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初心者VS百戦錬磨

「お前なぁ…。  こっちは今ようやく、気持ち自覚したとこなんだぞ?」 優しく髪をすくみたいにして、撫でられながら。 ギロリと睨み付けて言ってやったのに、木内の阿呆は嬉しそうにテレテレと笑い、的外れな言葉を返した。 「それって俺の事、もう完全に好きって意味でいい?  嬉しい…、『たぶん』じゃないんだ。」 この、ゲロ甘王子め。 …恋愛初心者相手に、追討ち掛けるみたいにそれ聞くか? 頬を薔薇色に染め、俺の体を力一杯抱き締める木内。 何なの、コイツ。 …どんだけ俺の事、好きなんだよ。 「うっせぇよ、バーカッ!  やっぱお前なんか、嫌いだっ!」 でも天の邪鬼な俺は、真っ赤であろう顔を背け、叫んだ。 すると木内はクスクスと笑い、俺の頬に手を伸ばして無理矢理自分の方に顔を向けさせた。 「素直じゃないとこも、可愛い。  俺は大悟の事、好き。  全部、大好きっ!」 ちゅっ、とリップ音を立て、ほっぺたに触れた唇。 マジで、勘弁してくれよ。 …でもそれが嫌な訳じゃ無く、むしろ少しだけ嬉しかったりするのが一番困る。 「ね…、大悟。  痛い事は、しないから。  さっきと、同じ。  大悟が気持ちいい事するだけだから…ね?」 色恋沙汰における経験値が絶望的なまでに低い俺は、百戦錬磨としか思えない木内に甘く耳元で囁かれると、またしても脳と体がどろんどろんのグッチャグチャに蕩けた。 宥めすかすみたいにちゅっ、ちゅっと音を立てながら、俺の頬や額、瞼、そして唇にもキスを落とされて。 それがちょっとくすぐったいのに、心地良くて。 …結果、まんまとコイツの策略に乗せられ、流されてしまった。 「…痛くしたら、マジでぶっ飛ばす。」 言葉とは、裏腹に。 甘えるように、強請るように…木内の背中にそっと、腕を回した。 「ありがと、大悟。優しくする。  …大好きだよ。」 熱い、視線。 俺に触れる指先は、緊張からか少しだけ震えていて…本当にコイツに愛されてんだなって改めて感じた。 だから柄にもなく幸せな気分に浸り、頬の筋肉がぐずぐずに緩んでしまったというのに、この直後。 …ルールその③と、コイツの変質的且つ異常なまでに深い愛情の凶悪性を、俺は嫌ってくらい思い知らされる事となる。

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