に総ての時間を使う そしてメンバーとご飯を食べ 「ぼくね、だいがくまでおわったら、かえりゅね!」と言った メンバーは「何でやねん!」と聞いた 「ここね、かにばん にゃいのよね」 メンバーはショックを受けた カニパン、カニパンはイギリスにはないのか……… サムエルが「あれは倭の国にしかないのか?」と素朴な疑問を口にする デービッドは「なら皆で移動すればええねん! 本番一週間前に現地入りすればええだけですがな!」と言うと、メンバーは頷いた ダニエルは「取り敢えず大学卒業しないとね!」と現実を口にする 大学入学資格は直ぐそこまで来ていた イギリスに本拠地を置いて世界中を飛び回る と言っても本番一週間前にしか現地いりしないのだが…… 今の処、【R&R】は着実に世界に名を売っていた 倭の国では【R&R】の活動の場を奪い海外に追いやったとしてヨニーは批判を受けて、事業を幾つから手放さねばならなくなった 社長や率いる役職の引退劇がテレビで流された 深々と頭を下げ【R&R】にも謝罪してヨニーは生き残りを測った 事業の縮小を余儀なくされ、もう前の様な権力もなくなると見向きもされない企業へと転落して行った イギリスの企業がヨニーが幾つか手放す事業の買収を始めた 映像系の部門の幾つかを買収され手放す事となった それを買ったのは【R&R】のイギリスで立ち上げた会社だった ヨニーの持つ特殊な映像技術が欲しくて、ヘンリーはオブライエン家の力を借りて買収を成功させた ヘンリーは「更に映像技術に磨きを掛けて、人々を唸らせる!此れっきゃない!」と楽しそうだった 烈は「ヨニーの持つ映像技術と謂うかカメラは凄いから、それを使うのが楽しみじゃ!」と宗右衛門の声でウキウキと言った イギリスに来てもうすぐ3ヶ月半 烈は着実に両親との約束を果たしていた 倭の国にいる康太は烈を心配して 「烈、カニパンのねぇ生活出来るのかな?」と呟いた 会社で烈を見掛けなくなり社員達は即座に 「烈さんどうしたのですか? 最近全然会社でお見掛けしませんね?」と聞いて来た 城田辺りは【R&R】が倭の国で活動停止になり怒髪天を衝いて怒りまくっていた 榊原は社員達に「烈は今 イギリスにいます!」と伝えた 【R&R】のメンバーと常に英語で会話していた烈なれば、イギリスへ行ったとしても生活はできるだろう だが「やはり倭の国では活動の場がなくなったからですか?」と問い掛けた 「あぁ、このままじゃ無職のニートよ!それは大変なのよ!って言ってたからな……送り出すしかなかった」 凄く哀しげに謂われて社員達は康太の烈を想う想いを感じていた 相変わらず凛と椋とレイは会社に顔を出して、社員達と交流を持っていた 漢義のある凛と、知性の塊椋、静かだが凛に飛び蹴りをかますレイ 3人は会社では人気者だった だが烈の変わりにはならない それを榊原は感じていた 日々届けられるカニパンを目にして 「国際便で送りますかね? 送らねば還って来そうで止めてましたけどね」と言った 康太は烈とのラインを榊原に見せて 「半年キッチリで還って来るから待つしかねぇよ伊織 だってイギリスにはカニパンがねぇから、卒業証書と学位記さえもぎ取ったら帰って来るらしいぜ!」と言った ラインを見ると 「かあしゃん いぎりすはかにばんにゃいの!」 「かにばん たべちゃいにゃ」 「そつぎょうしょうしよと、がくいき とったらかえりゅね」 「かにばん!にゃいから!」 とのラインを見せられ、烈らしくて笑った 最近烈を診察していない!と久遠医師の電話攻撃にあい、烈は今イギリスにいる、と言ったら、めちゃくそ怒られた 「イギリスだと!スコーンばかり食いそうやんか! 烈は管理しねぇと体調ごと悪くなり数値も悪くなるんだぞ!早く帰らせろ!」とめちゃくそ起こっていた 「半年は無理だな」と謂うと 「なら帰国したら家に還るより前に俺の所へ連れて来い!」と謂れ、約束させられた 烈はイギリスでイベントとCM撮影など日々めちゃくそ忙しい生活を送っていた その合間を縫って学校に通いスキップしまくり、やっとこさ大学に入学した 前世で頑張って留学や学位記取りまくって良かったと、思う烈だった 帝都大学卒業は伊達ではなかった 世界的企業のCMは倭の国でも放送されていた 制作【R&R】とロゴが入った、環境をテーマにした映像は世界的に絶賛され賞を貰う程だった 世界に認められる様になった【R&R】のニュースは倭の国でも日々流された 絶賛されればされる程、戻って来て欲しい!との声が上がるようになっていた そんな時【R&R】に企業講習会の依頼が倭の国の事務所に入ったと連絡が来た 企業向け調査事務所だけ遺し、【R&R】は全ての事業から撤退していた でも混乱を避ける為に事務所だけは遺してあった 企業講習会の依頼は日々増えて逝くが、本拠地をイギリスに移した事によりスケジュールが合わなくて、総て保留にしていたのだった 講習会の依頼は今、神威の事務所が管理してくれていた そして神威が「もぉな、おめぇ還って来やがれ! 毎日毎日、企業講習会の依頼が来やがるんだよ そして今日はすげぇ所から依頼があったぞ! どうするか?返事はお前がしろ!」と依頼書を添付して送られて来た 『【R&R】殿 我がトナミ海運に企業講習会をお願いしたいと想い依頼致します! 日程や期間は飛鳥井と同等 費用も飛鳥井と同等でお願いします 正規に依頼するなれば、飛鳥井より上なのは承知していますが、それでお受けして貰えませんか?」 との事だった 烈は携帯を手にすると直接、戸浪へ電話を入れた ワンコールで電話に出た戸浪は 『お久し振りです烈君ですか?』と優しい声で問い掛けた 「おひさしぶりです、わからんな! えっと、あーるあんどあーるにいらいしましたか?」 『はい!依頼書読んでくれたのですね 今は倭の国に事務所はないと聞きました 顧問弁護士の神威さんの所へ連絡をして、お願いしたのです  で、私からの依頼は聞き届けて戴けますか?』 「ぼくねいま、いぎりすにゃの でね、だいがくそつぎょうしにゃいと、かえれにゃいのよ」と伝えた 戸浪は唖然となった 烈は煌星と海と同じ小学生なのだ それが大学?聞き違えたのかな? と想い戸浪は「大学?……竜馬君、がですか?」とやっとの想いで謂う 「りゅーまはもうそつぎょうしてるのよ! ぼくがね、いま、だいがくにかよってるのにょよ」 『本当に君が大学に通っているのですか?』 「そーにゃのよ らからね、まだかえれにゃいのよ まぁかえっても、そのくにでかつどうはしにゃいのよ」 『え?講習会はもうやられないのですか?』 「いまね、いぎりすで、だいはんきょうなのよ そのくにでやるいみがもう、にゃいのよ」 烈は突き放したように謂う それだけの事をされて来たのだろう……… 『我が社で君達の講習会をやって欲しいと申しても聞いては貰えませんか?』 「そのひに、かいしゃにいって やるわけじゃにゃいのよ したしらべして、かいしゃのなかをみてまわって、そのかいしゃの、なおすべてんをみるのよ そしてひらくのよ、こうしゅうかいを! だからね、じゅんびがひつようなのよ それもなしにひらけるわけじゃないのよ!」 そんなに講習会は簡単じゃないと謂われた 『考えておいて下さい! それも、して貰えませんか?』 「………かんがえておくのよ れも、うけるかは、きたいしにゃいでね それもね、かえってからね! ぼくはだいがくでにゃいとかえれないのよ かあしゃんとのやくそくだから!」 『解りました!還ったら連絡下さい!』 戸浪はそう言い、電話を切った そして即座に康太に電話を入れた 「康太、今少し話せる時間ありますか?」 『大丈夫です、何ですか?』 「我が社の社員は、君の会社の社員達と仲が良いから、年末に行われた講習会の件を聞いたんだよ だから、【R&R】に企業講習会を依頼したんだ 【R&R】は既に倭の国の総ての事業を撤退してしまったんだね 企業系調査事務所のみ遺し、後は既に撤退してしまっていた 田代に調べて貰ったら烈の顧問弁護士が、代理人として混乱を避けるに為連絡を取次いでいると聞き依頼したんだよ  そしたら烈はイギリスにいて大学に通っていると聞いたんだけど、本当なのかい?」   『本当ですよ、悪意により烈達【R&R】は倭の国での活動は出来なくなりイギリスに本拠地を置く為に行っているんです 今じゃイギリスを皮切りに世界的有名になりましたからね【R&R】は! 企業講習会の依頼も後を絶たないと神威が愚痴を零す程に、今更ながら騒ぎ立てられても、もう倭の国にはいませんからね! オレではどうも出来ません イギリスに行くならせめて大学は卒業して還れ!と言ってあるので、卒業しなくば還りません!』 「【R&R】の件、私も聞いたよ ヨニーが全面的に【R&R】を使うな!と妨害を受け、倭の国での活動を総て停止させてイギリスへ向かったと… だけど、烈はまだ小学生だから遺ったんだと想った」 『烈はリーダーです だから活動場所を移すならば定着させるまでは還らない そんな立場を理解して我等は宗右衛門を外に出したのです! 本当ならば出さずに済んだのに……こんな悪意な妨害されれば活動なんて皆無となりますからね リーダーならば考えて決断を下さねばならなかった』 「我等は………今回、手も足も出なかった 相賀を始めとして、それに対して何も動けなかった我等は悔いしか遺らなかった…… 神野は【R&R】とのイベントを楽しみにしてたのに、脅しに屈して嘘まで付いて烈を怒らせた、と悔やんでます 我等はヨニーがアメリカの企業の中でもトップクラスの権威とコネを持つ企業だったから……動けなかったのは事実だ! 特に芸能事務所を持ってる神野や相賀達は顕著に圧力かけられてましたから……何もしてやれませんでした」 『もう烈達の事は放っておいてくれませんか?』 康太は吐き捨てた こんな風に謂うのは滅多となくて、戸浪はどうして良いか解らずにいた 「企業講習会……開きたいのは嘘ではないんだ」 『この国にいないのに、開くのは無理です 烈がイギリスに行ってもうじき4ヶ月 烈は宗右衛門の記憶を持つ転生者だ 前世は帝都大学にストレートで入学しオックスフォード大学に留学していた経歴を持つ だから前世の、記憶を持つ烈なら大学に行くのも無理な話ではないんです どの道、宗右衛門は還って来て絶対の存在としていなければならない なので還っては来ますが、仕事を受けるかどうかは? 烈次第ですからオレは何とも言えません!』 そう言われたらもう何言えず、戸浪は電話を切った 最近の康太は烈に関する事を謂うとシビアな対応になる と相賀や神野や須賀が言っていた まさに本当だと戸浪は身を持って知った

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